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トワイライト

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オリジナル小説「トワイライト」です
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記事一覧

【小説】トワイライト epilogue

「ねぇ知ってる?
この橋の欄干は昔、男と女の幽霊が現れるという噂があって。
だが幽霊は何をするわけでもなくて。
男の幽霊は煙草を吸うとか、2人で缶コーヒーを自販機で買う姿を見たというものもいるらしくて…」
「はぁ?なんだその幽霊。人間と大して変わんねぇじゃん。」
「でもある日を境に幽霊が出なくなったらしいよ?」
「そりゃお前、成仏したんじゃね?あ、ってか喉渇いたからそこの自販機で缶コーヒー買ってい

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【小説】トワイライト Final Chapter.カナ

【小説】トワイライト Final Chapter.カナ

2月14日
16時59分

目を開けると、そこには
ミツキ、ユカ、そしてワタルさんがいた。
2月のこの時間はもう暗闇だ。
「ねぇ!一体誰なの!?こんなメッセよこしたの?」
ミツキが苛立ってスマホの画面をこちらに向けた。

ー ミツキ、ユカ、ワタルさん。
あなた達にもう一度会いたい。〇〇ビルの近くの川が流れる遊歩道で会いましょう、ミツキなら場所…わかるよね?

森下カナ ー

「同じような文面で俺に

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【小説】トワイライトFinal chapter.トワ

【小説】トワイライトFinal chapter.トワ

2月14日 16時30分
中野から野方に続く細道の途中、川が流れている。
「今更なんだけどこの川、妙正寺川っていうんだな。」
その橋の欄干にトワとカナがいる。
だが、これが最後の日だ。

「ここからは別行動だ。お互いの相手と対峙する。」
「分かってる。そして終わったら、成仏か残留かを選ぶ。
残量の場合は永遠にこの橋に留まる事になる。」
トワとカナは流れる川のせせらぎを見つめていた。

「だけど一つ

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【小説】トワイライトChapter.8

【小説】トワイライトChapter.8

再び、トワとカナはアパートで目が覚める。
昨日までと同じ様に、カナはベッド、トワはソファで。
部屋の中心にぶら下がっている豆電球は今にも切れそうだ。
「…あと1日か。」
「そうね。」

目覚めの一杯と託けて、トワはアパート下の自販機で缶コーヒーを2つ買う。
ガゴン!と勢いよく取り出し口にコーヒーが落ちてくる。
すぐさまトワが拾うと、
「ほら!俺の言った通りだろ!!」
すぐ横に小学生達が群がっている

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【小説】トワイライトChapter.7

【小説】トワイライトChapter.7

「荻窪さんと笹塚さんに復讐するの?」
私はトワに聞く。
「……。」
トワの返答は無い。
仮にそれをするとして、私に止める権利はあるのだろうか?
すると、トワが私にタバコを1本差し出した。
「1本、付き合えよ。」

気がつくと昼13時を回っていた。タバコを吸い終わるトワが切り出した。
「次は…カナの番だな。」
そうだった、私の生前所縁のある場所……。

私は目を閉じて念じた。

目を開けると、そこは

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【小説】トワイライト Chapter.3

「あれ?」
女は声を発する。そこは昼過ぎで昨日いた橋の上だ。
目の前には男がいる。
「ん?」
「あの、さっきまで私達公園にいませんでした?」
「ああ、いたよ。」
「それから…どうなって…あれ?」

女が困惑する中、男はタバコを咥え火をつける。
「いつもこうだよ。」
「え?」
「昼の15時位から夜の20時位までは俺も覚えているんだ。だがそれ以外の時間帯は記憶が無い。」
「毎日こんな感じですか?」

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【小説】トワイライト Chapter.2

【小説】トワイライト Chapter.2

「真っ暗ですねー。」
「ああ、この季節は夕方5時過ぎたら日が沈んでるからな。」

 男と女は橋を離れ、近くの公園に場所を移し適当なベンチに座る。
そして男はポケットに忍ばせていたクシャクシャのタバコを咥え火をつけた。
「あの、この公園は禁煙みたいですよ?」
女が公園に立てられている案内板を指した。
「ああ、生きていた頃はちゃんと喫煙所見つけて吸っていたよ。」
そういうと男は紫煙を吐き出す。

女は

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【小説】トワイライト Chapter.1

【小説】トワイライト Chapter.1

 男は今も橋の上にいる。
そこは中野駅から北上し、野方の方にある。

 男は自動販売機で缶コーヒーを買うが、温い。
軽く舌打ちをしてプルタブを立てた。カシュっと軽い音を立てて口にする。
 いつもの味だ。橋の中腹の手すりに背中から寄りかかるようにして、コーヒーを飲んだ。
 遠くから学生の声がする。もう下校時間なのか。
空はオレンジに染まり、夜を迎えようとしていた。
集団下校の高校生の男女4人が男の眼

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【小説】トワイライトChapter.6

【小説】トワイライトChapter.6

気がつくと、俺達はハザマの部屋にいた。
カナはベッドで寝ている。俺は昨日と同じように、ソファで目が覚めた。

俺は起き上がり、寝ているカナの肩を揺らす。
「おい、起きろ。」
「う…ん」
カナはゆっくりと起き上がる。

俺はアパートの下に自販機があったので、ホットコーヒーを2つ買い、アパートまで戻った。
ドアを開けると、カナは窓の外を見ていた。
「ホットコーヒー、飲むか?」
「うん。ついでにタバコも

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【小説】トワイライト Chapter.5

【小説】トワイライト Chapter.5

「起きなさい。」
何者かの声が聞こえる。
「起きなさい。」
私は少し張り上げた声に瞼を擦る。最初に見えたのは、天井だ。木造の天井、真ん中に豆電球が付いている。
「お嬢さんは起きたかい。だが彼氏の方はまだ寝ておる。」
ゆっくりと体を起こすと、髭を蓄えビシッと茶色のスーツを着た初老の男性がいた。
私は驚いて後ずさる。
「安心しなさい、私は君達の敵じゃあない。危害を加えるつもりなんてない。」

落ち着い

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【小説】トワイライト Chapter.4

【小説】トワイライト Chapter.4

「あ、メア」
「なんですか?トワ」

トワは頭を掻きむしる。

「『トワ』がすっごく馴染まないんだが!」
「まあ、私だって『メア』馴染まないですよ?でもお前呼ばわりよりマシです!
まぁ呼び名ですから。本当の名前が解ればそれで呼べば良いじゃないですか。」
「ちっ…」

トワは舌打ちをする。今は16:30頃だろうか。日が隠れかかっている。トワは相変わらず橋の中腹でタバコを吸い、その横で煙に咳き込むメア

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