カエルになった女の子のはなし
むかしむかしあるところに、エフィアスちゃんという女の子がいました。
エフィアスちゃんは、料理の本を読むのが大好きで、毎日まいにち、朝から晩まで大好きな料理の本を読んでいました。
ところが、エフィアスちゃんには、料理のつくりかたが書いてある字が読めません。どんなふうに作れば、こんなに美味しそうなものができるんだろう。
いつもそう思いながら、おいしそうな写真を眺めては、この本が読めたらどんなに楽しいだろうと思っていました。
エフィアスちゃんは、朝起きたらまず台所にいって、料理の本を開いて、寝る前にもその本を開いて、夢の中でもその本を開く夢を見ました。
ところでエフィアスちゃんの右足には、生まれたときから小指がありませんでした。みんなに「なんでお前の足は、4本しかないんだ」とからかわれて、いつもとても恥ずかしい思いをしました。
みんなの両足は5本づつ指があるのに、じぶんの右足には、4本しかありません。
ひだりの足には、小さくて細長い、綺麗な指が親指から小指まで5本並んでいました。
エフィアスちゃんは、その足の可愛い指が大好きでした。毎晩ねるまえになると、お星さまにむかってお祈りしました。
「わたしの右足にも、小指が生えますように。大好きな料理の本が、読めるようになりますように。」
そんなある日、また大好きな男の子に「お前の足はカエルの足!字も読めないエフィアス!」と長くて美しい自慢の髪の毛を引っぱられて泣いていると、とてもとても悲しいきもちになりました。
「いっそのこと、ほんとうにカエルだったらよかったのに。」と思いながら、泣いても泣いても涙が止まりません。
こんなに料理の本が大好きなのに、作り方がわからない。
こんなに自分が大好きなのに、足の指が4本しかなくて、いじめられてしまう。
その夜、泣きつかれたエフィアスちゃんがいつものとおりお星さまにお祈りして眠ると、なんと、朝起きてカエルの足になっているのに気がつきました。
エフィアスちゃんはびっくりして、「わ!」と声をあげると、あれよあれよという間に手もカエルの手になり、お腹も身体もすべてカエルになってしまいました。
目をぱちぱちさせながら足をよく見てみると、あかるい艶々したグリーンの濡れた足には、なんと、左も右も、5本きれいな指が揃っていました。
いままで4本しかなかったと思っていた指は、じつは小指とくすり指がくっついていたことがわかりました。
エフィアスちゃんは、ふいに思い出したように台所に走っていきました。ぴょんぴょん飛び跳ねて、カエルのエフィアスちゃんが、いつも読んでいる料理の本を開くと、(まるでグーグル翻訳のアプリで写真を撮ったように!タオダメだし) 魔法がかかったように
これまで記号のようにしか見えなかった料理の作り方が読めるようになっていました。
エフィアスちゃんは、さらに目をまんまる開きながら夢中になって料理の本のページを次々めくっていきます。
どんなふうに作るんだろう。どのくらい入れればいいんだろう。いつも、めいっぱいの想像を膨らませて、作り方を長い間夢見ていた方法が、そこに一字一句、全て事細かに書かれていました。
はじめて見たはずの文字は、カラカラのひからびた大地に染み渡る雨のように、カエルのエフィアスちゃんの中に吸い込まれていくようでした。
それはまるでまほうのようで、知らないのに知っている、知っていたのに知らなかった、そんな不思議な感覚がしました。
だいすきな朝ごはんを食べるのも忘れて、料理の本を真剣に読んでいると、手がカエルの手から、いつもの自分の手になっていることに気がつきました。
あわてて右足の小指を見ると、そこにはちゃんと、5本の指が揃っていることに気づきました。
料理の本は、元のように字が読めなくなっていましたが、さっきすべてがエフィアスちゃんの中に取り込まれたように、エフィアスちゃんはちゃんと、すべての作り方がわかるようになっていました。
いままで見たことがなかった、右足のくすり指と小指の間をじっと不思議そうに眺めていると、その間から星空が拡がっていきます。
指の間からきらめく星のシャワーを追いかけるように、エフィアスちゃんの大きな目にはキラキラとお星さまが映っていました。
おしまい
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