「深い学び」とは「つながり」をつくること。

「深い学び」は「血液型占い」のようなもの?

 みなさんは、血液型占い好きですか?好き嫌いはあるかもしれませんが、結構メジャーですよね(ちなみに私は星占い派です)。科学的な根拠がないにも関わらず、人気がなくならないのはなぜでしょうか?それは分かりやすいからだと私は考えます。
 人と関わるとき、どんな人か分からないと不安です。でも、「A型だから真面目かな」「B型だから自由な人かも」「O型だからおおらかな人だろう」「AB型だから変わってるのかな」…と、どんな人かを知る方法として使えたら、便利だし安心します。4種類のどれかに当てはめればいいから、分かりやすい。これは血液型だけに限りません。どんなものも、分類してグループ化されていると、分かりやすくなります。
 「深い学び」とは、まさに、このグループを作っていく過程なのだろうと思います。

社会・総合的な学習を例にすると…。

 例えば、社会の学習では3年生で「警察官」「消防士」について学びます。「悪い人をつかまえる」警察官、「火事を消す」消防士、という2つの仕事を詳しく知るだけでなく「安全を守る人」というグループで分類できるようになります。
 さらに5年生で「農家」「漁師」「工場で働く人」も学びます。そうすると、食材を作る人(第一次産業)、工場で物をつくる人(第二次産業)といった分類ができます。
 そして、6年の総合でキャリア教育を扱えば、全て「みんなのために働く人」という風にもくくれます。こう学んでいけば「『仕事』とは、形はちがえど、誰かのために働くものなのだ」という新たな価値に気付くことができるでしょう。
 「警察官」も「消防士」も「農家」も、子どもたちはそれぞれ生活経験の中で身に付けた知識(何となく知っていること)があります。それらの知識を増やす(詳しい仕事の内容など)だけでなく、つなげる(分類する)ことで新しい意味や価値が見えてきます。それが深い学びです。

 深い学びによって、知識がつながっていくことで、「仕事」に関する知識は構造化されていきます。そして、構造化されてできた枠組みは、下の図のように、今後、子どもたちが、新しい「仕事」について考えるときの助けになります。

算数の学習を例にすると…。

  こうした構造化された知識があるのと、無いのとでは勉強の分かりやすさが全く違います。例えば、算数でかけ算の知識を、バラバラに覚えようとしている子(下図の左)と、つなげて覚えようとしている子(下図の右)では、覚えなければいけない量が全く異なります。

 つなげて覚えようとしている子は、「1けたのかけ算」と同じ部分を重ねて(つなげて)、新しい知識に必要な部分だけを覚えます。はみ出た部分(新しい単元で覚えなければいけない部分)だけを覚えればいいので分かりやすいです。さらに、知識が構造化されているので、新しいかけ算に出会った時も、「これまでかけ算はこうしてきたから…」と考えることができるようになります。
 つまり、深い学びによって知識がつながり、構造化されると、「覚える量が少なくなり、分かりやすくなる」し、「新たな課題に対して、考えやすくなる」わけです。それは、どちらも主体的に学ぼうとする態度につながりますよね。
 おそらく、「算数が得意な子」というのは、この「構造を自力で作れる子」なのです。だから、算数が苦手な子のために教師ができることは、この「構造の作り方」を教えて行くことなのではないでしょうか。
 そのために、授業の初めに「既習事項とのちがい」を考えさせて課題をつくったり、授業の終わりに「今日の学びを既習事項と関連付けて」ふり返ったりすることは、効果的なのではないかと思っています。

 この記事は、奈須正裕先生(上智大学)、田村学先生(國學院大學)のお話や著書を参考に書きました。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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