見出し画像

夜よ

幼き頃、暗闇が怖かった
わずかな暗を見つけては
それを濃くして闇に変える力があった
闇の淵より
ヨからぬモノの顔に怯えていた
圧倒的に自己を意識し
わずかな音、匂い、気配に
内ならぬモノの出現を予期させる
闇は敵だった

私は暗がりを求めている
電光に眼をやられ
わずかな光さえもわずわらしい
暗に包まれ 安らぐ
さらなる暗を求めて
また一つ灯りを落とす
それでもこの街に完璧な暗を作ることは難しい
眼前に布をつけるのは違う
光を断つ狭い空間に入り込むのも違う
圧倒的に広い空間である
圧倒的に狭い空間である暗が欲しい
暗にそっと目隠しをして欲しいのだ
その安らぎを知ってしまった

真の暗は
敵を消し、味方を消し
己のみを浮き彫りにさせる
そうして私は己も消して
暗に呑まれたい
そうして誰かを眼をそっと
隠すのです

いいなと思ったら応援しよう!