あなたは気づいているのだろうか 気づかなくてよいのだが 小さな丸いテーブルに二人 僕が持つスマホに 顔を寄せ合い その距離は5cmほどだろうか 「このままでいて」と強く あなたのお腹が鳴る音や 呼吸の音や 匂いを感じながら 時々顔を見合わせて 僕の視界を君が占領している 綺麗な二重の大きな目 長いまつ毛 薄い産毛の眉 小さく丸まった鼻 小さな唇 ふっくらとした頬 小さな額に残る産毛 輪郭に纏われる後毛 柔らかく陽だまりのような声が 僕の鼓膜に届き脳内をこだましていく
いい人、やーめた とりあえず笑っておくの、やーめた 断りづらい飲み会に行くの、やーめた 好きでもない人に奢るの、やーめた 興味ないのに知り合いが出てるから舞台観に行くの、やーめた 頼み事を引き受けちゃうの、やーめた その場の空気を整えようとするの、やーめた こんなに不誠実でいいのかな、なんて悩むの やーめた。
幼き頃、暗闇が怖かった わずかな暗を見つけては それを濃くして闇に変える力があった 闇の淵より ヨからぬモノの顔に怯えていた 圧倒的に自己を意識し わずかな音、匂い、気配に 内ならぬモノの出現を予期させる 闇は敵だった 私は暗がりを求めている 電光に眼をやられ わずかな光さえもわずわらしい 暗に包まれ 安らぐ さらなる暗を求めて また一つ灯りを落とす それでもこの街に完璧な暗を作ることは難しい 眼前に布をつけるのは違う 光を断つ狭い空間に入り込むのも違う 圧倒的に広い空間で
本日も量産型男女たちが闊歩する。 ここにもそこにもあそこにも。 幸せ引っさげ闊歩する。 2020年が色を強めた。 みんなが同じ顔だ。 みんなが同じ顔だ! この人もあの人も彼も彼女も! あぁーこれがおじさんの言う、 「最近のアイドルはみんな同じ顔だな」 か。 顔面ゲシュタルト崩壊。 あっ! かつて恋をした人だ! あっ、違う人だ。 彼はこの人魂の中に8人はいるぞっ 彼女たちは5人… 大正浪漫の80歳が犬の散歩。 きっとあの人も3人はいる。 私もきっと