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江戸文化研究者・松川弘太郎の発行していた雑誌『郷土文化時報』
以前購入して紹介しようと考えていたが、放置されていた古本が家の中から発掘される場合がある。今回紹介する松川弘太郎が発行していた雑誌『郷土文化時報』もその1冊である。先日、引っ越しを行ったが、荷物を整理していた時にたまたま見つけた。結構前に購入したもののようだが、以下に紹介していきたい。発行者の松川は以下の記事で紹介したことがある。
大きさ:約18.8cm×約13cm、洋装本、謄写版印刷
印刷:昭和8年1月25日
発行:昭和8年2月1日
編集兼発行者:松川弘太郎 神奈川県高座郡藤澤町鵠沼五四一三
印刷所:昭和謄写堂 東京市神田区三崎町電停前
発行所:郷土研究同志会 神奈川県高座郡藤澤町鵠沼西海岸
頁数:80頁
小規
感想
資料 塚之部
研究誌 月評
広告 江戸採訪会
郷土・民俗研究団体一覧
類別 雑誌文献月蒐
郷土時報
交詢欄
古文書交易市場
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松川はこの雑誌を発行した動機は「感想」に述べられているので、以下に引用してみたい。
知り合ふ事
お互ひに知り合ふ事、如何なる研究でもそうであるが、殊に私達の志して居るやうな仕事にはお互ひに知り合ふと云ふ事が最も必要だと思はれる。例へば現在日本全国を通じて、郷土、民俗、其他道を同じうした団体が幾百十あるであらうか。それは実に我々をして斯界の隆盛さを思はしむるものがあるが、翻つて見るに其等団体の大部分は其地方々々に於てのみ覇を成し努力を有するものに止まり、全国的に進出して居るものは甚稀のやうである。
何が為にそうなのであるか。是等を総合して交詢を図る所の連絡機関が無く、お互ひに知り合ふと云ふ事が出来ない為に外ならぬと思ふ。
私達の仕事は机の上だけで出来る事ではない。自ら実地に踏査蒐集せねばならぬ事である。随って亦全国的に同志・知己を必要とする。それ等の為にも全国各地方の団体同志がお互に知り合ひ連絡を保つと云ふ事は何れ程有意義な事であるかは論を俟つ迄も無い。
既に整った調査資料の発表されてあるのを知らずに同じ調査に無駄な労力を盡して居る事が往々ある。問合せる便宜が無い為に知りたい事の知り得ぬ悩みの如何に日頃の仕事の内に多い事であらう。更に位置を替へて、全国の各団体の同志達に依つて毎月発表される有益な資料の数々、それは其道に志す人々の一般に知つて有益な資料であるにも拘らず、単に一部の同志間に知らるゝに止まつて其儘時日と共に筐底に埋もれて仕舞ふ事は前記の場合にも増して遺憾な事ではあるまいか。
年々幾つか新たに出来るであらう所の各種の研究団体、それ等が一つとして無意義だと思ふものは絶対にない。然るにそれ等が幾何もなく経営困難の為に立消えして行く。或は経営を続けて行くにしても其当時者の苦心の有様は察するに余りあるものが自分の知るだけでも相当ある。それ程迄にしても斯界に貢献しやうとする尊い努力、それは仮令小さなものでも作つて居る私達の殊に深く痛感する所なのである。
私達は此の意味に於て斯うした機関があつたらばと数年依頼待望して居たのであつた。退いて考へれば私達のやうな後進のしかも浅学鈍才の者が斯うした計画をするのは余りにも潜上の沙汰である。併しながら斯んな事は相当の名ある人達の手を煩す事でもない。そう云ふ人達は亦研究と云ふ大事な仕事がある。結局私達のやうな「オッチョコチョイ」に相当な仕事と思つて実は散然として起つた譯なのである。
呉々も云ふ事であるが、諸賢の郷土研究の旅程の忠実なる荷物として有効に利用して貰へる事が出来ればそれが私達の至上の本懐とする所なのである。(松川生)
興味深いのは、松川の「全国的に同志・知己を必要とする。それ等の為にも全国各地方の団体同志がお互に知り合ひ連絡を保つと云ふ事」を課題としており、この課題は柳田国男が持っていたものと同じであるということである。1935年に各地域の連絡を目的のひとつとした民間伝承の会が結成されたが、各地域の連絡が円滑ではないという問題はこの時代共通のものであったようである。
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