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行き止まりなんてない!

いぬうた市には色々な道があります。
コンクリートや土や砂利で出来ていたりする道が、
真っ直ぐだったり、ちょっと曲がっていたり、
くにゃくにゃ曲がっていたり、と様々な道がある中で、
最近、ぐーちゃんが気になっている道があります。
それは行き止まりの道です。
ぐーちゃんの家の近くにも、
行き止まりの道がいくつかあるのですが、
なにぶん行き止まりなので、
当然そこを通り抜けることが出来ないため、
そこに目的がない以上、そこに行く理由が見当たりません。
なので結果、ほぼ行ったことがない、行き止まりばかりなので、
ぐーちゃんの気持ちが行き止まってしまったのです。
あそこには、一体何があるのかしら?
どんなニオイがする場所なのかしら?
と、そんな興味だけが膨らみに膨らんで、その思いを消化出来ず、
とてもモヤモヤして何だか気持ちが悪くなってしまいました。
その気持ちを、きゅん君に話します。
「ぐーの家のすぐ近くにあるじゃない?あの駅の方に向かう道の途中の右側にある行き止まりの道。まずはあそこに行ってみて、ぐーは、この行き止まりの道に対する思いを何とか解消したいわ」
なので、ぐーちゃんは家から1番近いところにある、
行き止まりの道をきっかけに、
モヤモヤを払拭したいと考えたのです。
その思いに、きゅん君も同意します。
「あの場所は僕も何となく気になっていたんだ。今日にでも飼い主を無理矢理引っ張って行ってみようか」
そうだ!そうしよう。ということになって、
そのあとの散歩の帰りに、
立ち寄ってみることにしました。
真っ直ぐ行けば、あともうちょっとで家に着くというところ、
今日の散歩のパートナーの飼い主を無理矢理引っ張って、
行き止まりの路地に入って行き、突き当たると、
立ち止まって、辺りを見回したり、
「ほお、ほお」などと言いながら、
ニオイを嗅いだりしましたが、それは長くは続かず、
黙り込んでしまった、ふたりです。
「普通だね」
しばらくして、きゅん君が口火を切ると、ぐーちゃんも、
「そうね。どうやら正面に普通のお家があるだけの、なんの感慨もない、ただの行き止まりだわ。あんまり普通過ぎて、ぐーの気持ちも行き止まったままで、このまま消化されずに終わりそう。せめて、この先も通り過ぎれれば」
「行き止まりが行き止まりじゃなかったとかだったらね」
と、もうちょっと何かあるんじゃないか?
と思った、ふたりは実に残念そうです。
が、その時、ふたりの前を猫がスッと通りました。
ごく自然に、ごく当たり前に、その猫は通り過ぎ、
正面の家の塀にヒョッとジャンプして、
奥へ奥へと消えていったのです。
その猫の歩行を終始見ていた、きゅん君と、
ぐーちゃんは、
ただただ唖然としています。
そして、ぐーちゃんが言いました。
「ぐーは行き止まりと勝手に思い込んでいたけど、それは違ったわ。あの猫さんは通っていった訳だし」
「そうだね。僕らが先入観で思っていただけで、本当は行き止まりなんて全くなく、何かしら通る方法があるのかも」
と、きゅん君はちょっと考えたのち、
「分かった!」と言うや否や、
前の家のインターフォンのピンポンをジャンプして、
前足で押しました。
「ぐーも分かった!このおうちの中に入れてもらえば、何かしらその奥に行けるかもしれないということね」
「その通り。実際行けるかどうか分からないけど、確かめるまで諦めちゃいけないんだよ」
そう、きゅん君がかっこよく言ったのと、
同時に、
その家の人が出て来て、何が起きているのか、
さっぱり分からない飼い主はただただと
ドギマギするだけなのでした。

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