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太忠岳・天柱石へ。アニソンをかけないで、ちょっと心折れそうになる。

4月のGW前に、前々から気になっていた屋久島の南東エリア・ヤクスギランドの先にある太忠岳にある天柱石に行ってきた。

昨年の蛇ノ口滝ぶりの数時間かけての山登り。
休憩を入れて往復8時間程かかり、普段山歩きを頻繁にしていない人間なので今回も2日程は筋肉痛に。が、それでもまた何だか行きたくなる山と森歩き。の、日記的なレポを書いてみる。

ヤクスギランドへ車で向かう途中

屋久島での2回目のソロ登山。当日は朝5時半に起きたものの、あれやこれや準備して安房の早朝からやっているお弁当屋さん「かもがわ」で昼食用弁当を購入…としていたら、ヤクスギランドの入り口をスタートするのが8:45頃とそれなりの時間になっていた。

目指す天柱石は「ヤクスギランドの受付→天文の森→太忠岳ルート→天柱石」という流れになる。受付で太忠岳へ行くことを伝えると"ヤクスギランドはあくまで通り道である"という考えから、ヤクスギランドの入場料500円を払う必要がなくなる。

登山届の提出と説明を受けることになり「天柱石へは片道3時間程かかる」「天柱石に祀っている祠に行ったら、その後は元の道を戻ること。道を戻らずに進もうとして迷う人がいる。」とのこと。(天柱石に辿り着くと、時計の15時→12時→9時のように反時計回りに石の周りを周った先に祠があるのだけど、帰りは元来た道を戻りましょうという話。)

ヤクスギランドには何回か来たことがあっても、途中にある天文の森を越えたことがなかった。晴天の中、まずは天文の森エリアへと向かう。途中少し違う道へ入ってしまった時もあったけど、今回初めて使ったyamapアプリのおかげでルート変更できた。

「(あれ、やっぱ結構大変だな…。)」
天文の森に着く頃には結構なお疲れモードに。とほほ

ほぼ同時間帯で高速に移動しているトレイルランナーのお兄さんがいて、私の後からやって来たのにも関わらず彼はすでに帰路についていた。

「天柱石まで行きたいんですけど、まだ距離ありますかね??」と聞くと、

『そうですね〜…この後、縄をつたって登るところがあって、そこからが思ったより距離ありましたね。でもまぁ…まだ午前中だし、大丈夫だと思いますよ。』と話してくれた。

まだ距離あるんかいっっ。と思いつつ、マイペースに登り続けた。この辺りで自らを元気づけるためにアニソンが聴きたくなってくる。蛇ノ口の滝ではアニソンを聴いている間に迷子になってしまったわけで…音楽を聴かずに道に集中した方がいい。でも何だか、とっても聴きたくなってくる…!

普段アニソンばかり聴いているわけではないけど、アニソンは基本的に子ども向けだったりポジティブなので元気になれるのだ。(オタクの言い訳?)

ここで聴きたくなったのは鬼滅の刃・刀鍛冶編のテーマソング『絆ノ奇跡』。昨年の蛇ノ口の滝の頃はチェンソーマンop曲だった米津玄師「KICK BACK」を聴いていたので時の流れですな。しかしここでイヤホンを忘れたことに気づく。

うーん、スマホから直出し…でも蛇ノ口の滝に比べると登山客が多く、他の登山者と遭遇しかねない。遥々屋久島で登山している人が森の中でアニソンに遭遇する奇跡(?)は、流石になぁ…と思い、自粛することにした。

音楽なしで森の囀りに耳を傾けながら、と書くと少し爽やかなような気がするが、実際はひーこらしながら歩みを続けた。

ヤクスギランドのエリアから、天柱石がある太忠岳のルートへ入っていく。登り続けて約3時間半、巨石が登場したり、少しずつ景色が変わってくる。縄を伝って登る場所も数カ所出てくる。

すると、すれ違った登山客の男性が『天柱石はもうすぐそこだよ。』と教えてくれる。つ、ついに到着してきた…??

どーーーん。段々霧がかってくる中、そびえ立つ天柱石が登場した。見た瞬間感じたことは「でかっっっ、怖っっっ!!!」だった。

このiPhone写真からだとあまり伝わらないかもしれないけれど、間近に見ると本当に大きい。迫力と、力強い存在感がありすぎて畏怖の心がすっと湧いてくる。恐しいなというのが正直な感想だった。まるで毎瞬、目に見えない稲妻が天柱石の上に注がれ続けているような存在感だった。

天柱石に限らず屋久島の雄大な自然は、人間が感じる快適さを超えている。それが屋久島の貴重さであり、素晴らしさなのだと感じる。現代で人が赴く自然界とはある程度快適な範囲であることがほとんどなのだと、島に住み始めてから気づいた。

