楳垣実編『加賀紫水翁記念誌』について
『土の香』を発行していた加賀紫水の仕事を顕彰するために編集された『加賀紫水翁記念誌』という本を紹介したい。この本は後述するように加賀と交流のあった柳田国男が「土の香の思い出」という文章を投稿しており、柳田のこの文章が収録された『定本柳田国男集』第23巻にも「加賀紫水翁記念誌」から収録していると言及されている。そのため、書名を知っておられる方は知っていらっしゃると思われる。
しかしながら、この本は私が調べた限りでは、研究機関や図書館にもほとんど所蔵がない。私が調べた限りでは、広島大学、九州大学の楳垣文庫、富山県立大学の大田文庫、名古屋の蓬左文庫、刈谷市立中央図書館にしか所蔵を確認できなかった。そのため、実際にこの本を調べるのは難しいが、蓬左文庫で調べる機会があったので、今回簡単ながらこの本の紹介をしていきたい。余談だが、蓬左文庫で調べたのは昨年11月だが、今回の記事が下書きのまま公開されずに死蔵されていたため、気付いたタイミングで公開した。
蓬左文庫所蔵のものには贈呈のしおりの挟み込みがあり、加賀治雄(加賀紫水)の名前があるので、加賀から寄贈されたものと思われる。この本の詳細の情報を以下に記載しておきたい。
編集した楳垣によれば、200部が発行されて10部が加賀へ、3部ずつ寄稿者へ残りを希望者へ販売したという。
上記に紹介した目次のように、各投稿者は加賀や彼の発行していた『土の香』についてを回想している。個人的に興味深かったのは加賀と深い交流があったと思われる鈴木重光が加賀に一度も会ったことはなく加賀との交流は書簡を通してのみであったと回想してることである。鈴木は『土の香』の長年の読者、投稿者であったが、加賀と実際に会ったことはないのは意外であった。
(2022/9/13追記)楳垣実「記念誌由来記」入力漏れに気が付いたので追加。