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食事時間が生活にリズムをつける 【よりよい生活リズムのために 3】

 婦人之友社乳幼児グループ(詳細はページ下部)では、会員のみなさんが毎月送ってくださるお子さんの成長記録から、生活時間の統計をとりました。食事時間をみてみると、朝食を食べ始める時間は6 時半~ 7 時半が最も多く、昼食は11 時半~ 12 時半、おやつは15 時、夕食は19 時~ 19時半頃が多いことがわかりました。
 今回は、子どもにとってどうして4 回食が最適なのか、そして、4 回の食事時間から生活リズムを上手に整える方法をお伝えします。

各食事のタイミング

朝食

 乳幼児グループでは、会員の6 割ほどが共働き世帯で、育児休暇中の方を含めると7 割以上になります。思いのほか早起きしている子どもたちが多いのは、保育園に預けるため、というのが第一の理由だと思われます。
記録の中に「朝、保育園に送るので、さっさと食べてほしいのに、食べずにぐずぐず…」「おなかがすいていないのか、牛乳しか飲まない」などと書かれたものが目につきます。実は、食べないのには理由があります。
 少し難しい話になりますが、食事に含まれる糖質が消化によってブドウ糖になり、血液中で血糖になります(その濃度を血糖値といいます)。糖質は、体と脳を動かすエネルギーになりますが、脳は糖質の中でも血液中のブドウ糖しかエネルギーにできません。血糖値が下がると脳は働かないので、それを防ごうとして摂食中枢が食欲をわかせて、おなかがすいたと感じさせます。おなかがすくというのは、おなかの中の食べものがなくなったということだけではなく、血糖値が大きく影響しているのです。
 脳は睡眠中も絶えず働いているので、ブドウ糖は1 日中消費され続け、朝にはエネルギー不足になっています。そのため、朝食で糖質を補給しないと脳の働きは鈍り、眠気がとれない、集中力や運動能力が低下するなどの影響が出ます。
 それなのに、どうして食べられないのでしょう。それは、起きたては脳もまだ目覚めていなくて、摂食中枢が働いていないからです。起床後30 分ほど経つと体も脳も覚醒してきます。なるべく長く寝かせておきたいという親心も理解できますが、朝食の30 分前には起こすようにしましょう。着替えや顔を洗うなど、ちょっと体を動かしているうちに脳が刺激されて食欲がわいてきます。このタイミングで食事を出すと、スムーズに朝の時間が運びます。

昼食

 11 時頃から12 時に昼食をとる子どもが多いのは、保育園や幼稚園での時間割にそっているからでしょう。家庭にいる子どもたちの方が大人の予定や習いごと、児童館の遊びなどで、日によって時間がまちまちなことが記録から読みとれます。
 糖質は、脳に蓄えておけないので、朝食後4時間ほどで使いきってしまいます。すると、脳は体のエネルギーの消費を抑えるため、なるべく体を動かさないように指令を出します。結果、元気が出ない、思考力や集中力も低下して、元気に遊ぶこともできなくなります。
 朝7 ~ 7 時半頃に朝食をとった子どもの場合、11 時半近くには血糖値が下がっていますから、その頃に2 回目の食事の昼食をとるといいでしょう。

おやつ

 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」をみると、子どもの推定エネルギー必要量は、1 ~ 2 歳の男子で950kcal/ 日、女子で900kcal/ 日、3~ 5 歳男子で1300kcal/ 日、女子が1250kcal/日です。体重1kg あたりで考えると、大人の約2倍のエネルギー量が必要です。また、体をつくるのに必要なたんぱく質の推奨量は、大人の女性の50gに対し、1 ~ 2 歳で20g、3 ~ 5 歳児で25gなので、体は小さくても多くの量が必要です。
 しかし、子どもの胃の容量は1 歳児で370~ 460ml、5 歳児で700 ~ 830ml( 大人は3000ml)と小さく、消化機能もまだ十分ではありません。だからといって、少しずつだらだらと食べていれば、肥満や、歯の表面に酸が産生されて虫歯になってしまいます。
 そうならないよう、14 時半~ 15 時頃におやつ(3 回目の食事)をとりましょう。保育園でも、この頃がおやつです。おやつイコール甘いもの、ではなく軽い食事と考え、例えば芋類、フルーツ、お好み焼き、おにぎり、サンドイッチなどがよいと思います。乳幼児期は、ケーキやアイスなどの甘いものは、たまの楽しみと考えます。

夕食

 共働き世帯がふえ、帰宅したあとに夕食を整えると、食卓を囲むのは早くても19 時頃になりますね。大人はくたくたに疲れていても、子どもに何か食べさせなくてはなりません。食べたものを消化吸収してエネルギーに変える代謝ホルモンは、朝から分泌が始まり、夜には分泌が減っていきます。夕食後は活動量が昼間より少ないので、エネルギーの消費も少なくなります。おなかがいっぱいだと、就寝後も胃が働き続け、興奮状態になり寝つきが悪くなります。
 また、たんぱく質や脂質を多く含んだ肉や揚げものなどを消化するには、4 時間くらいかかります。就寝中は消化機能も低下しますから、夕食は朝食や昼食よりも量を少なめにして、消化のよいもの、脂質が控えめのもの、薄味のものにします。そして、寝る2 ~ 3 時間前くらいまでには夕食をすませるよう心がけましょう。
「夕食は消化がよい軽めのもので」と考えると、つくる気持ちが少し軽くなりませんか。揚げものやグラタンなど凝ったお料理は、休日の楽しみにとっておくのも一案です。

生活リズムを整える方法

 今までお話ししたように、子どもの消化にかかる時間は3 ~ 4 時間で、糖質を使いきるのも4時間です。これに従って1 日の食事のリズムを考えてみましょう。
 例えば、朝食を7 時に始めたいと思った場合、30 分前の6 時半に子どもを起こします。この時、第1回目の記事で若江先生が述べているように、カーテンを開けて朝の光を十分部屋に入れましょう。
 身支度を整え、7 時に朝食。そして午前中は思いきり遊んで11 時半~ 12 時頃に昼食です。お昼寝や午後の遊びをして、14 時半~ 15 時頃に軽食。そして消化のよい献立の夕食を19 時頃食べて、2 時間後には布団に入ります。
 このように子どもの消化能力にそって食事時間を決めると、しぜんと生活リズムが現れてきませんか。幼児期はなるべく規則正しい生活にすることが、子どもが健康に育つ鍵だと思います。

*次の記事では、何をどれだけ食べたらよいのかを具体的にお伝えします。

丸井浩美(管理栄養士)

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乳幼児グループのホームページ https://www.fujinnotomo.co.jp/nyuyouji/

関連リンク

*この記事は全4回シリーズの3回目です。1回目、2回目の記事はこちら↓ 


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