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澤田四郎作の日記を読む①

 先日、Twitter上で大阪を中心に活動していた民俗学研究者・澤田四郎作の日記が翻刻されたという情報を見つけた。前回の記事でも紹介したように、澤田の日記は以下のウェブページからダウンロードできる。

私の読んだ範囲では、澤田に関する研究は、『柳田国男の歴史社会学 続・読書空間の近代』佐藤健二があり、収録されているもとの論文はウェブでも読むことができる。

この論文は、澤田に触れているが、どちらかと言うと民俗学の研究や研究者の交流があった大阪民俗談話会という「場」に注目されており、澤田という人物には触れられている部分は少ない。そのため、今回の澤田の日記の翻刻は、澤田という人物を検討する上で非常に貴重であると考える。

 早速、昭和9年分の『日誌』をダウンロードして読みはじめたが、以下3点の発見があった。まだ途中までしか読んでいないが、メモとしてここに記載しておきたい。

①澤田は民俗学研究者という一面だけでなく、様々な文化人との交流があった。私が読み進めた範囲では、以下の人々と交流があることが分かった。書簡での交流の場合は、各人物の紹介の末尾にその旨記載した。

寺川信→映画、演劇の評論家?詳細は不明。
麻生路郎(じろう)→川柳作家
高山辰三→『美術と趣味』という雑誌を発行していた。徳富蘇峰とも交流があったらしい。
松阪青渓→美術関係者。谷崎潤一郎、熊谷守一らと交流あり。
田中貢太郎→田山花袋にも師事した作家(書簡)
馬場孤蝶→『文学界』の同人でもあった作家。島崎藤村、樋口一葉らと交流あり。(書簡)
十一谷義三郎→川端康成、横光利一とも交流のあった作家。(書簡)
村松梢風→作家(書簡)
山口草平→画家
富田砕花→歌人
渡辺亮→雑誌『上方趣味』を編集

②大阪パルナス会という集まりに関して。澤田に日記の中に何箇所か登場するが詳細は不明。ウェブで調べても情報がまったく出て来なかった。日記中の出席者から文化人の団体であると推測されるが、活動内容が気になるところだ。

木下東作
大沢休象→忍術研究家
柿谷華王子→大阪毎日新聞
村川正二
松本鋭次→洋画家
寺川信→宝塚少女歌劇雑誌
青木大乗
杉江秀→音楽家
柴田賢次郎→大阪毎日新聞

③日記によると、美術品、陶器、郷土玩具、仏像などの展覧会を見に行っていたようだ。これらの蒐集家との交流も日記中にみられる。たとえば、川崎巨泉、渋沢敬三とも交流のあった遠藤武が登場するのがおもしろい。

 以上のことからみえてくるのは、従来知られていた「民俗学の研究者」にとどまらない文化人や蒐集人と交流のあった「大阪の文化人」として澤田の側面だ。私が今回日記を読むにあたって一番印象に残った点は、上に紹介したような交流からみえてくる澤田の関心の広さであった。素人の意見でたいへん恐縮であるが、今回翻刻された日記は、澤田のこれまで知られていなかった一面を掘り起こした貴重な仕事であると考える。引き続き読み進めていきたい。


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