カウンセリング心理学② 認知行動療法
認知とは、人間が自身の五感を通じて外部からの情報を受け取り、それを理解し、意味を付与する過程のことです。私たちは日常の生活の中でいろいろなことを判断していますが、強いストレスなどでその判断に狂いが生じることがあります。認知はその時々の感情や行動に影響します。
現実にそぐわない極端な判断をしてしまうと気持ちがつらくなったり不適切な行動をとるようになることがあります。
認知の偏り
認知がマイナスに偏り過ぎるとつらい気持ちは大きくなります。でも、何でもかんでもポジティブに考えればよいというものでもありません。大切なことは、現実に目を向け判断することです。
現実をよく見ないで判断するとそれは決めつけになってしまいます。これを防ぐにはきちんと情報を収集し予測することが必要です。
立ち止まって考える
何か問題が発生した場合には、できるだけ早く対応したほうがいいのです。心配でも立ち止まって現実を確認することが大切です。
とっさの判断は正しいのか
ストレスを強く感じているときは冷静さを失っていますから極端な考え(白黒思考)をしてしまうことがあります。そのような場合には、自分を守ろうとして良くない可能性を考えがちです。そして気持ちが落ち込むとさらに良くない可能性を考えてしまい、青の悪循環が誤った判断を助長します。
これを断ち切るにはとっさの判断が現実的なものかどうかを検討する必要があります。よくない可能性は現実的に起こりえないものの過大評価なのかもしれません。
大切なことは自分はどうしたいか
問題が起こった時に私たちの気持ちが動揺するのは期待するものと現実とのギャップにあります。動揺して本来の自分を見失っているときには冷静な判断はできません。今起きている現実をきちんと受け止め、どうなることを自分は期待しているのか意識する必要があります。
ここで、期待それ自体をなくしてしまうと虚無になってしまい生きていく意欲を失う結果になりかねません。自分の期待する感情を打ち消してはいけないのです。実際に起きている現実から逃げることなく、期待する現実に近づけるにはどうすればよいか考えることが大切です。
支援者のサポート
問題が起こった場合に一人で考えるのではなく、信頼できる人に相談に乗ってもらうことも一つの解決法です。支援者の役割は問題解決の道筋を決めることではなく、相談者主体に問題解決のポイントを伝えることです。解決する主役は相談者だという基本を忘れないことも大切です。
認知行動療法のアプローチとして4つのステップがあります。
①こころと体の警報に気づく
②立ち止まって今起きている出来事に目を向ける
③とっさに浮かんだ考えから一歩離れ確認する
④期待する現実に向かって行動する
このような型を身につけておけば、問題に直面したとき本来の自分を見失わずに対処する力を引き出すことが可能になります。
参考
「マンガでわかる 認知行動療法」 大野 裕
大野裕先生の認知行動療法活用サイト「ここトレ」
「こころコンディショナー」 大野裕のファストレッスン
大野裕
日本の医学者・精神科医。慶應義塾大学保健管理センター教授、国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センター所長を経て、現在は顧問。一般社団法人認知行動療法研修開発センター理事長。専門は、臨床精神医学・認知療法。皇后雅子様の主治医として知られる。認知療法の日本における第一人者。
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