部下に質の高い「疑似体験」をさせる
縦軸に「できる」「できない」
横軸に「やりたい」「やりたくない」
こんなマトリクスを教わりました。縦軸はマネジメントの視点(評価)であり、横軸はスタッフや選手の視点。やりたいかやりたくないかにかかわらず、「できる」スタッフや選手が組織の中心を担います。一方「できない」人は淘汰(契約満了)されていくのが世の中の道理です。
「あなたは一体どこにいますか?」
このマトリクスを提示して、スタッフや選手に考えさせる。「お前はここだよ」と名指しするわけではないので、スタッフや選手の心の中に葛藤が生まれるだけ。皆をリスペクトしたうえで緊張感をつくり、仕事や練習に向き合う姿勢の質を高める試みです。
昨日も少し書きましたが、「できない人」をいかに引き上げるかはマネジメントの手腕。マネジメントがお金を稼げるか否かは、メンバーの成長によるところが大きいです。稼いだお金はメンバーに還元されるという成り行きなので、組織が稼げなければメンバーのお金も限定されるということでもあります。
成功しやすい企画や、例えばサッカーであれば「勝ちやすい相手」と練習試合を組むこともそうかもしれません。まだレベルが期待値に及んでいなくても、成功してしまう(勝ってしまう)経験は勘違いと根拠なき自信を生みます。立て続けに3回、成功体験を積むことができれば、人の自尊心は否応なく高まるはず。
そんな選手ばかりいるチームは、対戦相手からしたら不気味だと思います。根拠なき自信にあふれ、「とにかくチャレンジしたい」スタッフばかりいる組織の売上が低迷するということはおそらくありません。失敗は失敗ではなく経験。そんな翻訳ができる人の行動は止まらないので、「いつかうまくいく」ということなんだと思います。
そもそも、未来を的確に予測(予言)できる人なんてこの世にいるのでしょうか?偉業を成し遂げた経営者が、事前にすべてを見通してミスなくいまに至るなんてあり得ません。超有名な監督であっても、最初の数年、もしくは途中に「勝てない時期」が必ずあります。なぜか解任されなかったという僥倖はあったかもしれませんが、予測したとしても外れて、割と苦しい時期に直面しています。
多くを望まず、手持ちの資源をいかに有効活用して「俺はできる」という自尊心がたとえ勘違いだったとしても、行動し続けるという副産物が、長期的には大きな武器になります。だからこそマネジメントが心がけるべきは、部下に質の高い疑似体験をさせること。勘違いを発動させるための成功体験をいかに提供できるかが、マネジメントの大きな責任だと思います。
久保大輔