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きもの本棚㉔『六十代は、きものに誘われて』*木綿と紬、着るか着ないか問題

『六十代は、着物に誘われて』は津田塾大の教壇に着物で立ち続けた三砂ちづる先生の新刊だ。時代が時代だけに、林真理子さんのような大人買いはない。「毎日、着物」「雪の日も着物」「飛行機での出張も着物」という執着に三砂さんの着物熱の症状は出たという。前著『きものは、からだにとてもいい』は新書っぽい傾向があったが、『六十代は、…』は着物初心者への気遣い、優れた言葉の選び方が見られ、読後感がよろしい。「着物は人を強くする」と書かれていた。

三砂さんは二年目を過ぎてから、木綿着物を愛用するようになって、例えば九月のような季節の変わり目に選んだ今日の着物がその日の気温や湿度にしっくりするのがなにより、心地よいそうだ。

毎日、着ているので、脱いだその場でお手入れするそうだが、私も夏物の縮で試してみたところ、体の熱が着物に残っているうちに霧吹きを済ませておくと、シワの伸びが格段に良く、汗臭さも消えていた。脱いだら、即お手入れ! 格言です。

ちなみに、冬から初夏に向かう木綿着物の暖かさは「一乗木綿」→「会津木綿」→「保多織(ぼたおり・高松)」→「浜松唐桟」とのこと。さらに、涼しいのが「阿波しじら」だそう。そして、夏物のワードロープには夏大島や上布が加わり、帯締めは「道明」のゆるぎ組で「山吹」が定番カラー。カタモノの濃い色系には黄色が合うそうで、巻頭の写真にはイエベとブルベに分けられた帯締めがゾロっとふた箱分、美しく納められていた。

三砂さんには着物メンターがいたが、ロールモデルには出会えなかったそうで、三砂さんの経歴を知るメンターさんは最初にひとつ紋の色無地とミンサー(半巾でなく、名古屋帯で、黒ベース)を薦め、それぞれ、大活躍した。

ちなみに私のワードローブのお手本探しは未だに続いている。インスタで見つけた美しいお太鼓のロールモデルが「きもの巧者のワードローブ」のページで『美しいキモノ ‘24秋号』に登場していたのには驚いてしまった。お太鼓が写っていないのは誠に残念だが、真綿紬・結城紬・色無地とそれに合う帯三枚を紹介していらした。で、同じ号の特集ページ「きものライフ別ワードロープ構築法」を見ると、私が着付け教室で通っている浜町の『円居』テイストはダンゼン、特集の中の紬好きのC子さんなんだけど、私が、未だ染めの紬しか持っていないのは問題だ。大問題だ。特集に掲載されたC子さんのワードロープでは、ザ・織りの着物の久留米絣と塩沢紬、モダンなダークカラーの紬と、紺を軸にした全8スタイルのうちにカタモノ三枚だったが、8枚中三枚でも、全体を見ると紬好きの印象が強い。‘20春号では水色を軸に黒と白に合うお色で構成したワードローブ全6スタイルを載せていて、カタモノは黄八丈・絵羽の紬・花織だった。

こんな風にグダグダ言う私は、つまりは欲しくなっちゃったのだ。

着物を二十年間、毎日着ていた三砂さんのきものライフは帯のない沖縄の着物「うしんちー」に進展しているのに、着物歴二年の私の成長度合いは未だに夢夢しく「紬も買ってみたいたいなぁ」なのである。行動力の差を実感。そういえばカルチャーの三味線教室には三線クラスがあるので、発表会には沖縄の髪結さんが来ているが、みなさんの衣装は絣で「うしんちー」は着ていなかった。

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