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プラトン① イントロダクション

歴史上、最大の哲学者は誰か?

こう質問された時、真っ先に候補の1人に挙げるのがプラトンではないでしょうか?

それくらい、哲学の歴史におけるプラトンの影響力は突出しています。
 
イギリスの哲学者ホワイトヘッドが「西洋哲学の歴史はプラトンへの膨大な注釈にすぎない」という有名な言葉を遺しているほどです。
 
それだからこそ、「プラトンについてまったく知りません」というのはちょっとマズいわけです。
 
そこで……

プラトンについてなら「これくらい知っていれば、まぁいいかな」という最低限の知識を数回に分けてまとめておきたいと思います。


ソクラテスの弟子



 まずは基本情報から。
 
プラトンは古代ギリシャの都市国家アテナイなどで活躍した哲学者(紀元前427年ー紀元前347年)です。
 
プラトンは哲学者ソクラテスの弟子です。
 
ソクラテスもプラトンと同じくらい有名ですね。ソクラテスの弟子だったプラトンには、これまた有名なアリストテレスという弟子がいます。
 
ソクラテス → プラトン → アリストテレス
 
哲学史どころか、世界史でも習うビッグネーム3人が、師と弟子というかたちで同時代に続けて登場しているという事実には驚かされます。

ちなみに、アリストテレスはかの有名なアレクサンドロス大王の先生ですから、プラトンは大王にとって先生の先生ということになりますね。
 

実は、プラトンは自分の考えを直接に「こうだ!」と述べるのではなく、師ソクラテスを主人公とする「対話篇」を書くことで表現しています。

つまり「ソクラテスと他の人との対話」という設定で様々な議論を描き、そこに自分の思想を組み入れているわけです。

したがって、昔から研究者を悩ませてきた問題として、プラトンが書いたもののうち「どこまでが師ソクラテスの考えで、どこからがプラトン自身の考えなのか?」というものがあります。

プラトン以外の弟子たちもソクラテスについていろいろと書いているのですが、こちらにも同じ問題があります。
 
このことを専門的には「ソクラテス問題」と呼ぶようです。「どこまでがソクラテスの思想?」ということですね。

これはきっと永遠に解決不可能な問題でしょう。

それでもプラトンが若い頃に書いた「初期対話篇」と呼ばれるいくつかの作品は「ソクラテスの生前の教えをある程度は正確に伝えているだろう」という大体のコンセンサスはあるようです。
 

以下、プラトンの主要作品を時期別に並べてみます。

 
【初期対話篇】

『ソクラテスの弁明』『クリトン』『ラケス』『リュシス』『プロタゴラス』『ゴルギアス』など……
 
【中期対話篇】

『メノン』『国家』『パイドン』『パイドロス』『饗宴』など……
 
【後期対話篇】

『パルメニデス』『ティマイオス』『テアイテトス』『ピレボス』『ソピステス』『クリティアス』『法律』など……

 
初期の『ソクラテスの弁明』は、ソクラテスが「青年を惑わす罪」「国家の認める神々を認めない罪」で裁判にかけられた際、アテナイ市民に向かって演説した内容がベースになっています。

また『クリトン』は、脱獄するよう勧められたソクラテスがそれを断り、自らの信念に忠実に死んでいく覚悟を語ったものです。
 
初期対話篇では、多少の脚色はあるにせよソクラテスが実際に語ったことや行ったことをベースにしているとされています。

それに対して中期以降の対話篇は、引き続きソクラテスが主人公であることがほとんどですが(例外もあります)、プラトン独自の思想が色濃くなっていきます。
 
ちなみに有名な「アトランティス伝説」ってありますよね。

かつて大西洋に存在したアトランティスという大陸が海中に没した……というアレです。

実は現在遺っているあらゆる書物の中で最初にアトランティスに言及されているのがプラトンの『クリティアス』という後期対話篇です。

エジプトの神官に伝わっていた伝説が、神官 → ギリシャの賢人ソロン → クリティアスの祖父という経路で伝わり、それをクリティアスが友人のソクラテスたちに語るという設定になっています。

プラトン自身がエジプトを訪れていると考えられているので、おそらくプラトンはこのアトランティス伝説をエジプトで仕入れたのではないかと思われます。

世界最古の大学アカデメイア



思想家の伝記というのは派手な出来事も少なく、あまり面白くないことが多いものですが、ソクラテスやプラトンはなかなかスリリングな人生を歩んでいます。

師ソクラテスについては改めて書くとして、ここではプラトン本人の後半生を少しだけ紹介しておきます。
 
プラトンの後半生にとって重要なのは、シチリア島を三度訪問していることです。イタリア半島のブーツのつま先の部分にある大きな島ですね。

プラトンはこの島のシュラクサイという都市国家に招かれているのです。
 
そこの僭主(独裁者みたいな人)や有力政治家に何度も招かれて、政治顧問みたいなことをやったのですが、結果は散々でした。

僭主に疎まれて奴隷として売り飛ばされたり、兵隊に命を狙われたり……。プラトンは命からがら島を脱出しますが、シュラクサイはその後、内乱で荒れ果ててしまいます。

なお、シチリア訪問の合間にも、プラトンはアテナイで「アカデメイア学園」を創設して弟子たちの教育に当たります。
世界最古の大学とも言われるアカデメイアは、古代ギリシャ・ローマ時代の学問の中心地となり、なんと約900年間 (!) も存続しました。
 
後半生はシチリア問題でかなり翻弄された感のあるプラトンですが、それでも多くの対話篇を著し、それらの多くが西洋思想に大きなインパクトを与えたことを考えると、すごい精神力の持ち主だったのでしょう。
 
プラトン自身の伝記はこのくらいにして、「プラトン②」では、プラトン初期対話篇に記された師ソクラテスの思想を紹介します。


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