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ファンが作品を保守的にしている !? / エンタメ放談 with 品田英雄
THECOO株式会社 代表 平良真人 ( @TylerMasato )がエンターテインメント業界の方とエンタメに纏わるアレコレを好き勝手ぶっちゃけトークしていきます。
お相手は、引き続き日経BP総研・上席研究員であり、テレビやラジオなどでコメンテーターとしても活躍されている品田英雄さん。
品田英雄(しなだ・ひでお)
日経BP総研・上席研究員
学習院大卒業後ラジオ局に入社し音楽番組の制作に当たる。87年に日経BPに入社。「日経エンタテインメント!」創刊に際し編集長に就任。その後、発行人等を経て現職。デジタルハリウッド大学客員教授。テレビ、ラジオのコメンテーターや講演のお仕事もします。
日経新聞で「ためになるエンタメ」日経MJ「ヒットの現象学」連載中。
著書に「ヒットを読む」(日経文庫)。
前回は、エンターテインメント業界がもっと面白くなるには「作品主義」か「タレント主義」かどっちであるべきかなのかと言う話からはじまり、実はそこが対立関係だった訳ではなく、テクノロジーの変化に伴うライフスタイルやビジネスモデルの変化がエンタメに大きく関わっていたと言う話をしてきました。( 前回の記事 # 1 )
作品にはクライアントや広告が付きにくい?
品田英雄氏(以下 品田氏):どうしても僕がタレント主義に悪いイメージを持ってしまうのは、芸能プロダクションが「 うちのタレントのイメージはこうだから 」と言って新しいことをさせないとか、結局既存のファンを大切にすると言うか、守りに入ってしまう傾向になるんですよね。そうすると新しいものが生まれづらいから。マネジメントからすると、タレントさんが結婚すると「 わー!すごいおめでとう!! 」って一時的に好感度が上がるけど、中期的に言うと人気が下がるのを知っている。だから恋愛までコントロールしようとする。
平良真人(以下 平良):それで言うと、最近ご結婚された蒼井優さんはすごいですよね。
少し前に、蒼井優さんが出演している映画『 彼女がその名を知らない鳥たち 』を見て、こんな演技もするんだって思って。一方で結婚会見もめちゃくちゃ素敵な素顔が見えて、彼女は常に新しい感じがして、だから僕は好きなんですよね。
品田氏:岩井俊二さんという類まれなクリエイターが、蒼井優さんを見出して、『 リリイ・シュシュのすべて 』に出演して、その後『 花とアリス 』などの作品に出演していって…
平良:『 花とアリス 』は子供に見せるくらい大好きな映画で、あのバレエのシーンにまさか品田さんが出ているとは思わなかったです!
品田氏:2 人ともこの前まで気づいていなかったですよね(笑)。あのバレエのクライマックスシーンの美しさもそうだけども、岩井監督の映画を見て蒼井優さんを好きになった人ってやっぱりいっぱいいて。そこからどんどん活躍していったわけだけど、その先に『 フラガール 』みたいな作品もやるわけですよね。フラガールの時のプロデューサーが言っていたけど、綺麗や可愛い子は居る、踊りが出来る子も居る、でも、あの一種の田舎くささみたいなものを持ち合わせて魅力的な子ってなかなか居ないんだよねって。それが彼女のキャスティング理由なわけですよ。彼女は、そういうものにも出ているんですよね。だから『 彼女がその名を知らない鳥たち 』で絶賛される蒼井優さんになったんだと思うんですよ。
平良:あれはすごい映画でしたよね。凄まじい。久しぶりに沈む映画でしたね…
品田氏:そう!全然気持ちが明るくはならないんだけど、もうやられた感ですよね。
平良:『 凶悪 』や『 日本で一番悪い奴ら 』の監督、白石和彌さんですよね。ストーリーが好きだし全てが良かったですね。
品田氏:もう蒼井優さんがあの映画にハマるわけよ。阿部サダヲさんが惚れるわけよ。
平良:だんだん蒼井優さんの話しになっちゃいましたけど…。今まで話してきた内容ってシンプルにできないんですよね。「 テクノロジー 」とか「 ビジネスモデル 」とか時代の変化、外部環境の変化みたいな基準も入れて一緒に考えないと。
品田氏:もうそれを今日の結論にして終わりにしたいくらい。「 作品主義 」と「 タレント主義 」は対立軸だと思っていたけど、実は違ったんですね。
自分の経験から言うと、21 世紀になってCDが売れなくなって、人の 10 倍のお金を払うマニアは 10 人分の価値があるとなったわけです。そうすると、そういう人にいかに買ってもらうかを考えて、ジャケットを 3 種類作ったり、付録つけたり、「 握手できますよ 」ってしたり。誤解を恐れずに言うと、作品の質を問わない時代が 10 年ちょっと続いたんですよね。それが、日本のエンターテインメント業界の足を引っ張ってしまっているような気がして、正直、否定的に思ってた。
平良:それに関して、敢えて言うとすると、ビジネスモデルの話しをした時に、さっきから 消費者向けのビジネスの話ばかりしているけど、ビジネスモデルとしては、法人向けビジネスの話もくっついていて、タレント主義の方が法人向けのビジネスがしやすいと思うんですよね。作品にはクライアントや広告が付きにくいんですよ。
品田氏:なんでなんで?それ知りたい!
