#1466 方程式のない「教育」を科学する
「教育」という営みには「方程式」が存在しない。
Aという教育を子どもたちに授けても、Bになる子どもやCになってしまう子ども、全く変わらない子どももいる。
それは子どもが「人間」であるからであり、生身の人間に絶対的に有効な教育は存在しないからである。
では、「教育」を科学することはできないのだろうか?
「絶対的に科学的に有効な教育」は存在しないだろう。
しかし、それに近いアプローチを考えることはできる。
そのような教育を考える上で、前提になってくるのが「構成主義」という考え方である。
「学び」というものは、個々の人間の内部で個性的に構成されるものである。
白紙に情報を印刷するように、トップダウンで知識を注入することはできないのである。
構成主義を前提にすると、どのようにすれば個人の中で「学び」が発生するのかが見えてくる。
以下に、「学び方」と「学ぶべき資質・能力」に分けてまとめていく。
1 学び方
まず、学び方のアプローチは2種類ある。
1つ目は、「演繹的アプローチ」である。
まずは「絶対的原理」「概念」「知識」をトップダウンで指導してもらったり、教科書等で自分で知ったりする。
そしてそれらを活用し、個別具体的な問題を解いたり、事例に当てはめたりする。
このようなアプローチにより、はじめに理解した「絶対的原理」「概念」「知識」の正当性を納得するのである。
2つ目は、「帰納的アプローチ」である。
まずは、個別具体的な事例をもとに学びを進めていく。
そしてそのうち、各事例に当てはまる「共通項」が見えてくる。
この共通項が「原理」「概念」「知識」だということに気づく。
このようなボトムアップの気づきを重視するアプローチにより、自分たちの手で「原理」「概念」「知識」を獲得していくのである。
このような2つのアプローチにより、人間は学んでいくのだ。
また、この2つのアプローチは互いを行ったり来たりすることも可能である。
このことは以下の記事を参考にしてもらいたい。
#1403 概念的理解と帰納的アプローチ|眼鏡先生 (note.com)
#1420 三次元カリキュラム|眼鏡先生 (note.com)
そして、上記のような学び方をする際に、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」が重要となる。
学びの出発点を「自己」にすることが重要だ。
そして、自己調整をしながら、学習を進める。
これが「主体的学び」である。
また、学びをする際は、他者と交流・対話・協働しながら学んでいく。
「社会構成主義」と言われるように、学びは他者とのコミュニケーションによって成立する。
これが「対話的な学び」である。
さらに、学びには他の場面にも転移できるような深さが必要だ。
個別具体的な知識だけではなく、概念的知識も理解する必要がある。
これを可能にする「教科等特有の見方・考え方」を重視し、学習内容が転移するような学びを進める。
これが「深い学び」である。
「演繹的アプローチ」と「帰納的アプローチ」のいずれの学び方にしても、「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」を重視することが求められるのだ。
2 学ぶべき資質・能力
次に考えるのは「学ぶべき資質・能力」である。
それは3つの要素に分けられる。
1つ目は「知識・技能」である。
それはさらに「個別具体的な知識」と「概念的知識」に分けられる。
学校では、個別具体的な知識をたくさん学ぶ。
しかしそれだけではなく、上記でも述べたように、他の場面にも応用・活用できるような「概念的知識」の習得も重要となるのだ。
これは「深い学び」にも関わってくる資質・能力である。
2つ目は「思考力・判断力・表現力」である。
習得した知識・技能を他の場面や生活に生かし、実際に問題解決をすることが重要となる。
いわば「活用力」である。
このような「問題解決力」「活用力」を身に付けることが求められる。
3つ目は「学びに向かう力・人間性・主体的に学ぶ態度」である。
「教師からやらされる学び」ではなく、自己発の主体的な学びを進める態度が必要となる。
学びが長期的になっても、最後まで粘り強く学習を進める態度を身に付ける。
そして、学んだことをよりよい方向に活用する態度も身に付けていく。
また、学びのあり方や内容を自己調整し、改善していく「メタ認知能力」も重要となる。
このような「人間性」「態度」を身に付けることができれば、枝葉である個別具体的な知識や概念的知識、活用力や問題解決力は後からいくらでも習得・獲得していくことができるのである。
このような「学ぶべき資質・能力」を見据えた学習を重視することが求められる。
以上、構成主義に則った「学び方」と「学ぶべき資質・能力」を整理した。
「主体的・対話的で深い学び」を土台とした「演繹的アプローチ」または「帰納的アプローチ」または「両アプローチの融合」による学習をデザインする。
そして、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「学びに向かう力・人間性・主体的に学ぶ態度」の育成を視野に入れた学習をデザインする。
これらを教師が実現することができれば、それは「科学的に有効な教育」と言えるであろう。
このような授業を構想・展開するのは至難の業である。
しかし、上記のことを念頭に置き、日々の教育活動にあたっていきたい。
では。
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