見出し画像

40代の転職は「理念への共感」

 この記事は、かつて私が所属していた「HRラボほくりく」のアドベントカレンダー( https://adventar.org/calendars/7976 )をきっかけに、久しぶりに書いた。

 他の方々の記事も、ぜひ読んでください。

それは長い旅のはじまりだった

 2022年末時点で、私は46歳。
 来年(2023年)1月1日から、4つめの職場を経験することになる。
 しかも私にとっては、初めての上向きの転職だ。
 その顛末と、転職において必要不可欠なものは何かを書いてみたい。

書類が通らない!

 今年(2022年)7月に転職したばかりの職場に早くも見切りをつけ、8月から転職活動を開始した。
当然というか、これまでになく苦戦した転職活動だった。
 年齢が高い。直近の在職期間が短い。キャリアの4分の3は公務員。外形的には、有利な条件はひとつもない。もっている資格は運転免許と行政書士登録資格(しかも公務員経験によるもの)のみ。
 これでは苦戦するのも当たり前である。

 今回の就職活動の基軸は
「石川県金沢市から通勤でき、将来的に引っ越し転勤がないこと」
「ボーナスを除いた年収を今以上に上げること」
「職種は、人事、総務、人材コーディネーター、人事コンサルタント」
とした。

 毎日12時から夕方にかけて、応募した書類の結果がメールで次々に届く。

 まあ、毎日12時になるとスマホが何回も音を鳴らして、5社10社と落選メールが来るのはかえって壮観である。
 ダブりもあったとは思うが、おそらく100社以上、書類で落ちた。
 転職サイトやネットエージェントで書類を通過し、面接にこぎ着けたのは、わずか2か所
 そして、どちらも複数の応募者があり、負けて面接で落ちた。

うわっ…私の希望…贅沢すぎ?

 転職サイトや全国のエージェントだけでなく、地域密着の転職エージェントに手当たり次第登録した。すると、担当者は口を揃えたように言う。
「今の給料より高く取れるところなんて、ないですよ。それでもいいですか」

 なるほど、金沢という街は、あるいは石川という県は、40代の転職でコーポレート部門・バックオフィス希望では、あるいは近接領域でも未経験では、年収400万円以上もらうことは「だいそれた所業」であるらしい。
 別のあるエージェントからは「たとえば500万円の条件を出すとして、それに相応しいものを持っていて、それを差し出すことができますか」とまで厳しいことを言われた。

 なんで46歳の、一応は人事や心理のプロが転職するにあたって、500万円程度の求人でそこまで言われなければならないのか。
 あるエージェントの担当者が言っていたとおり、「人事や総務など、『誰にでもできる仕事』だから、営業からでも現場からでも後任を連れてくればいい、と、(北陸の)ほとんどの企業は思っている」というのは、どうやら正しかったらしい。

だったらフルリモートの仕事を探そうじゃないの

 ここで、転職戦略を練り直した。
 全国のフルリモート勤務可能な企業を視野に入れよう、と。
今の職場も転職したいが、副業で業務委託で働くことも視野に入れて。

 ぱっと検索してみて待遇がよいこともあったし、エージェントからも、石川県にこだわっているうちよりも良い話が、どんどん流れてくるようになった。
 主にベンチャーの人事担当者や経営者と直接つながることができる「Wantedly」「LinkedIn」を使い始めたのもこの頃だ。

 あいかわらず書類ではねられ続け、300社以上から落とされつつも、10以上の企業から面接してもらえた。
 これは精神衛生上非常に助かった。もちろん多くは落とされるのだが、面接に進める確率は段違いに高かっただけでも、明るい見通しがようやく持てるようになった。

 その中の数社(いずれもWantedlyで募集していたベンチャー)から無事に内定をつかみ取り、そのうちの1社と雇用契約締結の運びとなった。地位も給与も、役員かそれに近い待遇をいただくことができる予定だ。
 その会社は、「人事なら誰でもいい、給料も安くていい」とは思っていない会社で、相応の待遇をし、かつ裁量権もくれる、私にとっては魅力的な会社だったということだ。

世代別・転職に必要なものって、なんだろう

 転職活動を振り返ってみるにつけて、あらためて転職するにあたって求められている要素はなんだろう、と一般論的に考えた。

 20代であれば、経験やスキルはなくとも、ルール遵守や誠実な態度、チームワーク重視などの職業人として最低限のことがしっかりしていれば、年齢が若い分、のびしろを見込まれて転職に成功する可能性はかなり高い。加えてスキルなり資格なりがあれば、なおさら転職活動は容易になる。
 転職サイトでは、どうみても第二新卒のみに向けた求人をたくさん見た。給与や待遇アップの上向き転職も、大きく期待できる。
 転職は早いうちにね、と言われるのも、難度が低いからだろう。

