駒大生と哲学してみる・ふつうって何?
第1回目は、富永京子『みんなの「わがまま」入門』左右社、2019年、を題材に「哲学講義」してみることになりました。
わがままの切り口から社会運動とは何ぞやに結び付けていく本で、マツモト研究室でも読まなきゃもったいない!ということに。
まずは第1章を読んでもらい、「ふつう」について考えてきたことを、ゼミ生のエピソードを交えて意見交換することになりました。以下意見の要約です。
「自分の中の概念や価値観があるから、人は誰かと比較すると何か違和感を覚えてしまうのではないだろうか。」
「小学生の時にソフトボールをやっていたから男子の中にいることが多くて、女子なのに何で男子と仲良いの?と言われたことがある。女子だから、男子だからという昔からの教育や風習から生まれた言葉なのではないか。」
「中学生時代に野球部で、すぐに新しいグローブを買ってもらえる人がいれば長期間同じグローブを使っている人もいて、金銭感覚の違いを感じた。しかし、両者ともそれがふつうの概念として身についているのではないか。」
「運動できる人にとって、できないひとはふつうではない。個人が持っているふつうの割合がどれだけあるかによって、ふつうかふつうではないかが決まるのではないか。環境によってふつうは変わる。」
「親が共働きで学童に通うことはふつうだと思っていたが、多くの人と関わることでふつうではないと気がついた。ふつうかふつうではないかは、人と接することで知ることができる。」
「引っ越した時、方言で笑われたことがある。ふつうというのは生活だけでなく、人の性質が関わってくるのではないか。」
「人は各々、ふつうの基準があるから、何をもってふつうなのかを答えることはできない。受けてきた教育は個性を伸ばすためのものではなくて、協調性を高めるためのものだった。ふつうの価値観を人とわかり合うのは難しい。」
「中学校までは自分のふつうをきょうだいに押し付けていたことがあった。高校に入って色々な世代の人と出会ったり本や映画に触れたからきょうだいと仲良くなれた。人について知ることの大切さに気が付き、人が思うふつうの基準に興味が湧いた。」
「友達と家族の話をした時にみんなのふつうと違うことに気がついた。ふつうの基準は人によって異なると知ってみんなのふつうに合わせるようになったけれど、自分のように周りに合わせている人もいるのかもしれないと考えた。何事もこれがふつうと決めることは難しい。」
「自分にとってふつうである方言は、みんなにとってふつうではなかった。服装が都会と地方では異なるから、なるべくみんなと似たような服装を着るように、ふつうでいるように心がけている。」
「幼い頃、きょうだいの影響でミニカーやプラレールで遊んでいた。しかし、友達から「女の子はふつうお人形で遊ぶよ」と言われ、初めて自分にとってのふつうが人のふつうとは異なることに気がついた。家庭環境によってふつうの基準が定まるから、人それぞれのふつうがあるのではないか。」
「小学生の時はみんな一緒がふつうだと思っていたから自然と合わせていた。大学生になってからは自分の意見を言う機会が増えて、それもまたふつうであると考えた。環境によって人は変わる。」
「幼い頃、人とは違うことがふつうと家庭で教えられてきて、それが自分の当たり前になった。人は自分と違うと思って生きてくることができた。教育によってまた別のふつうが形成される可能性もある。人の性質は変えられない。ふつうは常に変化するもの。」
「幼い頃からダンスをやっているから、自分のふつうと思う世界はダンスの中の世界である。ダンスの服装は明るい色だけれど、学校でそれを着ていたらふつうではないと見られる。ダンスの仕事で早退するときに、友達にとってのふつうとは違うから疑問に思われたことがある。ふつうになりたかったけれど、ダンスをやりたいという気持ちが強かった。就職活動で個性を問われることは、今と昔の教育の矛盾ではないか。」
「通っていた高校のほとんどの生徒は大学受験をしていたが、地元の友達は受験している人がほとんどいなかった。地元の友達から自分が受験することに対しての意見を言われた時、受験することに自身で疑問を抱いた。これは友達のふつうに流されていたのかもしれない。」
「大人しい友達と遊んでいたら、あの子と仲良いの意外だねと言われ、ヤンチャな友達と遊んでいたら、あいつらと遊ぶのやめておけと言われる。人それぞれのふつうがあるから言われることなのではないか。」
意見交換といってもまだ不慣れなので、今回はとりあえず1人1人の発言をきいて、否定するようなコメントはせず、最後は拍手でありがとうの気持ちを伝えるという方法でやってみました。こんなにみんなのかんがえる「ふつう」は違うのか…。「ふつう」について改めて考える機会になりました。富永先生ともお話してみたくなりました。
次回のテーマはジェンダーの予定です。