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『WOMEN 9』
『WOMEN』 Charles Bukowski
リディアとオレはいつもケンカをしていた
彼女は何人もの男に手を出しオレをイライラさせる
オレたちが外食に行ったときでも彼女は店にいる男たちにジロジロ目をやる
友人たちが家にやって来ても彼女の会話は親密さをまし性的な色気を帯びていく
彼女はいつもそいつらの近くに座り近づけるだけ近づいていく
オレの酒の飲む量が彼女をイライラさせる
彼女はセックス中毒で、オレの飲酒が2人の愛を作ることを邪魔している
「夜ファックするときは酔っ払いすぎているし、朝ファックするときは二日酔いのどっちかじゃない」彼女は言う
もしオレがリディアの目の前でビールでも飲もうもんなら彼女は激怒する
オレたちは少なくとも週に1度は別れ話をするーー今回こそ終わりだーーだがいつもどうにかこうしてよりを戻している
彼女はオレの頭の彫刻を終えそれをオレに渡した
オレたちが別れ話をするたびに”頭を”車の助手席に乗せ、彼女の家に向かい、そいつを家のポーチのドアの前に置く
オレは電話をして言う
「おまえのクソッタレの頭はドアの外にあるぞ!」
”オレの頭”はあっちへ行ったりこっちへ来たりした、、、
オレたちはまた距離をおき、頭をあっちへやった
オレは酒飲みの自由な男に戻った
若い友人がいる、ボビー、退屈なやつでポルノ専門の本屋で働き、カメラマンもやっている
やつは数ブロック離れたところに住んでいる
自分自身の問題とやつの妻のヴァレリーとの問題を抱えている
ある夕方やつは電話をかけてきて、ヴァレリーをそっちへ連れて行って夜をいっしょに過ごしていいか言った
歓迎だった
ヴァレリーは22で、長いブロンドの髪に、狂ったような青い目、魅力的なカラダ、素敵だった
まるでリディアだ
彼女も精神病院に入っていたことがあった
しばらくして庭の前の芝生に彼らが乗り入れる音を聞いた
ヴァレリーが出てきた
ボビーが言っていたことを思い出した
やつが最初にヴァレリーをやつの両親に紹介したとき、両親は彼女のドレスについて”とても似合っていて気に入っている”と意見を言った
「そう、では他の部分はどうですか?」彼女は言いケツのところまでドレスを引き上げた
彼女はパンツを履いていなかった
ヴァレリーがノックした
ボビーが去る音が聞こえた
彼女を中に入れた
素敵だった
スコッチアンドウォーターを2杯作った
どちらも口を開かなかった
オレたちはそれを飲み終えもう2杯注いだ
2杯目を飲み終えたあとオレは行った
「なあ、バーにでも行こうか」
車に乗り込んだ
”グルー・マシーン”は角のところにある
週の始めにオレはその店から出禁を食らっていたが、店に入っても何も言われなかった
テーブルをとり飲み物を頼んだ
オレたちはまだ喋らなかった
彼女の狂気を帯びた青い目を見つめた
オレたちは隣同士に座っていた
彼女にキスをした
彼女の唇は冷たく開いていた
もう一度キスをした
オレたちの脚が触れ合う
ボビーはいい女を嫁にした
こんないい女を回してくれるなんて気が狂ってるな
ディナーをとることにした
オレたちは互いにステーキを頼み、料理が来るのを待つあいだ酒を飲んでキスをした
バーメイドが言った
「恋してるのね!」
オレたちは笑った
ステーキが来るとヴァレリーは言った
「やっぱり食べたくないわ」
「オレも食べたくなくなった」オレは言った
オレたちはもう1時間飲み、家に帰ることにした
車を庭の前の芝生に止めたとき路肩に女がいるのを見た
リディアだった
彼女は手に封筒を持っていた
オレはヴァレリーと車を降りた
リディアはオレたちを見つめていた
「誰あれ?」ヴァレリーは聞いた
「オレが愛している女だ」オレは彼女に言った
ヴァレリーは振り向き路肩のほうに走り去った
歩道にハイヒールのカツカツいう音が響く
「来いよ」オレはリディアに言った
彼女はオレについて来て中に入った
「この手紙を渡しに来たの。丁度いいときに来たみたいね。誰あの女?」
「ボビーの嫁だ。ただの友人だ」
「ファックするつもりだったんでしょ、そうでしょ?」
「なあ、聞けよ」オレは言った「愛してるはおまえだ」
「ファックするつもりだったんでしょ、そうよね?」
「なあ、聞いてくれよ、ベイビー、、、」
突然彼女はオレを突き飛ばした
オレはカウチの前に置いてあるコーヒーテーブルの前に立っていた
テーブルとカウチのあいだに倒れた
ドアがガシャンと閉じられる音が聞こえた
オレは立ち上がりリディアの車のエンジンが作動するのを聞いた
彼女は走り去った
まったくなんてやつだ、オレは思った、2人の女を手にしたと思ったら、次の瞬間にはどちらもいなくなっていた