私のしつこさと皆さまへの感謝(目指せ大学院8)
So, what’s the verdict?
朝起きたら、アメリカの友人からそんなメッセージが届いていた。
これを書いている今、私は3つの修士課程プログラムに予約金と授業料を納めた状態である。
◆
今月12日に大学院の発表があった。
日本であれば午前中または午後の早いうち、または少なくとも決まった時間にウェブサイトにアップされるのだろうが、ここはスペインだ。その日のいつアップされるかわからない。まず朝にはアップされない。前回は夕方ごろだったので、今回もそうかと思っていたら、夕方になってもアップされなかった。最終的にウェブサイトにアップされたのは21時過ぎだった。
何が問題かというと、その翌日13日から15日までの「3日以内」に授業料を納入しないと合格が取り消されてしまうことだ。それなのに、前日21時まで情報がアップされないのは、まあスペインがスペインである所以なんだろうなあと思う。
結果は、前回と変わらなかった。私の第一志望の学部は、優先順位が低い人を評価していない。私の前には16人の志望者がいる。前回の21人からは少し減ったが、まだたくさんいる。
今回の発表をうけて、私は今決まっている学部に授業料を納めないといけないことになった。夏に合格をもらっていた学部は、私が第一志望としている学部と同じ大学にある教育学部だった。
第一志望はもう諦めるかとも思った。
まだこれから第三回目の応募ができ、最終的に10月半ばまで待つことはできるようだ。
しかし、教育学部は10月上旬にオリエンテーションがある。
そろそろ腹をくくるときなのだろうか。
ただ、ここはスペイン。
私もこの国と出会ってから10年以上が経った。
今回の発表を受けて、結果に対する不服申し立てや志望変更をする人が出てくるため、一週間後の20日に調整結果が発表される。
そこまで待ってみようではないか。
同時に、13日から15日の3日以内に教育学部への授業料を振り込まなければならない。
授業料といえば、私は外国人入試のときに合格した大学(A大学とする)に予約金を振り込んでいる。同じ公立大学のシステムなので、もしかするとこの予約金を今回のB大学にスライドできないだろうかと考えた。
できなかった。
B大学に授業料を振り込んだ後、A大学に連絡して返金手続きをとるようにと連絡があった。
この時点で「3日間の期限のうちの1.5日」が既に終わっていた。
どうしてですか?
大学の窓口に電話がつながらなかったからです。
◆
2日目の夕方。
いざ、B大学に振り込みを!
大学のウェブサイトから直接振り込むようにとある。
出願時に使っていたログイン情報をもとにユーザープロフィールを作成するようだ。
必要な情報を入れ作成ボタンを押す。
そんなわけはないだろう。
何回やっても「無効です」となる。
入力方法をいろいろ試した。
最終的に自分の個人情報番号の間にダッシュ記号を入れてみた。
ダッシュか!!!
やれやれ。
ここまででもう21時。
振り込みをしようと椅子に腰かけてから2時間経っている。
なんとかユーザープロフィールができた。
これでやっとログインできる。
IDとパスワードを入力する。
あとはログインボタンを押すだけ!
Logo de la universidad(大学のロゴ)
とだけ表示されたページが出てきた。
いやいや。
そんなことはあるまい。
もう一度ログインする。
同じことだ。
前日、大学の窓口の方が言った。
「授業料の振り込みはもうした?予約金の返金手続きの前に、まずそっちが先よ。振り込み期間は3日間なんだから、何か問題があったら最終日までここにまた連絡するのよ!」
あれは、問題があること前提での注意喚起だったんだろうか。
「大学のロゴ」
としか表示されないウェブサイトを前に途方に暮れる。
ウェブサイトの端に「困ったときのSOS!」というアイコンがあることに気が付いた。
これだ!
