南方熊楠も調査した「スノリ」について
南方熊楠は『飛騨史壇』第7巻第2号(1922年)に「スノリについて」という文章を投稿している。(『南方熊楠全集』第3巻、平凡社、1971年に収録されている。)この「スノリ」についてはよく分からなかったが、先日以下のような論文を見つけた。
岸大弼「岐阜県高山市の苔川における食用藻類“すのり”の 過去の分布および利用」『地域生活学研究』第9巻、2018年、1~15ページ
この論文によれば、「スノリ」はかつて岐阜県高山市を流れる苔川に生息しており、名物として昭和中期まで利用されてきた伝統的な食材であるが、「スノリ」は方言であり、正式名称は紅藻綱カワモズク目カワモズク科という淡水藻であるという。熊楠はこの藻をバトラコスペルムム・モニフォールム(Batrachospermum moniliforme)であると鑑定したが、現在はBatrachospermum gelatinosumに学名が変更されているようだ。ただし、「スノリ」がBatrachospermum gelatinosumであるかは慎重に判断すべきであるという。
スノリは現在では苔川で見られない。スノリが属するカワモズク科は清流にしか生息できず、多くが環境省や各地域の絶滅を危惧するレッドリスト・レッドデータブックに登録されている。熊楠の記録はスノリに関する貴重な記録であるようだ。
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