平良:例えば『 STARWARS 』のキャラクターにはクライアントがつくじゃないですか。でも映画にスポンサーつけますとなると、お金を集めづらいと思うんですよ。リターンが難しいですよね。もちろん投資としてはありだと思います。でも、広告目的で、例えばですけど、『 STARWARS 』の中で T シャツ着るとかはやらないじゃないですか。作品を大事にしたら余計に難しくなる。
品田氏:そうだね。作品の良し悪し好き嫌いは、いくらプロモーションしたところで変わらないからね。
平良:さっきの話でいくと、人はその人のイメージの範囲内ではなにやっても良くて、その人が着ていたり使っていたら好きになるじゃないですか。ビジネスモデルとしては、法人からお金をとった方が効率が良いなってこともあると思うんです。
品田氏:なるほど〜。
平良:しかも今はそれが架空でもよくなっている訳ですよ。VTuberとか。
品田氏:対抗しなきゃな、俺。どうしたら良いんだろう。。。
誰かのファンであることが心をホッとさせる
品田氏:全日本テレビ番組製作社連盟( ATP )という組織があって、その中で、ATP 賞テレビグランプリというものを毎年選んでいるのだけど、その審査をやっているんですよね。
平良:品田さんってやっぱすごいな。今更ですがすごい人とお話しているんだなって思いますね。
品田氏:全然尊敬していないでしょ。
平良・広報 赤塚(以下 赤塚):していますしています!!尊敬はしています!!(爆笑)
品田氏:それでね、その賞には、ドラマ・情報バラエティ・ドキュメンタリーと 3 部門あるんだけど、今年の最優秀がいずれもNHK の放送作品だったわけ。番組制作会社は違うんだけど、放送は全部 NHK。それから総務大臣賞は各ジャンルから 2 〜 3 作品持ってきて、その中から 1 本世界で通用するものを選ぶのだけど、8 本集まってきてこれも全部 NHK の放送だったの。BS とEテレも含めて。
平良:それは忖度とか無いんですよね?
品田氏:そう。審査委員長に話を聞いたら実は 3 年くらい前からその傾向ははっきりしていて。以前は民放と NHK で審査員も皆バランス取ろうとしていたけど、最近は面白いもの新しいものを探すと NHK になってしまっているんですって。
平良:お金の問題ですかね。。
品田氏:テレビ業界のシンポジウムとかにも行ったりするんだけど、今テレビ局の人が気にしているのは、インターネットが出てきて、テレビはどういうデータを持って行ったらスポンサーが喜んでくれるのか、もっと言うと「 買ってくれるのか 」を試行錯誤している。そうすると番組としての新しいものがなかなか出てこないわけよ。
平良:だからサブスクリプションモデルの NHK が新しいものを作れるわけですね。
品田氏:そう。あと次は WOWOW なんですよね。
平良:確かに僕も見ちゃうもんな。WOWOW と NHK のドラマ。でもそれっておかしいですよね、アカデミーとか Netflix の番組を締め出そうとか議論している訳でしょ。
品田氏:そうなんだよね。日本では新しい企画を時間使って開発したとしても採用しなければ一銭も返ってこないんですよ。ところが Netflix は開発費として出そうと。韓国も開発費を出すらしいんだよね。韓国のドラマが世界でリメイクされるようになったのは、コンセプトと脚本が素晴らしくて、それは何度も何度も練っているからなんですよね。それを日本はやってこなかったって。
平良:日本の場合は、唯一アニメだけそうなったわけですよね。
品田氏:そうですね、Netflix 側がお金を出すようになったから多分変わっていくんですよ。見る立場からすると、ファンが作品を保守的にしているんだろうって結構言われてる。
平良:まぁでも結構酷ですよね。日本人どうこうじゃなく、単純に作品に触れるメディア・きっかけが結局はみんなが好きなようなものが好きになる仕組みになってきたわけですよね、Facebook とか SNS もそうですけど。
品田氏:そう、平良さんの言う事が結論だったなって 60 年かかってわかったわけよ。さっきからずっと作品主義、作品主義って言ってるけど、タレント主義の良いところは、心が温かくなるよね。作品主義だと褒めたり貶したりが大変だし、もっと言うとファッションと一緒で、ミニスカートが素敵だったのにある日突然ダサくなるとか。時代と共に変化しちゃうんだなって。
平良:そうですね。文化や政治の影響が強そうですよね。
品田氏:そう!そういうものでどんどん変わる。だから、タレント主義っていうのは実は人間の心をホッとさせるものが残っていて。だから、平良さんの言い分は悔しいけど今すごく尊敬しています(笑)。
平良:いやいや、僕は作品主義なんですよ。僕は小さい頃からロッキングオンを必ず見てて、うんちく述べてくれるのがたまらなく好きだったんですよね。だから作品主義だと心が温まらないっていうのはそういう事だと思うんですよね。批評しちゃうから。
品田氏:そうなんですよ。
平良:でも批評している人もコアファンじゃないですか。ファンってことは同じなんですよ。またややこしい話ですけど。
ルックスも作品の一つである
赤塚:作品主義の人は情報量が多いのかもしれないですよね。これが素晴らしいって判断できるだけ知識があるってことですよね?
