『わたしはオオカミ』の読書感想
イエローストーンのオオカミの話は知っていたけど、そこに繋がっていたのか。なるほど!
若い頃に落合信彦にハマった世代なもので、最初は狼という単語だけに反応していました。ワンバック様が色んなことに噛みつく話かと想像していたけど全く違っていた。
女性に勇気を与える本と聞いて、これから1人暮らしを始める娘に渡そうかと思い、まずは自分で読んでみた。絵本のようなオシャレな装丁で、内容もシンプルで読みやすい。1時間もかからずに読み終えることができました。
持ち前のリーダーシップで目標に向かって仲間を鼓舞しながら道を切り開く。代表チームの先輩や監督から学んだことなど、テンポの良いエピソード展開で、ワンバックさんが自分自身のこれまでの歩みと心境の変化を振り返りながら、引退後の次のステージに向かうモチベーションを再確認する。啓蒙ではなく、自分自身に言い聞かせるような語り口。その原動力のひとつに”怒り”というダークサイドがあるのが悲しい現実ではある。
女性差別をなくすために戦う、という(古い)スタイルのジェンダー論ではなく、それを乗り越えたネクストレベル。女性であることはあまり重要な要素ではない、ワンバックさん個人の自己実現に向けた決意表明のように受け止めた。先に大きな目標を決めてそれに向かって努力する、アスリートらしい生き方だと思った。
しかし、僕の中ではどこかモヤっとした霧も残っている。オオカミになる、群れのリーダーになる、というこれと同じ話を男性が書いていたら、(例えば本田選手とかが書いていたら、)たぶんありふれた自己啓発本でしかない内容だ。ありふれたは言い過ぎか。女性であるワンバックさんが書いたことに意味がある本。女性が感じている問題とは一体なんなのか。
僕の世代以降は、子どもの頃から男女平等の教育があり(今考えるとまだ女性らしさのような潜在意識は強く残っていたけれど)、社会的な慣習や意識などもここ数十年で大きく変わってきている。実際あからさまな女性差別を見ることは少ないし、自分も差別はしていないつもりだ。
それでも完全にないとは言い切れない事が問題で、ボーっと生きている男性が気がつかない所にまだ様々な障壁がある。それはわかるし、僕ももっと理解を深めなくてはならない。差別している側だと言われるのは、もちろん本意ではない。
ただ敢えて言うと、いまも残っている女性にとっての障壁というのは、男性にとっても障壁であるケースが多いのではないかとも思う。男性だってリーダーは孤独だ。女性を含む関係者全員に認めてもらう努力をしなくてはならない。何故自分の給料が同じ仕事をする人より低いのか、そんな悩みもどこにでもある。本当に女性特有の問題なのか。都合良くそれを言い訳にしているだけではないのか。男性だったら当たり前のように飲み込んでいる話ではないのか。そう考えてしまうのは、自分が男性だからなのだろうか、、
こんなこと言ってると、全然わかってないと叱られそうだ。だけどそんな事を考えさせられた。なぜならワンバックさんはそんな言い訳を全くしていないから。
1993年のJリーグの誕生は、川淵チェアマンの強力なリーダーシップで、プロリーグは時期尚早という当時の世論や様々な抵抗をはね返すことで実現した。女性のためのWEリーグ発足は、発足自体に異議を唱える人はいない。ポリティカルコレクトネス、言ったら差別になりかねないから。
でもこれからが大変だと思う。ビジネスとして軌道に乗せる方法は、少なくとも僕には全く想像もできない。ワンバックさんのような女性リーダーが登場して解決してくれることを期待したい。田嶋さんに作ってもらった環境、それじゃ駄目でしょ女性たち。(←謎の上から目線)
話が違う方向に行ってしまった。この本は女性向けであると同時に、男性であっても将来なにかを成し遂げたいと思う人は読むべきですね。何かやりたい事がある時、障壁があると感じた時、それを環境のせいにすることなく、自分がリーダーとなり、仲間を集めて乗り越える。
或いはオオカミの群れに入る。すべてを支配する必要はなく、オオカミ達が環境の一部に変化を与えれば、それをきっかけに全体が動く。
そして、この本をきっかけに女性リーダーがもっと増えることを願います。
うちのノンビリ娘はこの本を読んでくれるかな。
あとね、会社で優秀な女性に管理職になるように求めても、断られることが多いんですよ。
なんで??これは愚痴です。