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#1501 「転移する学力」を育成するには?

山口大学教育学部附属山口小学校の研究実践をまとめた『転移する学力』という書籍を読んだ。

子どもはある特定の個別具体的な知識を習得しても、それを別の場面や文脈で活用(転移)させることは簡単にはできない。

知識には「領域固有性」「文脈依存性」があるからだ。

しかし、教科等特有の「見方・考え方」を内在化させることで、別の場面・文脈にも転移する学力を身に付けることができる。

それが可能であることをまとめた書籍が『転移する学力』である。

以下にこの書籍から学んだこと、転移する学力を見に付けるために教師がすべきことを整理していく。

転移する学力を身に付けるためには、「創出」「受容」「転移」という3つのステップを踏む必要がある。

1 創出

まずは、教師が教材研究の段階で、子どもたちに働かせたい「見方・考え方」を想定する必要がある。

ここがスタートだ。

そして、実際に子どもたちが「見方・考え方」を発揮できるように、資料や教材の提示方法を工夫するのである。

これにより、子どもたちは誘発される形で、「見方・考え方」を無自覚に発揮することができる。

この段階を「創出」と呼ぶ。

2 受容

次に、子どもたちが無自覚的・無意図的に働かせた「見方・考え方」に注目させる必要がある。

教師が意図的に「問い返し」をしたり、「板書の色分け」をしたり、「明示的な指導」をしたりして、「見方・考え方」いわば「概念的知識」を自覚させるのである。

また「振り返り」の段階でも、その「見方・考え方」を自覚的に記述できるようにする。

これにより、子どもたちは無自覚のままであった「見方・考え方」を自覚し、転移する準備を整えることができる。

この段階を「受容」と呼ぶ。

3 転移

最後に、これまで自覚・受容することができた「見方・考え方」「概念的知識」を活用・転移できるように、既習の場面・文脈と構造が似た問題を提示する。

一見すると同じように見えない問題同士であっても、本質的には構造が似ているため、一度受容した「見方・考え方」を転移させることができる。

このことに気づいた子どもは、その「見方・考え方」を転移させることができるのだ。

また、「転移できる」旨を教師が気づかせることも必要だろう。

これにより、子どもたちは「見方・考え方」「概念的知識」を別の問題解決場面にも転移させることができ、これを経験として積み上げていくことができる。

この段階を「転移」と呼ぶ。

この経験の積み上げが、「また次の学習でも活用・応用してみよう」という意欲・態度につながるのである。

そうして、転移がどんどん繰り返されるようになる。

自在に知識を転移できる学力となっていくのだ。


以上、転移する学力を身に付けるためのステップを整理した。

基礎・基本的な個別具体的知識は「個別最適な学び」を中心にして習得する。

しかし、「見方・考え方」を内在する「概念的知識」「抽象的知識」は、教師が意図的に組織する「協働的な学び」で学ぶことが重要だ。

ぜひとも、転移する学力を「協働的な学び」で育成していきたい。

では。

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