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「短歌」、想像以上に流行っていた! 文学フリマ東京の熱気にあてられる
ここ数年、「短歌」を詠む人も、読む人も増えているのを、うっすらと感じていた。
大型書店の一角で、なんだか素敵な装丁の歌集がたくさん面陳されているな……。
そういえば、テレビの情報番組で短歌の特集やっていたな……。
SNSで、誰かの書いた短歌に、そこから受けた心情を歌で返す「返歌」のやりとりを見かけたこともあったな……。でも、短歌だよ。はるか昔、小中学生時代に国語の教材の端っこに載っていた、この感じだよ。
くれなゐの 二尺伸びたる 薔薇の芽の 針やはらかに 春雨のふる
本当に流行っているの? 誰が新たに詠んでいるの? 短歌。そんな疑問の答えを探して、短歌の同人誌もあるという展示即売会に行ってみた。
なんだ、この人出は! どうした? この行列は!
異変には浜松町駅でモノレールに乗り換えた時に気づいていた。明らかに空港から旅立つわけじゃない雰囲気の人が車内にいっぱい乗っている。
みんなと私が向かう先は、東京流通センターで開催される「文学フリマ東京38」。
文学フリマは、出店者が「自分が〈文学〉と信じるもの」を自らの手で販売するというコンセプトのもと、評論・研究書・小説・物語・詩・俳句・短歌・ノンフィクション・エッセイほか、多種多様な同人誌と一般書籍が並ぶ展示即売会だ。
ブース数が1800以上という規模感もさることながら、次回開催の「文学フリマ東京39」からは会場がより大きな東京ビッグサイトに移転することも決まっているそうで、とにかくもう大人気のイベントだ。
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……と、事前に調べてはきたものの、会場最寄りの流通センター駅で、ほぼ満員だったモノレールの乗客の8割が降りていくではないか。すげぇ。
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怒濤の見本誌コーナーと回りきれないブース数!
公式発表によると、文学フリマ東京38のブース数は2,096(その中には2023年12月~2024年2月に「てさぐり部」でエッセイを連載していた、ふくだりょうこさんのブースも)。会場は第一展示場と第二展示場に分かれ、俳句・短歌・川柳カテゴリに絞っても122ブースもあって、これはとても全部は見切れない。
というわけで、まずは見本誌コーナーへ。ふーっと一息、落ち着いて、表紙を眺め、立ち読みして、話を聞きたい歌人さんを探していこう! という作戦だ。
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うん、たしかに。短歌、流行っているよ!
勘と閃きでまた1冊、また1冊と手に取り、パラパラ。日頃、ビジネス書や実用書の10万字くらいのブックライティングを量産している自分からすると、歌集の余白が贅沢だ。振り返れば、長らく自分の言葉を連ねることってやっていない。
いくつかの歌人さんに目星をつけて、再び会場に戻ると、こんな声が聞こえてきた。
「列の最後尾はこちらです。『チャリティー百人一首』は売り切れ予定です」
発信源を見るとなかなかの行列があり、その先にあったのは「胎動LABEL 胎動短歌会」さんのブース。こちらの出す歌集「胎動短歌」は毎号、歌人のみならず小説家、詩人、ミュージシャン、ラッパーらが寄稿。売り切れ続出の人気歌集なのだとか。
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胎動短歌会の近くには話題の歌集を続々出版されている福岡の出版社「書肆侃侃房」さんのブースも。とにかく短歌ゾーン、来場者が途切れず、詠む人と読む人の近況報告の声がおり重なり、常にざわざわ。しかも、目の前で次々と本が売れていく。
考えて、綴って、つくって、売る。改めて、同人誌展示即売会、なんて魅力的な挑戦か。
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どんな人がどんなことを詠んでいる? 作り手に聞いてみた
お客さんが途切れたタイミングを見計らって、見本誌で惹かれたブースの歌人さんに声をかけていく。
まずは「鍋組」の平瀬ユウトさん。
「短歌をやり始めたのは2年くらい前で。大学が美術大学で、卒業制作の時に歌集を作って、それからコンスタントに詠んでいます。きっかけは言葉に興味があったのと、大学時代ちょうど短歌がブームになり、波に乗ってきたところで、自分でもやってみようかなと」
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平瀬さんの『好好台灣旅游』。台北、台中、台南を巡った台湾旅記であり、現地で詠んだ短歌を収めたフルカラーの1冊。台湾好き、旅行記好きとしては見逃せなかった!
もう二度と会わない人にもう二度と人に見せないものをむき出す
旅先のかつての自分が目に浮かぶ、臨場感だった。
続いて、今回の文学フリマに向けてユニットを組んだという「1R」の埃さん、瀬生ゆう子さんのお二人。
「短歌を始めたの、だいたい同じ時期ですよね」(瀬生さん)
「2022年の7月とか。X(旧Twitter)でおもしろい短歌を見かけて、やってみたいなと」(埃さん)
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全世界! 聞いて! あたしの好きなひと、あたしのことが好きなんだって!
いつの日かヘルパーさんにあなたとの無かった恋を千回話す
恋を題材にした連作で、それぞれの視点が重なったり、離れていったり、まったく別のところを見ていたり。人と組むと奥行きが広がるのだな、と知った。おもしろい。
会場の熱気にあてられた? 自分も短歌、詠んでみたくなったかも……
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谷川さんは歌人として10年以上活動を続け、短歌集『恋人不死身説』『深呼吸広場』(ともに書肆侃侃房刊)も出版。今日の文学フリマの活況も含めて「この盛り上がり、どう感じています?」とおふたりに聞いてみる。
「正直ブームの実感ないけど、今日この場に来て、短歌が広まってきているとは感じました」(谷川さん)
「SNSを見ていると、詠み手がどんどん増えてきている印象ですよね」(イトウマさん)
出店者と来場者の熱気がぶつかり合う会場を出て一服。手に入れたばかりの同人誌『伝線』を開く。
ひとり部屋でパンダのまねをしていたら愛される力のよみがえり
あれ? 短歌って五七五七七がルールじゃないの? 俳句と違って季語もいらないの? こんなに自由なの? だったら、自分にも詠めるんじゃない?
流行に後乗りしての、おっさんの手習い。すぐに始められそうな手軽な挑戦。次は誰か先生、探しに行こう。
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クレジット
文:佐口賢作
編集:川口有紀
撮影:コヤナギユウ
取材協力:一般社団法人文学フリマ事務局
校正:月鈴子
制作協力:富士珈機
ライター・佐口賢作 https://x.com/guchi10
フリーライター31年目。ここ10年はビジネス書、実用書などのブックライティングを中心に活動し、お手伝いした書籍は120冊以上。でも、もっと現場に出たい! と思い立ち、本企画に誘われるまま、久しぶりのイベント取材、そしてどうやら短歌を詠むチャレンジに雪崩れ込むよう。
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