見出し画像

郷土研究社・岡村千秋の辛い二重生活

 以下の記事で取り上げた郷土研究社を経営していた岡村千秋についての詳細の評伝については、荒井庸一「柳田民俗学の山脈―岡村千秋」(柳田国男研究会編『柳田国男・ジュネーブ以後』三一書房、1996年)がある。この論文の中に岡村の辛い生活が伺える部分があったので以下に引用してみたい。

その後、『炉辺叢書』は昼間は博文館に勤務し、夜は編集に専念するといった岡村の努力に支えられ、大正十四年に九冊、翌十五年に七冊と順調に刊行されていった。しかし、三十六冊目にあたる島袋源七の『山原の土俗』を昭和四年二月に出版したところで、刊行中止となる。その理由は明らかでないが、おそらくは財政上の問題であったろう。(太字は筆者による。)

 岡村は郷土研究社の業務を昼間に博文館に勤めた後に行っていたという。岡村のこのような努力によって黎明期の民俗学は支えられていたと言えるだろう。私も規模は分野、規模、労力のかけ方は岡村とまったく異なるが、ここ数ヶ月労働を終えた後に調査趣味誌『深夜の調べ』の最新刊の編集を行っていたので岡村の状況に共感せざるを得なかった。

 そんな労働後の深夜にはじまる編集作業の積み重ねにより完成した調査趣味誌『深夜の調べ』第2号がもうすぐ完成しますので、興味のある方は購入をご検討いただけますと幸いです。


いいなと思ったら応援しよう!

Theopotamos (Kamikawa)
よろしければサポートをよろしくお願いいたします。サポートは、研究や調査を進める際に必要な資料、書籍、論文の購入費用にさせていただきます。