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『大吉原展』(東京芸術大学美術館)

【内容】
江戸時代の吉原に関する展示。

【感想】
開催前に、吉原をネタに展示するっていうことで、SNSで炎上していたりしていたのもあって観に行ってみることにしました。

で、どんなものかと思って観に行ったんですが、こうした企画ものの展示はあんまり大したことがないことも多いので、期待せずに観に行ったのですが、予想に反してかなりしっかりとした展示でした。

幾つかレプリカがあったものの、特に喜多川歌麿の浮世絵や肉筆画など、かなり良いものがありました。
太田記念美術館を始めとした日本中の美術館や、果ては大英博物館まで貸し出して来ていました。
特に大英博物館から貸し出していた歌麿の美人画の浮世絵は、かなり良かったです。
今までで線目、かぎ鼻の美人画に描かれた女性は全然ピンと来なかったのですが…
今回観た何枚かの歌麿の美人画の浮世絵で初めて、色ぽくて綺麗だなあと感じるものがありました。
線の構成もしっかりしていて、美人画の浮世絵でもこんなに構成的にしっかりしているものがあるんだなあと…

ちょうどゴッホのことを描いた小説『たゆたえども沈まず』を読んでいるのですが、浮世絵をはじめとした日本ブームが起こった頃のパリを描かれていたりして、そこに描かれていた日本の浮世絵に対するパリの熱狂のようなものは、こうした浮世絵から始まっていたんだなあと、改めて感じたりしました。

偶然、この小説に出てくる林商会の林忠正が、吉原に関する著書を翻訳してヨーロッパに紹介したといったエピソードも出て来ていたりもして、色んなことが立体的に見えて来る感じもありました。
こうした浮世絵からの影響で、ゴッホを始めとした印象派などの絵画運動が起こったりとか…
そして、また同じ著者の『板上に咲く』で描かれた棟方志功が、ゴッホの強力な影響下で絵を描き始め、数十年後に版画家として世界的に認められる。
フランスを始めとした欧米圏で持て囃された浮世絵で描かれていた遊女達の多くが生まれた東北の貧農の出の棟方志功…そんな地方出身の棟方志功のドメスティックな風土に根差した版画が再び世界的な評価を得るというダイナミズム…
絵画という点を、歴史とか物語という軸を通すことで、ものすごくドラマチックなものとして立ち上がって来た感じでした。

変わった展示としては、吉原で働いていた幇間で罪に問われ流罪の地で絵を描いていた英一蝶の吉原の絵とか、なかなか興味深いものがあったりしました。

その他、日本の初期の洋画家として高橋由一の『花魁』も展示されていました。
学生時代に、高階 秀爾の日本絵画の解説本で、その重要性と特徴について読んだことがあったので、とても興味深く観ることが出来ました。
近年、絵に付いた汚れを洗浄したということで、描きたてのように鮮やかになっていました。その分、絵から辿々しい筆致や稚拙さが観て取れ、日本の油絵というものは初期こうしたものであったのだなあと感じました。

浮世絵については、以前、北斎の浮世絵を新たに浮世絵として版木から起こした作品を直に手に取って観たことがあるのですが…
絵の風合いと微妙な凹凸があり、独特の立体感や触覚的な空間感(?)を感じたことを思い出したりしていました。
本当は手にとって間近に観れると全然印象が違うんだろうなあと…

それから、花魁というのが実際どんな感じの容姿していたのかというのも、写真として残っていて、その展示も行っていました。
それは、フランスの日本に関する本の扉としてや、ブロマイド写真のようなものとして…
色んなタイプの女性がいたようですが、中には今見ても美人でトップアイドルのグループに混じっていても普通にトップはれるような目の覚めるような美人もいたりしました。

あと、こうした展示ではよく観る高齢の観客とともに、若い女性もかなりいたのも印象的な展示でした。

https://daiyoshiwara2024.jp

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