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自他境界(愛着の問題)

人の悩みや苦しみにはそれを他の人に代わってもらえる領域と代わってもらえない領域があります。その境界線のことを自他境界と言います。


自他境界の感覚を持つ人

自他境界が自分で見えている人は、境界のすぐそばまで来てくれて共感してくれたり支えてくれたりする人を親密な人と認識することができます。それはあなたのよき理解者である親友、恋人、パートナーなどです。


自他境界の感覚が乏しい人

一方、自他境界が見えていない人は、親密な人が現れた場合、私を100%理解してくれる人がいるのではないかという幻想が現れます。それと同時に見捨てられ不安も膨らみます。その結果、次のような行動に出ます。

①100%信頼できるかをはっきりさせる。(試し行動)
②葛藤を感じないようにその人から遠ざかる。(遠ざかり)

試し行動とは、例えばけがをした時にどれだけ早く駆けつけてくれるかなどを試すことです。
自他境界の感覚が乏しい人は不安を避けるために自分から遠いところに自衛のための壁を作ります。(この壁は生きてゆくために設けられた壁です。)

この壁の存在は非常に厄介なものです。まず親密な人ができません。
みんな壁の外にいるからです。ですから、人を頼ったり、助けを求めたりすることもできません。かたくなに自分の世界に入って自己解決しようとして苦悩します。

どうやればこのような人たちの内面に近づくことができるのでしょうか。
一つは時間をかけて徐々に不安を取り去ることです。でもこの方法だと年単位で時間がかかってしまいます。それほど壁は強固です。

二つ目は、積極的に自分の内面の話をして相手の心に働きかけるというものです。これは返報性の原理(相手から受けた好意や敵意などのアクションに対して、「お返しをしたい」と感じる人間にとってごく自然な心理)を利用したものということができるのかもしれません。自分から進んで心を開いて相手に分かってもらおうとする人は唯一、壁を乗り越えることができる可能性があります。でもそんな人はめったにいません。

自分から助けを求めたり頼ったりできない人(自衛の壁を持つ人)は、自分を理解してくれる人を持つのは至難の業といえます。なぜなら自ら壁を乗り越えてくる人を待たなければならないからです。こうした問題を抱える人は親密な相談相手が必要ですが、そんな相手に出会えるのは実際には一人いるかないかというレベルだそうです。(実際に数名の方から同じような話をお聞きました。)

親密な相手ができると悩みを聴いてもらえたりできるので安心できるでしょう。でも本当に大切なことは、自分が普通の人と違う世界にいることに気づくことだと思います。そして自他の世界の差をお互いに理解することで偏った考え方などに自分で気づくことなのだと思います。

人間とは何だろう、という問いを考えることがあります。人それぞれいろんな答えがあると思いますが、そんななか私が得た答えの一つは、

人を変えることは難しいけれど、人は自ら変わることができる。

ということです。このような考え方はロジャーズのカウンセリング理論にもつながります。
ロジャーズの来談者中心療法は、クライエントが自らの成長や解決策を持っており、カウンセラーなどの指導を受けることでそれを引き出すことができるというものです。ロジャーズは、人間は自己実現の本能を持っており、成長を遂げようとする傾向があると考えています。
このような手法を行えば変わるきっかけをつかむことができるかもしれません。親密な人がいない場合にはカウンセラーに頼るという方法もあります。

いま親戚の子供に扱いずらい小学生の女の子がいます。お母さんも手を焼き始めたようです。今度会ったときには、お母さんに言えない何かがあればそっと聴いてあげたいと思います。

参考
「メンタライゼーションでガイドする外傷的育ちの克服」 崔 炯仁


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