心霊マスターテープ EYE の感想など

　アマプラで連続ドラマ「心霊マスターテープ -EYE-」を観たので、ネタバレ交えつつ感想を記していきます。

どんな作品？

　名古屋テレビ（メ～テレ）系列のCS局、"エンタメ～テレ"が放送している、オリジナルのホラードラマシリーズのスピンオフ的な位置づけになるそうです。（俺は、いずれもアマプラで鑑賞しています）
　シリーズを通して、心霊系の映像を制作しているチームに、突如舞い込んだ経緯不明の不気味な動画を軸として、その正体を探るうちにどんどん怪異が発生して…という心霊モキュメンタリーの形式です。
　出演者が、実際の心霊系映像制作の界隈で有名な人達なので、虚実が混じり合ってとても楽しめる作品だと思います。その中でも、本作は問題作「心霊ｘカルトｘアウトロー（2018）」でおなじみの、 #谷口猛 さんが監督・脚本・出演を務めています。過去の心霊マスターテープシリーズにも出演しているので、もはやレギュラーですね。

心霊マスターテープ 〜EYE〜 - Wikipedia

　お話としては、学生時代から映像制作活動をしている二人の男性の元に不気味な動画が舞い込んで、それが「自分たちの過去に関わっているのでは？」と正体を探っていくことで、呪いの核心に近づくにつれて"映像製作者の第三者性"について問いかけていくような物語となっています。
　鑑賞後に、谷口監督のツイートを読むことで、作品の真意を補足できますので、もしご興味あればご覧あれ。

監督・演出という加害性を孕む行為において、そこに優しさと覚悟はあるのか　

『心霊マスターテープ -EYE-』 pic.twitter.com/j4WoKGfevo

— 谷口 猛 - Takeru Taniguchi (@Takeru_taniguch) June 5, 2022

ざっくりとした感想

　1話を観た時に、「オープニングのテイストからしてこれまでの2作と違いすぎる。これは路線変え過ぎでは…？」と思ったのが正直なところです。いかにも谷口監督の「心霊xカルトxアウトロー」を連続ドラマでやり直してるような気がしたからです。しかし、話が進んでいくにつれ、「これはこれで心霊マスターテープなんだ！」と得心していきます。これは、監督の手腕なんでしょうね。根本のところで"心霊マスターテープ"のフォーマットを守りつつ、自分の色を存分に出すとこうなるのかな、という印象です。
　OPはスタイリッシュでありながらも忍び寄るような怖さがあり、呪いの動画のエフェクトの不気味さも相まって、毎話ちゃんと怖いです。ストーリーはテンポ良く進んでいくので、倍速視聴なしで大丈夫です。最終話のEDは特に不気味さが大きくお勧めです。最高。
　全話観終えたあとは、また見返したいな、と思うくらい好きになっているので、苦手な映像が流れるかも知れませんが、最後まで観続けて欲しいな、と思います。

呪いの正体は少し残念

　どうしようもない部分なのかも知れませんが、呪いの正体が"リングの貞子"みたいな存在になっているのが、何とも言えない感じはありました。

• 異能の家系

• 恨みを残して死んだ

• 動画に呪いを込めた

• 動画が届くと一週間で死ぬ

いや、貞子！

　とは言え、敢えて連続ドラマ向けにベタな設定にしたのかも知れません。分かりやすいしネタにもなるし、何よりそこの重要度そんなに高くないですしね。あくまでも、心霊ホラーでありながら、映像制作者の云々がメインテーマになってくるので、呪いの正体の独自性を追うより、定番設定が違和感なく物語に溶け込んでくれることを狙ったのかも。

　ただ、呪いの動画の配信方法については、タイトル回収でもあるし、現代的でもあって、だいぶ良かったと思います。ところで、あの配信部屋の様子、なかなかにマッドな感じなんですが、あの人が亡くなったのはいつ頃なんでしょうね…。目的を遂げてすぐ、とかだったら切ないですね。

人間の本性とは

　映像製作者が感じる全能感とか他者感のようなものって、要は免罪符だと思うんですよね。自分たちは映像を収めただけで、その中で起きている事象に関して何ら責任を追わなくて良いのだ、という考え方の是非は、現実でも色んなところで議論されています。
　今や、素人でさえ、常にスマホで動画を録るような時代になりました。何か事件が起こるたびに、それを録画している一般市民からの映像提供があって、「何でそのタイミングでカメラ回してるの？」と思うこともしばしばです。
　この作品の中でも、主人公と仲間の2人が呪いに巻き込まれた原因は、ここにあります。文字通り巻き込まれた形とは言え、度々その現場を目の当たりにしていながら、ただ撮影しているだけだった2人も、被害者から見れば加害者同然だったからです。
　それを踏まえた上で、呪いから逃れる方法がアレで正しかったとは、とても思えません。生き延びたい一心でやったこととは言え、結局は呪いを踏み潰そうとしただけで、あの行動に後悔や謝罪の気持ちは微塵も感じられませんでした。あれが彼らの本性であり、カメラ云々も言い訳だったのではないか、と思います。

続編が楽しみ

　心霊ドキュメンタリーの元祖を追ううちに、どんどん恐怖が募っていく物語でありながら、アシスタント女性の成長物語でもあった"心霊マスターテープ"、心霊系の映像制作者と心霊系Youtuber、ニコ生を絡めたオールスター出演（あの"コワすぎ！"出演者まで！）の"心霊マスターテープ 念冩"ときて、谷口色に染まったダークな本作と、安定してそれぞれのシーズンで違う怖さを味あわせてくれる素晴らしいシリーズ作品だと思います。
　実は、配信が始まってすぐの本作以前の2シーズン分は3回観ていて、かなりお気に入りのシリーズになっているので、本作を観終えたばかりなのに、もう次のシーズンが楽しみになっています。次は誰が監督になって、どんな恐怖を見せてくれるのでしょうか。年内にリリースされると嬉しいなー！（了）

【追記】
ちょっとだけ追加考察したので、よろしければこちらもご覧ください。