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大阪の趣味人・青山一歩の蒐集分野とその動機

 神保町のオタ様のブログの以下の記事でも紹介されている加賀紫水編『百人一趣』(土俗趣味社、1946年)には、青山一歩人という人物が「阿波の大凧」という文章を投稿している。この人物については、森田俊雄『和のおもちゃ絵・川崎巨泉』(社会評論社、2010年)によれば、高橋好劇が主宰していた浪華趣味道楽宗に「第九番 逸凡山乙楽寺」として参加しており、本名は青山冬樹であるという。

青山は、私が以下の記事で紹介した蒐集家名簿『和漢楽(わからん)』(和漢楽、1930年)には、青山は以下のように紹介されている。

大阪 青山天洞一歩氏
一、趣味として
郷土の風俗、習俗、行事、伝説、民謡、其他考古、金石文の見聞、社寺名所旧蹟を探る旅行
蒐集として
前記の趣味に関するいろんな物を集めて居ります
大略は
郷土玩具の内木製もの、雛、天神。以前はいろんなものを集めました。信仰に因む内御影、御守(変ったもの)、小判守、福財布、絵図、縁起書、宝船其他交通券、郵券、燐票、名物票、駅弁票、変形広告、絵封筒、ポチ袋、箸袋、蔵書票、旅館の荷札、封紙、玩具絵、名物箸、杓子、手拭、名物筆、名物容器、絵用箋、小楊枝、お祭、城、瀧、風俗、踊り、名樹木、考古、金石及社寺等の宝物の絵葉書。
二、蒐集を初めたのはしかと記憶しませんが、明治の末頃から大正の初めと思っています。思い出すと早や二昔の月日となりましたが、今更コレと云うてまとまった事もせず懺愧の至りです。
三、学生時代から動物植物の標本を蒐めかけ可成りその時代では熱心の方でした。当時古銭や切手も蒐めまして社会へほり出されてからは記念のいろんなものを手当たりに蒐めましたが、主に郵券でした。後、ある公職に就いてから考古工藝、土俗などの趣味に向いまして延々として今日まで多少の変遷もありましたが、此の趣味を友として愉快な日を過しています。

※一は蒐集物、二は蒐集を始めた時期、三は蒐集を始めた動機。一部を現代仮名遣いにあらためて必要に応じて句読点を補った。

青山は様々なものを蒐集していたが、特に土俗関連を蒐集していたことが分かる。青山は『百人一趣』以外の雑誌にも投稿していたようで、ざっさくプラスで確認すると、以下の文章を投稿している。多くの雑誌に現在でいうところの民俗学関連の文章を投稿していたようである。青山は大阪の趣味人と思っていたが、『郷土趣味』に投稿している文章は愛知県に関する文章である。愛知に住んでいたことがあるのだろうか。

雑纂 名古屋の絵馬会 郷土趣味 第11号 1919年3月
名古屋の土俗品 郷土趣味 第16号 1920年2月
名古屋における迷信 郷土趣味 第18号 1920年6月
尾張国府裸体祭 郷土趣味 第22号 1921年2月
粥占の神事 土の鈴 第7輯 1921年6月
世続地蔵 土の鈴 第13輯 1922年6月 ※筆名は青山冬樹
天神様と雷 民族 第2巻第3号 1927年 ※筆名は青山冬樹
上方の縁起物 上方 第114号 1940年6月

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