【こころ #84】子供時代に逆境的な体験がある母親のために
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ももこさん
2019年9月から毎月一回、小児期逆境やヤングケアラー経験があるお母さん達が集まり、「前半は言いっぱなし聞きっぱなし、後半はテーマを決めて」対話する場が開かれている。その名も、『マザーズ・ダイアログ・カフェ』。テーマに基づく対話の内容は、毎回グラレコにまとめられ、Xで公開されているので、是非見てみてほしい。
「たくさん話してほしいので」毎回の人数上限は6名と限られているにもかかわらず、これまで参加したお母さんは20代から50代まで、延べ200名以上にのぼる。逆境的な体験故に「同じ人がいたんだ、理解してくれる人がいるんだ」といった感動を生み、未婚の女性も「逆境を経験しているのに、なぜ家庭をもったのか?」といった相談に訪れる。
この『マザーズ・ダイアログ・カフェ』を立ち上げたももこさんも、小児期から逆境的な体験をもつ。
2歳の時に両親が離婚、3歳から母親が付き合っていた男性から10年ほど性的虐待を受け、母親がDVを受ける姿も見てきた。母親が精神的に不安定で育児ができず、13歳までに13回も引っ越しを繰り返し、小学校時代は「スポッと記憶がない時期もある」
寮のある学校に入ることで親元を離れることができたが、それまでの環境も背景に自傷行為をするようになり、精神科にかかり荒れた時期もあった。
それでも、ももこさんは「(過去の経験に)蓋をして」就職し、結婚し、お子さんももうけた。その間、「蓋を締めきれず」に過労も手伝って入院・休職することもあったが、「色々あったけれど、結婚して幸せだし、産後うつもないし、ようやく乗り越えた、もう大丈夫だ、と思っていた」
でも、蓋が開いてしまう瞬間は、突然やってきた。お子さんが2-3歳の頃、おむつ一枚の娘さんを見たことがきっかけで、過去の虐待体験が一気にフラッシュバックした。かつて自分が虐待を受け始めた年頃。そして、お風呂場での虐待が激しく脳裏に甦り、ももこさんは、娘さんをお風呂に入れることができなくなった。
最初は「仕事も家庭も忙しかったので、うつ病だと思った」。しかし、精神科に行くと、色々と聞かれ、昔のことを話すと、「そうした逆境的な体験をした人には、よくあること」と言われて、逆にホッとした。
一方で、「他の人ってどうなんだろう?」と思い、当事者会に足を運んでみたものの、例えばアダルトチルドレンの会であればみなが母親というわけではないし、逆に地域の子育ての会に行っても逆境的な体験は話しづらかった。
そうした中で、Xでつぶやき始めたことでつながり、その中でも特に感性が合ったのが、漫画家のヤマダさん。「自分たちで作るしかない」と、背中を押してもらい、共に『マザーズ・ダイアログ・カフェ』を立ち上げた。
正直、最初は「(精神科に通っていた若い頃の)ひどかった自分のような人が来たらどうしようと不安だった」。でも、集まってくれた方々は、医療や福祉につながっている人、お子さんと離れて暮らす人などバックグラウンドは違うが、「日常生活でうまく押し隠して頑張っているし、どこかで分かり合えるところがあった」
そして、このおかげで「自分も落ち着いてきた。自分のために続けているところも大きい」
今は虐待防止や子育て支援など行政の支援も充実しているのでは?と聞くと、ももこさんからの答えは、「子供時代は、親が言うことやその環境を当たり前だと思ってしまうので、誰かに訴えるべきことだという判断がつかなかった」。そして、育児する立場になった後も、「いつも“普通の母親”を目指して頑張っているから、育児ができない人だと思われてマークされるかもと思うと、行政や幼稚園には絶対言えない」
また、こういった当事者の経験は「専門職の間では当たり前かもしれないが、それ以外の人にはほぼ知られていない。世の中で知られていても逆境を乗り越えたケースばかりで、乗り越えていないことが恥になってしまえば、やっぱり言えない。もっと言いやすくなるように、まずこういった経験の認知度が高まってほしい」と、ももこさんは話す。
行政もこうした普及啓発の機会を提供してくれている一方で、同じ普及啓発を担う「当事者会を開催できる物理的な場所を提供してくれると、もっと嬉しい」とも話してくれた。
こうした受け皿として価値をもつ当事者による対話の場を、これまで毎月続けてこられた秘訣も聞いた。
当事者会以外に「本業があることがすごく大事」。当事者として当事者会をメインにしてしまうと、何かあった時のダメージが大きい。でも、例えば仕事や別のコミュニティなど、他にも自分が役割をもつ関係性があると、何かあっても切り替えられる。また、メインにすると宣伝したり出版したり儲ける必要も出てきて追い込まれてしまう人も見てきた。
ももこさんにとっては、長く続けるために、ライフワークとして、儲けたり自身を売るのではない方法が合っていた。また、「パートナーのヤマダさんや他のグループを運営する先輩の存在が、長く続ける助けになった」と話す。
そして、他の当事者会の運営も参考にしてきた『マザーズ・ダイアログ・カフェ』にたまってきたコツを、今度は運営マニュアルにまとめるなど、新しく始める人たちなどに還元していきたい気持ちもある。
ちなみに、ももこさんはこれまで長くひとつの企業に勤めながら、担当業務の傍らで社内のダイバーシティ活動にも参加してきた。でも、担当業務が忙しくなれば、活動は滞る。そこで昨年、別の企業の人事部に転職し、DE&Iや人権デューデリジェンスの担当になった。
本業をもちながら当事者会『マザーズ・ダイアログ・カフェ』を続けることは変わりないが、より当事者の経験や関心を活かせる業務に本業を変えたのだ。人を集めて対話するスキルなど、「当事者会の活動が仕事にも生きている」
当事者会の一つひとつは、決して大きくないかもしれない。しかし、それぞれが継続し、増えていくことが、社会のセーフティネットとして折り重なり分厚くなっていく。それが会社の外だけではなく、会社の中にもその要素があれば、個人にとってのセーフティーネットはより分厚くなる。
ももこさんはそんな一翼を担っておられる。そして、ももこさんのように、過去の経験を次の社会のセーフティネットに活かす、そんな人が増えていってほしい。
ここまで読んでくださった皆さまに‥
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