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『WOMEN 16』

『WOMEN』 Charles Bukowski
不動産業をやっている元レスラーの日本人がリディアの家を売った
彼女は出て行かないとならなくなった
リディア、トント、リサ、犬のバグバット
ロサンゼルスでは大家の大半が同じ看板を掲げている
”大人に限り入居可”
2人の子供に1匹の犬がいると部屋を見つけるのも難しくなる
ただリディアの容貌があればある程度の融通は効くはずだ
男の大家にとっては断りづらい頼みだろう

彼女たちを連れて街中を車で走った
まったくの無駄だった
車の中に隠れていたがそれも無駄だった
走っている最中にリディアは窓から顔を出して叫んだ
「誰か2人の子供と1匹の犬を連れた女に部屋を貸してくれない?」
意外にもオレが住んでいるところに空きが出た
住人が引っ越しているのを見てすぐにオキーフ婦人の元へ話しに行った
「聞いてくれ」オレは言った「ガールフレンドにどこか住むところが必要なんだ。2人の子供と1匹の犬がいるけどいいやつらなんだ。彼女らをここに住まわせてもいいかな?」
「あの女は見たことがあるわ」オキーフ婦人は言った「彼女の目を見て気づかないのかい?イカれてるよ」
「彼女がイカれてることくらい知ってる。でもいいやつなんだ。いいところだってあるんだ、ホントに」
「あんたには彼女は若すぎるよ!あんなに若い女といったいどうしようというの?」
オレは笑った
オキーフさんが婦人の後ろから歩いてきた
彼は網戸を通してオレを見た
「女の尻に敷かれてるんだ、それだけだよ。簡単なことだ、女のいいなりだ」
「住んでいいいのか?」オレは聞いた
「そうね」オキーフ婦人は言った「住んでいいわ、、、」

リディアはU-HAULで引っ越し用のトラックを借りオレは彼女の引っ越しを手伝った
荷物の大半は服で、それと彫刻した頭と大型の洗濯機だった
「わたしはオキーフ婦人が気に食わないわ」彼女はオレに言った「夫のほうは大丈夫だけど、あの女のほうは気に入らない」
「彼女は立派なカトリック教徒だし、おまえには住むところが必要だろ」
「あなたにはあんな人たちといっしょに飲んでほしくないの。あの人たちはあなたをダメにするわ」
「家賃を毎月85ドルにまけてくれてるんだ。自分たちの息子のように扱ってくれる。たまには彼らとビールでも飲まないわけにはいかないだろ」
「息子!バカじゃないの!あなただってあの人たちと同じくらい年寄りじゃない」

3週間が経った
土曜日の朝遅く
前日の夜にリディアのところでは寝なかった
風呂に入りビールを飲み着替えた
オレは週末が嫌いだった
誰もが通りに溢れ、卓球をしたり芝を刈ったり車を磨いたりスーパーマーケットに行ったりビーチに行ったり公園に行ったりする
そこらじゅう人だらけだ
月曜日が最も気に入っている
誰もが仕事に行き周囲から消える
混んでいるとわかっているのに競馬に行くことにした
ロクデモナイ土曜日になるだろう
ゆで卵を食べビールを飲みポーチに出てドアをロックした
リディアは外に出て犬のバグバットとじゃれていた
「やあ」彼女は言った
「やあ」オレは言った「競馬に行くよ」
リディアがこっちへ来た「ねえ、競馬に行くとどうなるかわかってるでしょ」
「昨日の夜酔ってたでしょ」彼女は続けた「ひどかったのよ。リサを怖がらせて。あなたを追い出さなくちゃならなかったし」
「競馬に行くよ」
「わかった、競馬にでもどこにでも行けばいいわ。もし行くんだったらあなたが戻ってくるときわたしはここにはいないから」
芝生の前に止めてある車に乗り込んだ
窓を下ろしエンジンをかけた
リディアは歩道に立っていた
彼女に手を振り通りに車を出した
心地いい夏の日だった
ハリウッドパークに向けて車を走らせた
新しい賭け方を見つけた
どの方法もオレを少しずつ富へ近づけていく
あとは時間の問題だった

40ドル負け家に帰った
芝生に車を止め降りた
ドアに向かってポーチを歩いているとオキーフさんが歩道からやって来た
「彼女は出ていったよ!」
「何だって?」
「君の女の子だよ。出ていったよ」
オレは何も答えなかった
「U-HAULのトラックを借りて荷物を積み込んでたよ。ものすごく怒っていたな。あの大型の洗濯機のこと知ってるだろ?」
「ああ」
「あれは、でかすぎる。わたしには持ち上げられなかった。トラックの男の子にも手伝わせなかったな。彼女は自分であれを持ち上げてU-HAULに積み込んでたよ。それから子供と犬を連れて出ていった。1週間分の家賃はまだあったんだけど」
「わかったよ、オキーフさん、ありがとう」
「今夜飲みに来るかい?」
「どうだろうな」
「来てくれよ」
ドアを開け中に入った
彼女にエアコンを貸していたんだった
クローゼットの外にある椅子の上に置いてあった
エアコンの上にノートと青のパンティーがあった
ノートにはなぐり書きしてあった
「このロクデナシ、借りてたエアコンよ。わたしは出ていくから。もう戻ってこないから、クソ喰らえよ!寂しくなったらわたしのパンティーでヤッてろ。リディア」

冷蔵庫にビールを取りに行った
ビールを飲みエアコンのところへ行った
パンティーを取り上げその場に立ったままこれでやれるか考えてみた
「ケツ喰らえ!」オレは言いパンティーを床に投げ捨てた
電話のところに行きディーディー・ブロンソンの番号にかけた
彼女は電話をとった
「はい?」彼女は言った
「ディーディー」オレは言った。「ハンクだけど、、、」

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