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『唄う六人の女』の感想

U-NEXTで『唄う六人の女』を見たので感想を書きます。ネタバレ気にしていません。

どんな作品?

 U-NEXTのジャンルだとサスペンスになっていますが、ファンタジー映画ですね。
 亡き父が暮らしていた山中の家を売却するために帰省したカメラマンの主人公(竹野内豊)が、不動産ブローカーの男(山田孝之)と共に、六人の女が暮らしている、山の不思議な屋敷に囚われているうちに、主人公の父の遺志と不動産ブローカーの狙いが徐々に明らかになっていく、という物語です。

最初の感想

 一番気になったのは、役割と性別の設定でした。山に棲まう者が女性だけで、山と女性を侵略して蹂躙して殺戮するのは男性だけ。反対に護ろうとするのも男性。どちらにしても女性は男性の言うなりになるしかなく、できるのは細やかな抵抗だけ、という世界観。
 個人的にジェンダーレス思想とかそういうのは作品鑑賞に持ち込みませんし、あえて性差の暗喩としてこのような設定にしたのかも知れませんが、ただ観る分には違和感しかなくて、「まあまあ気持ち悪いなこの世界観」というのが一番強い印象です。

主人公がアレ

 物語の流れ上、仕方なかったのかも知れませんが、主人公があまりに独善的だったように思います。冒頭から恋人の言葉を遮って会話を締めたり、ブローカーに駅まで送らせる車中でも突然、宿泊すると言い出したり、引き止める恋人の言葉に耳を貸さずに山に戻ったりと、とにかく自分本位を通します。
 幼い頃より山に魅入られていたとか、写真家という芸術方面の感性だからとか、作品の尺の問題とかの言い訳も立ちますが、演じる竹野内豊の当時51歳という年齢に鑑みると、意思疎通の取れなさはおよそ未成熟であり、高名な写真家でなければ顧客もつかないでしょう。おそらくは恋人のマネジメント能力の高さによって商業写真家として稼げていた、と推察すべきでしょうね。
 このように、彼は主人公でありながら魅力が弱く、守り人に選ばれたのも人格や能力に依るものではなく遺伝的要素が強いだけなので、要するに感情移入しづらいのです。

全体的に

 大した価格でないとは言え、有料配信と考えると見合わないように思います。見放題になって、他に何もなければ観るくらいの作品でした。
 主人公は魅力に欠け、ブローカーは役割を全うした一方で深掘りが足りずにやはり感情移入できず、唄うどころか喋りもしない女たちにも同様で、気持ちの置きどころがわかりませんでした。
 物語としても序盤でタネが割れているのにその後の展開は意外性に乏しく、決められた尺にそれっぽいファンタジーを詰め込んで、決められたキャストを当て込んで作りました、みたいな作りに感じてなりません。
 監督・脚本が『オー!マイキー』の石橋義正とクレジットされていたので、強い不条理を孕んだサスペンスを期待していただけに、落胆が強めでした。
 こちらが勝手に落胆しただけなので、もし興味があれば観ていただいて、感想をコメントしてもらえると嬉しいです。ではまた(了)

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