 30代はどうだろうか。社会人としては相応の経験をしているはずである。「スキル」と「経験」の豊富さ次第で採ってもらえる世代といえる。
 ただし給与は、自分ができる仕事を選んだ結果、多くの場合で横ばいか、下がることもあり得るようになる。
 上向き転職を求めるなら、未経験職種への好奇心、他業種も視野に入れる、できる仕事よりもやりたい仕事を、など、リスクを取らなくてはいけなくなる最初の世代と言える。

 私は40代になってから3度の転職を経験することになったが、ここまでくると、若い人には当然負ける。若い人には将来性ものびしろもあると考えられていて(実際はそうとも限らないが)、かつ給与は安くて済むから、給与も高くなる40代をわざわざ雇う理由はない。
 では40代の転職に何が必要かといえば、身も蓋もないことを言えば、給与や条件を妥協すること。給与が下がるとか、未経験分野に行きますというのであれば、転職自体はできるだろう。今いる職場から一日でも早く逃げ出したいなら、やむを得ない選択肢だ。

そうでなくて、上向き転職を目指すのであれば、それに必要なのはおそらく、知識と経験を高レベルで昇華させたキャリア、つまり「専門性」と、「企業理念への強い共感」ではないだろうか、と思う。

 ひとかどの体系化され確立された専門性を持ち、かつ、それぞれに企業にとってオンリーワンである企業理念に真心から従って働くことができる柔軟性を備えている。40代という転職市場で厳しい世代では、とりわけこれらが求められているように思う。上向き転職をしようと思えば、なおさらだ。

 ただ、「あなたの色に染まります」ではダメだ。新卒じゃあるまいし。これでは自分を抑圧してしまい、それに耐えられるほどの体力も精神力も衰えた40代にはきつい。
「あなたの色はわかりました。私もその色は大好きで共感します。ただ、その上で、自分の色はどこまで許されますか」というくらいの大胆さと、しっかり真心を通じ合わせた上での冷静な判断とがないと、よい転職にはつながらないように思う。

 さて、雇う側の立場でしか考えたことはないが、50代以上の転職も考えてみる。
 50代の上向き転職を成功させるのに必要なのは、知識や経験よりも何よりも「人脈」であると思う。それも、金になる人脈である。人脈は、誰もが同じものを持てるわけではない、自分の固有の財産である。
 だから当然30代や40代でも、太い人脈を持っていれば大きな武器になる。私が転職に大苦戦したのは、年齢だけでなく、人脈が細かったことも理由であっただろう。

「私を雇ったら、今の会社から顧客をたくさん持ってきてみせますよ」
「私を雇えば、私の知人の優秀な人材を御社に連れてきます」
「私を雇うと、融資してもらうときに信頼性が上がりますよ」
「御社が抱える課題は、私の知り合いに解決できる人がいますよ」
という「人的財産」が、50代以上には求められているように思う。というか、私ならそんな人を採る。
 人脈を持っていなければ、40代と同じく、妥協するしかない。

 私の転職に話を戻すと、結局のところ「企業理念への共感」「事業内容への強い興味」を示すことができ、かつ自分の持っているものを過不足なく伝えることができた会社に、内定をもらうことができたのだと思う。
あとは、結局は、会社なり経営者なりとの縁を感じられるかどうか、ということになるのだろう。

結局、何百社落ちても、1社と良縁があればいい

 私は就職氷河期世代である。
 何十社何百社と選考を落ちる大学の同級生を励ましつつ、私は倍率20倍~数百倍の公務員試験を戦い、なんとか突破した。
 そして私も含めて皆、妥協はしたとしても、結局はそれぞれの思うところである「収まるところに収まっていった」ように思う。ブラック企業が多かった頃にもかかわらず、私の周りの人のほとんどが、良い縁が結べていたのだ。

 なぜだろうかと考えてみると…
 焦ったり慌てたりして、貧すれば窮すにならないよう、たとえ内定をもらっても、自分とは合わないと思ったところには入社しないこと。
 ブラックではないかと思ったところは避けること(ただし、ブラックにもいろいろ種類があるから、自分に合うのであればそんな企業を選択するのはいい)。
 何より、自分がふと持った違和感を信じること。
 みんな、そうやって新卒の就職を乗り切り、中にはスキルアップ・キャリアアップのための転職を続けている同級生も、とくにIT領域でたくさんいる。

 ライフスタイルを含めた長期的な視点で、「自分にとっての」良い会社とは何であるかを見抜ける目をもつこと。それは、長い長い転職活動の中で、自分で涵養していくのが必要であること。転職にかけた時間が短すぎると、結局不満足につながるのではないだろうか?
 自分と合う会社(世間で言われる良い会社ではなく)と良い縁を結び、就職なり転職なりを成功させる、至高の指標。それこそが、40代の転職で必須であり、他の世代でも大切な「理念への共感」ではないか、と思う。

つらつらとした駄文でしかないかもしれないが、誰かの役に立つことを願って。

いいなと思ったら応援しよう!