オキナワの頃 其の五 〈島の美味しいもの〉
ぼくが竹富島にいた頃、食堂、レストランは幾つかあった。今はリゾート開発が進んだり、石垣島の空港が大きくなったりで観光客がさらに増えてカフェやレストランがもっと増えてるみたいだが。ぼくが勤めていた新田観光の隣にあるそばや「やらぼ」。ここには昼休憩によく通った。ソーキそば、八重山そば、野菜そば。どれも美味しいのだけれど、特に野菜そばにはまった。美味しくて、美味しくて、毎日のように食べた。大分県出身の同僚によるとこの野菜そばは九州で言うところのチャンポンににている味だとの事だった。他にもあさひレストラン、そばや たけのこ、しだめー館、たるりや。飽きないように順繰りにまわる。やらぼ以外は夜も営業していたので独り者のぼくは重宝した。島の常食であるそばには、くちゅ(本島ではコーレ―グース、島とうがらし)やぴーやし(島胡椒)を入れる。テキストの写真はぴーやしで家の周りの石垣になっていて、そば屋さんはこれを天日で乾燥させて粉々にする。ソーキそばや八重山そばは脂っこいので、クチュの辛みやピパーチのツンとくる感じがそばの旨さを増すのだ。他に島で採れるものといえば、5月くらいにもずくが採れる。竹富島はリーフに囲まれた島で、そのリーフにもずくが生えているのだ。スーパーで売ってる養殖もずくと違って、かなり太い。海のなかで(膝くらいの深さ)採っていると、お腹が空いてくるのでこれをそのまま食べる。塩が効いてて旨い。パッションフルーツも自然になっていた。水牛を繋ぎに行く時、野生のパッションフルーツを発見すると嬉しい。あとは、ヤシガニ。ロブスターだ。これが島をうろついている。かなりこってりした味で男3人くらいで食べても、余る。島では小さな商店はあったが、ほとんどのものは隣の石垣島へ買い出しに行く。竹富島から行けば、石垣島は大都会だ。どのスーパーも船積みを無料でしてくれる。フェリーが竹富についたら荷物を受けとるだけだ。買い物には不便をするので、島の食堂、島で採れるものや釣り人からまわってくるイカなどは有り難かった。
ぼくが竹富島に住んで3年目に突入しようとしていた。青年会は抜けて気ままに過ごす日が多くなっていた。その頃、三線を弾きに行っていた民宿に、あとを継ぐために次男が帰ってきた。(長男は自分の勤め先の社長)次男はHさん。そして、勤め先の後輩で北海道から来ていた民謡大賞までとっているTさん、そして、ぼくの三人で三線トリオを組んだ。ぼくとHさんが盛り上げ、Tさんがこってりした民謡で締める黄金トリオだった。民宿の夜は毎晩のように演奏付きの宴会がおこなわれるようになり、三線と島唄が島の夜に響き渡った。
ある日、民宿のお母さん、はっちゃんおばさんが、神司の仕事で宿泊者の夕飯を作れない日があった。Hさんから「あさひレストランに食いに行くぞ」と夕方連絡が入った。そこで食べたメンバーは三線トリオと長期滞在している民宿の女の子のお客さん。ぼくと結婚することになる人だった。
つづく