『夫の家庭を壊すまで（ドラマ　〜4話）』〜中堅女優の渾身主演ドラマ

視聴環境:U-NEXT

【内容】
学生時代から付き合っていた男性と結婚した主人公だったが、夫が子持ちの女性と不倫していて、その家庭を壊そうとする。

人気マンガ原作のドラマ化作品。


【感想】
人に勧められて、何気なく觀始めたら、配信されている4話目まで一気に観てしまいました。
内容は、バリバリの不倫もので、昔テレビで昼間にやっていた『昼ドラ』と呼ばれたジャンルのドラマで、わりとベタな設定やストーリーなのですが…
主演の女優さんの演技が、バリバリに力が入っていて、凄く上手い。
喜怒哀楽の表情や表現が巧みなだけでなく、何秒単位かで、気持ちの変化が変わっていくのが、ちょっとした目の表情、唇の震え、肩の怒らせ方などで変わっていく…
途中同じシーンで共演することの多くなる夫が不倫している女の高校生の息子役の役者が、かなり棒立ち演技なので、よりそのことを感じたりしました。
江川達也の『東京大学物語』という漫画で、主人公の大学生の心の動きに合わせて、凄まじい勢いで表現が変化していくのを、コメディ調に表現していたりしたのですが、この女優さんはそれを現実の演技に落とし込んでいました。
こんな言葉は存在しないのかも知れませんが、演技の解像度が滅茶苦茶高いってことなのだと思います。
しかも、ただ上手い演技というだけでなく、全力で演じているのが、ビンビンに伝わってくる…
涙で目をガンガンに腫らしながら顔を真っ赤にしながら感情を爆発させたり、顔を皺くちゃにしてやるせない泣き笑いを全力で表現したり…

このドラマを観ていて、今まであまり気付いていなかったことに気付かされました。
どういうことかというと、ドラマは物語を擬似体験して楽しむってだけではなく、普段発散出来ない感情を擬似的に発散させるエンタメだったんだと。

主演しているのが松本まりかという女優さんなのですが、名前や顔はなんとなく知っていたのですが、こんなに演技力のある役者さんだとは知らなかったです。
ネットで調べたら、今までも色んなメジャーなドラマで脇役を演じていたようで、いい演技をして来たのかなあと思いました。
端正な顔立ちで若々しくて綺麗なので、ぱっと見の感じだと、20代後半から30代前半なのかと思っていたのですが、39歳とのことでした。
もしかすると、年齢を考えて、こうした地上波の主演級の役で名前をあげるのはラストチャンスと考えて、並々ならぬ意気込みで取り組んでいるのではないかなんてことを思ったりしました。

あと、声優さんをやっているようで、わりとメジャーな役どころをやっていたりもするようです。（声優さんの世界も、より生き馬の目を抜くような世界なので、超人気声優以外はある程度の年齢以上になると色々と役がつきにくくなるだろうなあとも…）
その中で演技を鍛えて来た経験も生きているのかなあと思いました。
もしかすると、この秒数単位での細かな感情の演じ分けや、演技のリアリティラインの調整といった技術は、声優の世界で培った技術なのかなあと…
ドラマ冒頭の方は、いかにも昼ドラ的な大袈裟な演技と味付けだと感じて観ていましたが、途中から観るのがやめられなくなっていきました。

以前、役者をガチで目指している人たちに混ざって、1ヶ月だけ演劇のワークショップに参加したことがあるのですが…
その時に感じたのは、名前も知られていない若い役者志望の人たちの演技力の高さでした。実際に、その場その場で課題や脚本を出されて、即座に対応していく様を見ていて、役者ってすごいなあと…その経験があってから、ドラマや映画で観る役者さんの観る目が変わった気がします。

このドラマでは、他の役者さんがそこまで入れ込んでいる演技ではない中で、この役者さんだけへ凄く力入ってるなあと…
あと、なにがどうということはまだ言語化出来ていないことなのですが、演技の質自体が独特だなあと…
先程書いた演技の解像度といったものに繋がらるのかも知れませんが、演技の反射神経みたいなものと、物凄い演技に入り込みつつも冷静にその状態をコントロールしている気配いうか…
容姿の若々しさと、演技の円熟みみたいなもののキャップというか…

色んな現場でそれなりに結果を残して来た結果、39歳で地上波の初主演ということなのだと思いました。
ここら辺の役者のチョイスは、テレビ東京ならではかなあと…
『孤独のグルメ』で、渋い脇役などをやっていた松重豊が一気に人気俳優にしたりとか…

しかし、綺麗だし、ここまでの演技出来るのになんで今までそこまでメジャーにならなかったのかなと考えていたのですが…
綺麗で端正な顔立ちすぎて、逆に記憶に残りにくかったりするのかなあと思ったりしました。

https://www.tv-tokyo.co.jp/katekowa/