朝。
ものすごく重たい瞼を、ゆっくりと押し上げ、目覚めた。
無意識にスマホをつかんだ手を、引っ込める。
顔を洗って、歯を磨く。
それからゆっくりとコーヒーを入れて、丁寧にメイクをしあげた。
ゆっくり、ゆっくり動いた。
そうしないと、ふとした振動で涙が滲んで溢れてしまいそうで。
通勤用のフラットシューズに足を入れ、外へ踏み出す。
ピリピリするくらい冷たい空気を肺一杯に吸って、吐き出した。
また吸って、吐き出す。
心臓がたまにぎゅうと鳴る。
鼻がツンとする。
後ろから吹いた風が空に舞い上がったので追ってみたら、
朝の空が広がっていた。
私の決断を全て肯定してくれているような、青く、どこまでも広がる澄んだ空。
私はまっすぐ前を見ると、彼を失った昨日から踏み出した。