品田氏:知識は別にして経験はあるよね。今までこうだったのに!とか
平良:知識もあるかもしれないけど好奇心があるんじゃないですかね?なんでこの時代にこの曲が出てきたんだろうとか考えるし。クラシックファン・ジャズファンって作品主義ですよね?あと演劇ファンの人も作品主義の人が多いな〜って。
赤塚:美術館に行って、美術が分かる人ってことなのかもですね。
平良:僕らの VINYL MUSEUM は違いますね(笑)。
赤塚:VINYL MUSEUM は "フォトジェニック" アート展ですからね(笑)。今日から SHIBUYA109渋谷 で開催されています!( ※宣伝 )
品田氏:(笑)
先日、最後の蜷川さん演出の舞台、村上春樹さん原作の『 海辺のカフカ 』の再演を見たんですね。
平良:『 海辺のカフカ 』って演劇にできるんですね。
品田氏:そうなの!だから、すごく面白くて。場面が飛び飛びの話しをどう演劇にするかがすごく難しいんですよ。それを色んな工夫で見事に表現していて、もうすごいわ!って、ただただ感動したの。そうよく考えると、俺は再演ってタレント主義だと思ってたけど、作品主義だったんだなって。
平良:そうですね。
品田氏:じゃぁ歌舞伎もそう?
平良:確かに色んな人がやるけど、その人によってテイストを変えているから、「 誰がやったこの演目が好きだ 」っていうんじゃないかなって思うんですよね。
品田氏:それぞれがそう思っていて、だから実はその境目はなかったということ!
平良:ない!ないですね。
品田氏:つまり、出演者、タレントがいて、作る人がいて、その両方が組み合わさることで面白くもなるしつまらなくもなる。
平良:僕らずっとこの 2 つを議論してきましたけど、今日の結論は「 相関関係 」がすごくあるということ。やっと分かったということですね。
赤塚:意外とタレント主義の人も作品から入っているケースも多い気がします。例えば、音楽のメロディから入る場合は知識も必要だし、人間性もわかりづらいから、より作品ぽくなっていくじゃないですか。でも歌詞から入るパターンの人って、タレント主義になりやすいのかなと思うんですよ。
平良:あーなるほどね。
赤塚:本人が書いている歌詞の場合、その人がどんなことを思っているのかなんとなく感じることが出来て、曲が増えていけばいくほど、どんどんその人のことが想像できるじゃないですか。そうするとその人に興味を持ってより知りたくなって、結果気づいたらその人のファンになっている。そういうケースも多い気がします。
品田氏:それだと、僕が言っている「 イケメン至上主義 」はどうなるの?
赤塚:イケメン主義の人もいると思いますけども。。
品田氏:それはテクノロジーの進化のおかげですぐに顔が見えるようになった時点で、ルックスが大事になったってこと?
平良:それも作品の中の一つと定義づけたんでしょうね。
赤塚:ルックスも、イケメンだったら良いとも限らない気もしていて、例えば、アーティストとしてイケメン過ぎず、可愛すぎず、それっぽい人が良いとかあるのかなって思っています。以前に、超絶美人な子が失恋ソングを歌っても説得力が無いから、ちょうどいいことが大事と聞いたことがあります。
品田氏:昔は「かわい子ちゃん」って言葉があったんですけど、今はかわい子ちゃんってルックスがあったとしても、かえってそれがハンデになることもあるってことよね。
赤塚:そんな気もしています。
平良:いや〜俺はそれは人による気もするけど。
品田氏:どうなの?
平良:例えば、大人気アイドルの A さんって 100 人いたら 95 %は綺麗って言うんじゃないかなって。
品田氏:でも綺麗だからと言って…
平良:人気じゃないですか。
品田:中長期的に。中身があれば良いってもんでもないでしょ。
平良:中身知らないもん僕、綺麗だなって思いますよ。
品田氏:(笑)そっか、それだよね。
赤塚:A さんをアイドル的に可愛いって思っている人はたくさんいるじゃないですか。彼女はアイドルだから。でもアーティスト的に A さんを好きって思っている人がいるかはわからないですよね。
平良:それはいいんじゃない?タレント主義だから、何をやっても。
赤塚:アイドルの中にも、アーティスト的に好きになってもらえる人もいると思うんですよ。私が思うには、その人は何をやっても OK になりやすい人だと思っていて、A さんは何をやっても OK にはなりづらいのかなって思ったんですけど。
平良:さっきの品田さんの言っていた「 ブランドを気にしないといけない 」ってこと?
赤塚:なんとなくですが、そんな気がします。
品田氏:なんかすげー面白い話。論文 2 本くらい書けそうだよね。
平良:そんな書けます?(笑)
品田氏:結果として、やっぱり見た目から好きって言う人の方が多いよね、きっと。
つづく
編集・構成 / 赤塚えり
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