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【書籍】江戸時代の旅行指南書 「現代訳 旅行用心集」

 創作、特にファンタジーをしっかり書こうと思うと、あらゆる分野の知識を取り扱う必要が出てくる。というわけで片っ端から関連書籍を読み漁ったわけですが、どんな本を読んだのか忘れてしまいそうになるので、最低限は備忘録を残すことにしました。

 今回の備忘録は江戸時代の旅行指南書を現代語訳した「旅行用心集」について。元は200年前の書籍ですが、記された内容を抜粋すると

・旅行の所持品
・道中の日記の書き方
・宿屋で蚤を避ける方法
・山中でけものの類を近付けない方法
・空模様の見方と、古い歌やことわざ
・本馬(荷物運搬)の駄賃相場

 ……など、現代とそう変わらない感覚の記述も多いようです。私も理系蛮族時代は、ネズミはびこる借り家に長らく放置された布団のノミ・ダニにだいぶ悩まされ、布団の上で寝袋に寝る、蚊帳を立てる、虫除けを塗って寝る、諦める、なぞの対策を取ってきましたが、江戸時代の人々はどのように対策してきたのでしょうか。該当する章を読んでみると、

・苦参(エンジュ)を生のままで敷布団の上へ置く
・からたちの実をひとつ持って、夜の間抱いて寝る
・蓼(たで)を乾かして、床の下へ敷く
・からたちの実をたくさん煎じて下着をひたし、よく干してから着る

 ……といった方法と、苦参の枝のスケッチが記載されていました。毒虫やけものに関するスケッチも記載がありますね。

 江戸末期ごろに日本を旅したイギリス人旅行家、イザベラ・バードの旅行記では除虫粉や蚊帳の利用についても記載があったので、この辺りは試行錯誤が繰り返されてきた分野なのだなあ、虫よけが発展した現代で良かったなあ(防ぎきれてないけど)などと、感慨深く思いました。

 この本はそういった旅行Tipsを連ねた内容が主ですが、巻末には旅行の在り方を変える出来事(たとえばディーゼル船や鉄道の開発時期)を記録した年表も乗っているので、江戸時代の旅行文化について学びたい人は楽しめる書籍だと思います。

 ただ、あくまでTips集ではあるので、より詳細な文化風俗や、どこでいくらかかって何を買って、という生き生きとした情報が知りたい方には、イザベラバード著の「日本奥地紀行」の方もおすすめです。複数の日本語訳が出ていますが、個人的には金坂清則による「完訳 日本奥地紀行」が読みやすいと思います。昔の翻訳本はクセあるからね。

旅行用心集
https://x.gd/U2ApS

今回はこんなところで

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