家庭用自家焙煎器に挑戦。空焼きの儀式を執り行う!
私はこれまでの人生で、トリセツ、取扱説明書をまともに読めたためしが一度もない。初めてのモノを作るときは時間がかかるし、毎回アタフタする。でも、やっぱり完成したときの高揚感は何にも代え難い!
難しそうだけど楽しそう! 答えの無い挑戦を楽しみたい! そんな知的好奇心で初めてのことに挑戦するメディア「 #てさぐり部 」。
今回はいよいよ組み立て。しかし、私ことライターFM中西の前に立ちはだかるのがトリセツ。果たして、無事に組み立てられるのか?
プロ向けコーヒー機器メーカーが作った家庭用自家焙煎器
開封の儀で感じる、鋳物のずっしり感
まずは外箱を開封! くるくるカンカンは、スタンドと焙煎缶詰を組み合わせた“缶詰焙煎器”というスタイルになっている。ちなみに、今回はコンロセットを選んだので、卓上コンロも付いてきた(カセットボンベは別売り)。
まずはスタンドの箱を開ける。するともう一つ内箱が入っていた。内箱のフタをちょっと開けてみると、バラバラになった部品が見える。いつも部品を見るだけで面食らう私にとって、開封の儀は緊張の瞬間でもある。内箱の上面に開いた二つの穴に指を入れて持ち上げると、ズッシリと重量感がある。
部品は六つ。意外と少ない
内箱と思っていたものは、実は一枚の段ボールだった。テーブルの上に開いてみると、バラバラの部品が整然かつ動かないよう、溝や穴にしっかりと固定されている。スタンドは鋳物(いもの)。どうりで重いはずだ。
気づいたのは、発泡スチロールやビニール袋が一切入っていないこと。家電製品を開封すると、それら大量のごみを処理するのに一苦労するが、それが全くない。
この点を、わざわざ大阪から駆けつけてくれた富士珈機の福島社長に聞いてみると、「野外での利用を想定し、環境にも配慮した包装を意識した。段ボールメーカーとも試行錯誤を重ねて作った」という。なるほど、梱包からしてかなりこだわっているようだ。
なお、入っていた部品は、スタンド、本体を回すためのクランクハンドル、缶底受、缶押さえバネ、ハネ、テーパーフタ。意外と数は少ない。
これなら不器用な自分でも組み立てられそうだ。ハネとテーパーフタは焙煎缶詰の内缶に取り付けて使うとトリセツには書いてある。
それにしても、こうして目の前に部品が並ぶと、幼いころにプラモデルを買った時のようなワクワク感に包まれる。これからの組み立てを想像するとがぜんテンションが上がってきた。
焙煎缶の中には生豆が入った紙箱が三つ
続いて焙煎缶詰だ。外箱を開けると、中には円筒状のスチール缶が。封印用の紙シールを剥がし、プルタブ式のフタを開けると、中には一回り小さいスチール缶が入っていた。さらにダイヤモンド型の三つの紙箱が納められていたが、中身はコーヒーの生豆である。焙煎前だが、柑橘系に似た香りがほんのりと漂う。これが生豆の匂いか……。そして焙煎前はほぼ白色だ。これを焙煎すると、コーヒー色ともいうべき独特の焦茶色になり、甘い香りを放つというわけか。
本体の組み立てと焙煎缶のセッティング
手さぐり感を楽しみながら、組み立て開始
早速組み立て開始! まずはスタンド部分からだ。ハンドルの固定ネジを反時計回りにゆるめ、ハンドルの穴とシャフト側のネジ部分を合わせて差し込み、ハンドル固定ネジを時計回りに締める──とトリセツの文章だけ読むと難解だが、なんてことはない、ネジを緩めて、ハメて、締めるだけ。案外手さぐりでやった方が早いかも?(トリセツ嫌いの言い訳)
焙煎缶を固定するための二つのバネは、大きな輪が内側に向くよう、缶底受についた缶支えの切り欠きの左右に小さな輪の方を通す。小さい輪も二つあり、一度に通そうとしたが入らず焦ったが、一つずつ順番に通すようにしたら問題なく取り付けられた。一つ一つ丁寧にやることが肝心なようだ。
バネを取り付けたら高さの調節だ。クランクハンドルのついた軸受とスタンドを固定するノブを緩め、とりあえず一番上まで上げて仮固定する。後でコンロを置いてから、微調整するためだ。
豆の容器が焙煎器に早変わり
続いて、内缶にハネとフタを取り付ける。ハネは可動式になっており、左右のハネを上下にずらして、L字型の方を下にして内缶の中に押し込みようにして装着する。このハネはコーヒー豆が均等に焙煎されるよう撹拌するためだ。
ハネを缶の底に着くまでしっかり差し込んだら、テーパーフタを取り付ける。フタの上部は丸く切り取られており、焙煎中の豆をのぞき見て確認できるようになっている。この内缶を外缶の中に入れたら、焙煎缶詰部分は完成だ。
理科の実験道具のようなフォルムがそそる
あとは焙煎缶をスタンドに装着するだけ。焙煎缶をスタンドの根元まで隙間がないよう差し込み、二本の缶押さえバネを缶のふちにひっかけ、外れないよう固定したら、くるくるカンカンの組み立ては全て完了!