屋久島に来て自然が身近になったと共に、それらに対する畏れも近くなった。

屋久島で元々生まれ育った地元の方々は「山は恐ろしいところ」「むやみに行く場所ではない」と考えている場合も多いと聞く。その理由が、徐々にわかってきたように思う。

天柱石の周りに咲いていた小さな花

深淵すぎるほど大きな存在に対する「畏れ」。

屋久島や自然について声高に語れるほど長く住んでいるわけでも、体験してきているわけでもない。けれど、畏怖を感じる心が残っていてよかったと思う。そういった感性をすべて無くしてしまったら、命の道とでもいうべき何かを少しずつ外れていってしまう。そんな気がする。

かもがわの竹の葉弁当

標高の低いエリアを歩いていた時は晴れ渡っていたものの、天柱石付近は霧が上がってきていて、寒くなってきていた。奥にある祠を参拝し、もっと早朝に出発すればよかったんだろうなと思いながら、いそいそと笹の葉弁当を広げて昼食タイム。

晴れたった天柱石では記念写真を撮ったり、のんびりする人もいるらしいが、自分にとってはエネルギーが強すぎる程に感じる&霧がかり寒くなってきた場所に長々といる気にもならず、早めに切り上げて復路へと向かった。

天柱石手前にあるこの細道&看板の手前(ヤクスギランド側)の右手に展望エリアに向かう登り坂の小道がある。

天柱石に向かう道の途中には↑の看板がある。この道の手前(ヤクスギランド側)に少し小高いところへ登る細い道があり、その先が展望台のような場所になっていると通がかりの登山客の方が教えてくれたので行ってみた。

その細道へのわかりやすい目印や看板はないので、天柱石に着くすぐ手前に上記の看板を見つけたら、その手前のエリアを注意深く見る必要がある。細道があるとわかっていれば見つけられるけど、知らないと通りすぎてしまう小さな道なので行きたい人は注意。

展望エリアから

展望エリアへの細い道を少し登ると、天柱石が遠景に見える開けた場所に出た。ここでお弁当食べたらよかったやん…!そう思いながらも、霧がかった天柱石は荘厳かつ、やはりちょっと怖かった。

たまたま教えてくれた人がよかったものの(ありがたや)知らなかったら勿体なかっただろうなという景色のいい場所だったので、せっかく天柱石へ行ったならこの場所へも行くことをおすすめしたい。

後はひたすら下山。これも私の体力では結構きつかった。まだなの…?と思いながら、何度か心折れそうになりながら黙々と歩き続けた。

ここまでしんどく感じる人はどちらかというと少数派ではないかとは思うけど、他の人に話を聞くと天柱石ルートは景色の種類があまり変わらなくてずっと森が続くので、疲れを感じやすいのではという話もあった。

なんとか出口に辿り着き安堵する。前回の蛇の口ノ滝より2、3時間多い道程とはいえ、予想より体力を使った感覚だった。

後日談。下山してから同じカフェのスタッフ仲間に「天柱石に行くのに往復8時間くらいもかかっちゃったよー。体力ないよーとほほ。」といった話をすると「え、それって早い方じゃない?私は10時間くらいかけてゆっくり行ったけどね。」「よく1人で行ったね。あそこは景色があまり変わらないから大変なんじゃないかな。」と声をかけてもらった。

そっか。べつに山登りは競争じゃないもんね。日が落ちない穏やかな時間帯ならば、何時間かかったって何度休憩したっていい。お菓子食べながらいつまでもぼーっとしようが、周りに迷惑でなければ好きなだけアニソン聴いていたっていいだろう(?)

どことなーく、短いコースタイムと少ない休憩時間で行くのが何かスマートで格好いいかのように思ってたのかもしれないし、そもそも山歩きってやっぱりそれなりに体力使うんですよっていう。

ひとりで歩いていたのだし、周りを気にせずゆっくりと、何度だって休憩したっていいじゃないか。でも、日が明るい内には下山したいなと思いながら、必要以上に心を急かしていたのかも。

この辺りは時々やる心のクセ。好きなだけマイペースにのんびりしててもいい状況で、内心微妙に急かしているという。(天柱石ルートは初めてでよく分からなかったというのもある)

今度は日暮れには気をつけて、後は何度でも休憩しまくっていいのだと思いながら歩こっと。と、謎の決意をしつつ、次はどこへ行こうかな…黒味岳やモッチョム、宮之浦岳など奥岳エリア、花山歩道や龍神杉も気になるよなあと、

梅雨明けしてすっかり夏模様の屋久島で、まだ見ぬ未知なる森や山に思いを馳せている。(といいつつ、クーラーの効いた家にいがちなこの頃。体力つかない笑)

空からの夏の屋久島

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