クリックしてメッセージを送る。
間に合わないじゃないか。
これはもう、お前は大学院に行くなということだろうか。
「大学のロゴ」と表示されたページを見つめる。
おーい。おーい。
思わず呼んでみたが、返事はない。
別のブラウザや別のパソコン、携帯電話も使って試してみたが、何をしたって「大学のロゴ」としか出ない。
1時間ぐらい経っただろうか。
突然、パソコンの画面が切り替わった。
なんだなんだ?
何だかわからないが個人ページに切り替わっている。
このとき既に22時を過ぎている。
なんでもいい。
さあ、振り込みだ!
画面を勢いよく覗くと、アンケートに答えるようにと書いてある。
この大学はそう簡単に振り込みをさせてくれないようだ。
今度こそ振り込みだ!
次に表示された画面では、自分が受けるコースを選択しなければならなかった。
にゃー!
なんのこっちゃもうわからないが、コースを登録しないと授業料が払えないのだから仕方がない。
先ほど、第二希望の学部は教育学部だったと書いた。かなりややこしいコース目録を見ながら、私は第一希望に行くのだからなと、どこまでも強気というかもう半ば逆切れのような気持ちで履修登録を済ませた。とはいっても、選択に時間はそれほどかからなかった。この大学のこの学部はとても人気のため既にこのときコースはほとんど埋まっており、完全に出遅れた私は余っているものを選ぶしかなかったからだ。
履修登録後、何とか無事に授業料を払うことができた。
2日目の23時だった。
◆
そこから9月20日までの一週間は長かった。
強気とはいえ、半分諦めの境地でもあった。
夫が前に勉強した教育学のテキストをぱらぱらとめくりながら、今回はこれを勉強するのかもしれないなと半分思っていた。合格を頂いたのは大変ありがたいことだから、とりあえずやってみればいいではないか!そう思う自分がいた。
でもなあ。
そう思う自分もいた。
20日になった。
この日は、アパートの周辺地域が7時半から14時半まで停電だった。
事前に予告されていたので準備はしていたが、工事をするから7時間停電とは、アンダルシアのすごさはこういうところにあると思う。たまたま前日にオンライン取材があったのだが、これが20日でなくてよかったと胸をなでおろした。目いっぱい充電したラップトップを持って、仕事に取り掛かる。
14時15分に電気が戻った。
よし、まだ早いけど、結果発表のページを確認してみるか。
この間みたいに夜まで発表がないものと思っていた私は、数分後にあっさりと表示された結果に拍子抜けした。
合格していた。
二度見、三度見どこか、20度見ぐらいしたと思う。
はははははははは!!!!!!
大きな笑い声が出た。
試合は諦めたら終了とはこのことか。
しつこさが勝った瞬間だった。
そして、私が教育学部を辞退したことで、こちらを本命としていた人が1人教育学部に入れたことを思うと嬉しくなった。そうあるべきだ。
友人、先輩、応援してくれていた仕事関係の人たち、呆れるであろう大学時代の教授、noteの皆さま、親戚。いろいろな人の顔が頭に浮かぶ。
夢の中にいるような気持ちで、ウェブサイトの詳細情報を見る。
発表から5日以内に授業料を払うようにと書いてある。
ちょっと待てよ。
私は既にB大学の教育学部に授業料を振り込んでいる。
私の第一志望もB大学なので、これこそそのまま学部変更登録だけで授業料もスライドできるはず。
できなかった。
第一志望の学部に振り込みをしてから、その振り込み通知をもって、教育学部に返金手続きをしてくださいとのことだった。
つまり私はこれまでに
・A大学への予約金400ユーロ
・B大学の教育学部の授業料800ユーロちょっと
を振り込んでおり、第一志望の学部に今回800ユーロちょっとを振り込まなければならないということになる。
一気に現実に引き戻された私は、大学のウェブサイトを再び開いて自分の情報を入力する。
にゃー!!!!!
