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【コーヒーが冷めないうちに】川口俊和 感動の短編集-感想
こんにちは。
寒い冬には読書がイチバン。コーヒー好きとしては、このタイトルに惹かれてしまう。
2017年、本屋大賞ノミネート作品ですね。
構成
タイムスリップが出来る喫茶店を舞台にした4つの短編集。4つの短編は時系列で繋がっていて、全体として一つの作品として読める。
これは連ドラにしたくなりますよね。実際は映画化?されたのかな。
全体
過去に行っても未来に行っても、世界は変えられない。
タイムスリップできる時間はごく僅か。淹れられたコーヒーが冷めるまで。
その儚さが感動を呼ぶ。
個人的評価
★★★☆☆(5点中3点)
気分によっては再読するかな。読みやすく、おっさんでも普通に感動してしまう。正直、ベタな展開で先が読める。でも先が読めても良いじゃない。そこに感動があるよなーってそんな感じ。
ベタな展開だし、舞台は喫茶店だし、何十年前の作品だよって感じなんだけど、何故か古臭さがない、そんな小説でした。
個人的感想
第一話
恋人との別れ?話。序章として至高。二美子のキャラが良い。二美子のテンションと軽快さによってこの本を読むペースが決まった。素晴らしい。ハッピーな展開も素敵。
第二話
アルツハイマーの夫婦の話。大変に素晴らしい。家族との愛とはなんぞや、と思わずにいられない。房木さんの手紙泣けます。男なら泣く、これは泣く。
第三話
老舗旅館を継ぐ、継がないの姉妹の話。良いですねー。お姉さん。奔放なお姉さんといつまでも姉を慕う妹。私も兄がいるから多少気持ちが分かります。
第四話
子供に会いに。ズルいですね。死との直面、娘のセリフ、これは泣いちゃいますよね。超ベタですけどね。
と、言うことでそれなりに絶賛してしまいました。
誰にでも読みやすく、誰でもどこかで感動できる、そんな本ではないでしょうか。人と生きていくのに疲れた日に、おススメ出来る本です。
好きだったところ
思わず目頭が熱くなってしまったのが、第三話、房木の手紙のシーンですね。房木が、妻が未来から来たって悟るのが良いんですよね。これって書くの難しいですよね?普通は未来から来た人を信じる、というまでのシーンで結構手間取る(そこが面白いので手間取るという表現が良いかは置いといて)じゃないですか。
でもこの作中で”ややこしいルールが沢山ある”という設定によって、房木はこの喫茶店に出入りしてて、何なら過去に戻ろうとしているから、察せるんですよね。そっからの、未来から来た妻へのセリフ、そして夫が何を感じるかも分かった上での妻の葛藤、更に時間がものすごく限られていることの焦り、この辺りが全て効いてるんですよね。
このシーンのために、ルールが設定されているような、冷静になるとそんな感動すらあります。前の記事(6人の嘘つきな大学生)で、伏線をそんなこれ見よがしに回収しなくて良い、と辛辣レビューをしてしまいましたが、僕は今作のような回収が好きですね(これを個人的には”回収”とは思っていないのですが)。房木が旅行雑誌を見ている描写も生きてくる。やっぱり、これって”伏線の回収”、とかじゃなくて、設定の妙、とかそんな言葉の方が良い気がしますね。
ネタがあって、その理由を解く、とかそんなことじゃない。設定があって、ああそうだなぁ、と感じ入る、そんな小説が好きです。
Have a good day.