シルバーを基調とした色合いで、理科の実験器具を思わせるシンプルなデザインが何ともそそる。
ドライバーなどの工具は一切使わないため、子供から大人まで誰でも簡単に組み立てることが可能。これは福島社長のこだわりだ。
最初こそ構造がシンプル過ぎて戸惑ったが、やり始めたら意外と簡単で、普段本棚の組み立てに丸二日費やすほど不器用な私でもノーストレスだった!
焙煎缶に宿りし力を目覚めさせる「空焼き」の儀式
焙煎前の大事な儀式
組み立てが完成したら早速焙煎開始……と言いたいところだが、その前にくるくるカンカンに宿りし力を最大限まで引き上げるために、「空焼き」という儀式を執り行う。というのも、焙煎缶の内缶にはさび止めの食品用ワックスが、外缶にはごく微量の錫(スズ)メッキが施されており、どちらも身体に害はないが、上手く焙煎するためには事前に空焼きすることでこれらを飛ばす必要があるのだ。
早く焙煎したいところだが、何事も手順は大事。初めて体験するくるくるカンカン覚醒の儀を前に緊張とワクワクが入り混じる。
コンロの真上に焙煎缶が位置するようスタンドをセット。五徳のギリギリまでくるよう高さを調節し、本体の足を少し広げて安定させたら、いざ点火!
火力は全開! 缶の全体がグレーに変わったら完成
火力は全開にし、ハンドルをくるくる回して、缶全体に熱を通していく。ハンドルはひっかかりが一切なく、非常に滑らかな回し心地で、長時間回しても全く疲れることがない。くるくるくるくる……。高尾の麓で無心にハンドルを回す。日頃の雑念から解き放たれ、瞑想中のような静かな時間が流れる……。
スタートから15分。煙が落ち着いてきたら空焼き完了の合図だ。
缶の全体がグレーに変わり、フチが金茶色になったところで火を止めた。空焼きにかかる時間は缶にしっかり熱が伝わっているかが肝になる。屋外で風が強い場合などは、風立てなどを利用して、缶が冷えてしまうことを防ぐと良い。
空焼きが終わった缶は、独特の色も相まって神々しささえ感じられる。
缶は薄い鉄でできているので、10分もすると熱が冷め、素手で触ることができた。ちなみに、一度空焼きをしておけばこの工程は不要。次回からすぐに焙煎することが可能だという。同じ缶で50回ほど焙煎することができるそうだ。途中で缶を壊してしまったら、新しい焙煎缶を買って、再び空焼きの儀式を執り行おう。
さて、組み立てから空焼きまで完了。
次回は焙煎缶詰の中身にクローズアップ! なお、富士珈機の公式ユーチューブチャンネルでは、今回の組み立てと空焼きを動画でも解説している。記事と合わせてぜひ参照してもらいたい。
(「くるくるカンカンの焙煎缶6種類、何が違うの?」に続く)
オフィシャル「くるくるカンカン」マニュアル動画
組み立て方
焙煎缶の空焼き(初使用時のみ)
クレジット
ライター:FM中西
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社)
カメラ:橋口健志(合同会社ピノグリ)
取材協力:Mt.TAKAO BASE CAMP
制作協力:富士珈機
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