何回これをやったら気が済むのだ。
もう冗談としか思えなくなってきた。
先日、問い合わせた「SOS」から24時間後に返事が来ていたのを思い出した。
3日以内に授業料振り込みという強気の指示と、登録してすぐにログインできないシステムの在り方との関係はどう説明するのだろうなあと思いながら、「まあしょうがない、スペインだものなあ」と、「ただ、スペインだから」という理由で納得している自分がいた。完全にスペインの勝ちである。
そんなわけで、「無効です」の通知を数回見た後、この日は諦めて寝た。
今回は5日の猶予があるのだから、明日でもいい。
翌日、大学にメールを送った。
以前、だめもとで志望動機を出してみればいいと言ってくれた、第一志望の学部の先生には合格の報告をした。
「あなたを学生として迎えることができてとても嬉しい。会えるのを楽しみにしていますよ」
そんなあたたかいメッセージが届いた。
いろんなところから、学部変更をするにはここへ連絡しろ、あそこにメールをしろというメールが届く。
ありがたいことだ。同じ大学内での変更だからか、そして日にちがないためか、緊急案件として皆さんが扱ってくださっている。
結果的に今回は全然違うウェブサイトを見ていたことがわかった。
脱力感とともに、新たなウェブサイトを開く。
ここでまた授業料振り込みの前に履修登録をする必要があった。
しかし、今度は大丈夫だ。2回目なので何となく手順がわかってきたことと、自分がより興味を持っている内容ということもあり、見ているだけで楽しい。
無事に履修登録を済ませ、授業料を振り込むことができた。
後は返金手続きを行うのみ。
◆
これまで特に書いてこなかったが、私の第一志望の学部は人類学だ。
大学時代に人類学のクラスをたまたま受講し、衝撃を受けた。
20年越しの夢がかなう。
スペイン人の友人には「ゴミみたいな学部」と言われたが、誰が何と言おうがいいのだ。
ドイツにお住いのりのさんがおっしゃっていた。「実利につながるという視点も大事だけど、そうでない選択をする人がいてもいい」と。私もそう思う。
医療の観点から人類学で勉強したいことがある。今の仕事に直接役に立つかどうかはわからないが、私がこれから生きていくうえでの燃料になることは間違いなさそうだ。
それよりも、第三外国語のスペイン語での勉強についていけるだろうか。多分ついていけないだろう。入ってから泣くことは今から目に見えている。でも、まあどうにかならーな、と思っていくしかない。ここはスペイン。私みたいな人間も「しゃあないなあ」と受け止めてくれる国だと信じているから。
◆
ふと、思い出した。
夏に日本の友人が言ったのだ。
大学の近くに住むわけだよねという彼の質問に、いや通うのだと言ったとき。
「君さあ、今の町から大学まで通ったことある?」
「ないですよ。あんな都会には2回ぐらいしか行ったことがありませんからね」
「現実的に考えて、君の町からの移動手段が大変限られているってことをわかってるんだろうか。実際に通うなんて、そんなことができたら伝説になるね。まあがんばってくれ!君のその妙な振り切れ方というか、行き当たりばったりなところは変わらないね。いやあ、すごいよ!通うって君、あそこからどうやって!ははははは!!!」
アドバイスをありがとうございますとお礼を言い、まあ移動手段は合格してから考えるんだぜと思う私がいた。
合格してから考えるんだぜ
今ここにいる。
考えようと思って、電車とバスの時刻表やら地図をみてみた。
最初の学期は週5で通う必要があるようだ。
……。
何時に家を出るんだろう私。
とりあえず、翌日回数券を買いに行った。
にゃー!!!!!
スキとコメントであたたかく応援してくださったnoteの皆さまに心よりお礼申し上げます。くじけそうになるたびにコメントを再読し、どれだけ力を頂いたことかわかりません。これからますます半泣きまたは逆切れのnoteをアップすることが目に見えておりますが、20年ぶりの労働学生生活(空即是色 in ロンドンさん命名。私も使わせて頂きます)、10月よりあたたかく見守ってやってください。
ありがとうございました。
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