味覚

幼少時からオッサンになった今に至るまで、わりと何を食べても美味しい。
辛いものだけは苦手なのだけれど、それ以外は大抵の食べ物が美味しい。
幸せの馬鹿舌だと思っている。

そもそも育ててくれた祖母の躾で
食べ物に文句を付ける&残すということに、強盗殺人くらいの忌避感があるので
食事中に平気で不味いと口にする方を見ると卒倒しそうになる。
いや、ぼくも育ちは相当悪いから他人様のことに口出しする権利はないけれど、せめて店を出てから友人知人と苦笑しながら
「ちょっと失敗だったね」
という程度にしておくべきなのではないか。
そもそも外食で出てくるごはんに、そんなに気にするほど不味い物なんてあるかしら。
それが辛くて悪態を吐かなければ気が済まないというのなら、鋭敏な味覚ってむしろバッドスキルなのではないか。

生き延びることだけを考えるのなら、美味い不味いなど気にすることなく、ただただ食べて栄養に出来る個体の方が生存に有利でお得なのだろうけれど
「美味い」「不味い」などの評価で食べる物を選別出来るということは、食べ物に不自由していないということとイコールだから、群れを作り、食糧を保存する知恵を付けて久しいホモサピエンスの立場から考えたら、より多くの食糧を手にしている強い個体ということになるのかな。
食糧を無駄にしても構わない程の蓄えの証。
今ダラダラと書いていて思いついたけれど、あれは豊かさ=強さの無意識のアピールでもあるのか。

などと、あまり評価のよろしくない某カレーチェーン店で夕飯を食べながら考えていた。
ぼくは原始的な強さが染み込んでいるのか、普通に美味しかった。
巨大隕石が落ちてきた後にはきっと強いと思う。

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