『ミンナのウタ』の感想
U-NEXTで『ミンナのウタ』を観たので感想を書きます。ネタバレ気にしていません。
どんな作品?
『呪怨』の清水崇監督作品で、エグザイルを擁するLDHのタレント7名が実名で主演(?)しています。ジャンル的にはホラーですが、ホラー映画を装ったアイドル映画でした。
物語としては、30年前のカセットテープに籠められた少女のある”願い“が、その謎を探る7人のメンバーをひとりまたひとりと消していく、というお話です。
などと書くとまるでメンバーを主役のように思ってしまいますが、実態としてはマキタスポーツ演じる探偵が主役でした。彼と早見あかり演じるマネージャーが少女の正体に迫り、そして7人を取り戻します。
悪い方の感想
7人の中途半端な演技が上滑りしてしまい、かえって棒読みより気になります。彼らの演技パートで気持ちを保つのにやや苦労しましたね。ほとんど台詞のない脇役の方々が引き立つくらいなので、探偵役のマキタスポーツとの会話シーンでのギャップはすごいものでした。
しかも、メンバー全員の生還エンドはガッカリしかありません。不穏な終わり方ではあったものの、メンバーに再び害が及ぶこともないでしょうし、なんというかこう、ホラー的に好みの終わり方ではない、と強めに感じました。
さらに、所々でグループの曲を本格的に流してきます。歌詞テロップ付きのシーンまであり、ホラーを観たい気持ちをちょいちょい砕きにくるのが謎でした。出演と引き換えの条件だったものと想像がつきますが、それにしても雰囲気を台無しにしていますね。ホラー映画を装ったアイドル映画、と冒頭で評したのはこのためです。ホラー映画に予算つけるのもひと苦労なんでしょうね…。
最後に、冒頭のシーンは無理矢理すぎませんか、という話を。メンバーのひとりが突然、古い手紙置き場になっている倉庫に入ってくるなんて、まずありえないと思います。顔見知りのADが入っていったとはいえ、今どき局員の許可なしに知らない部屋に入るなんて、リアリティなさすぎませんかね。
良い方の感想
物語や仕掛けはごく在り来りなものでしたが、清水崇監督の見せ方はさすがでした。呪怨ハウスぽい作りの家とか“トシオ”に加えて、直接関わっていないはずの『呪怨 白い老女』を彷彿とさせる“母親ループ”やカセットテープをはじめとした、呪怨パロディな要素がふんだんに盛り込まれていて、ホラー好きとしては心のなかで手を叩いて喜ぶところがたくさんありました。
また、元凶となっている少女の“願い“の設定はひねりが利いていました。他者を呪うのではなく、「世界に願いを届けたい」というのは、現代的な発想でありながらとても怖く、今後このパターンも定着していくかもしれませんね。
終わりに
日本ホラー映画の定番と新しいものが融合した興味深い作品ですが、残念な印象が上回ってしまうため評価は低くなりますが、今後に期待できる一石として、ヒマがあれば観て頂きたい作品です。
清水崇監督作品としては2024年8月現在で『あのコはだぁれ?』が公開中で、割とハイペースで制作していますね。きっと本作の反省が活かされた内容になっている事を期待して、次回作のサブスク配信を待ちましょう。(了)
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