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『無職転生Ⅱ』(アニメシリーズ 〜最終回)

【内容】
現在の日本の引きこもりだった中年男性が、交通事故死をきっかけに、前世の記憶を持ったまままファンタジー世界に転生、活躍する。
ラノベ原作のアニメシリーズ第2段。


【感想】
この種の中世西洋テイストファンタジー世界では珍しく、人間の性欲や情念を全面に物語に組み込んでいる一風変わったアニメ作品といった印象があったのですが、今回の後半は、なかなかな展開になっていました。

ストーリーとしては、主人公が結婚したばかりの身重の妻を置いて旅に出て、愛人を連れて帰って重婚することにする…
その話を切り出された奥さん(1人目)が、俯き加減に顔を赤らめながら、『ルーデウス(主人公)は性欲が強いから、そう言うこと(浮気)すると思っていた』と、あっさり重婚を認める…
その他のキャラクターもそのことに納得して、反対するのは主人公の妹のうち一人だけ。

アニメシリーズの途中で、女性声優によるトーク番組が入るのですが…
それなりに酷い展開になるとは聴いていたのですが、みんな奥歯に物の挟まったような語り方をしていて、何だかなあと思って観ていたのですが、なるほどなあと思う展開でした。

アニメシリーズは、第3期も制作決定となって、声優さんも下手なことを言って声優降板させられるのは怖いから、原作の小説を読むとより深く物語世界を理解出来るので、そちらも読んで下さい…なんて、過剰に原作を持ち上げていたりしたのが印象に残りました。

細かな設定や世界観、ストーリー構成や展開、アニメの出来など、かなり良くできているのですが…
アニメシリーズ冒頭から、わりと性的な表現に関して、女性からの批判がやたらにあった作品でしたが、その後の展開や、この作品のテーマ性(?)にも関わることなので、逃げずに表現したのだろうなあとも思いました。
が、そうした描写がなければ、もっと爆発的なヒットしてもおかしくない作品なのだろうなあとも思いました。

人気作なので、原作者が作品の改変を許さなかったといった面もあったのかも知れませんし、そこら辺はよくわからないのです。
とはいえ、コンプライアンスが叫ばれ昨今、色んな俳優や声優、タレントが、性に関するスキャンダルで、かなり社会的な制裁を受けていつつ…
日本や韓国の若者に、太宰治が受けているという話を話を聴くと、人間はそんなに簡単には変わらない物だしなあとも思ったりもします。
妻の他に何人も愛人作しまくって、狂言自殺を繰り返したり…
薬中で、借金まみれで、文学賞をくれないと、散々愚痴を書き散らかしたり…
今の時代に太宰が生きていたら、SNSで炎上させまくったり、迷惑系YouTuberになってたりしたのではないかなあと思ったりもします。

などと考えていると、もしかするとこの『無職転生』の展開も、実はそれはそれで、新たな価値の想像といった観点では、評価されるべきものといった立ち位置になっていくのではとも思いました。
第2シーズンでは、主人公が性的に不能になってしまうと言うことを、他のエピソードと並行して前半10話以上を使って描いていたり…

原作自体が、もともと『小説になろう』で投稿されていた作品ということもあるのかなあと、ふとこの投稿サイトで原作の冒頭を読んだら、冒頭からなかなか際どい内容でした。
短い文章でテンポよく語っている文体で、現実世界での引きこもりの主人公のどうしょうもなさが、半ばネタ的に展開されていました。
ある種の露悪趣味を含んだ歯に衣着せぬ物語が、その後、転生した先での苦難の克服によって成長していく…
それは未成熟な生と、そして性の成熟みたいなものまで含んだ成長となっていくのだなあと…

沢山の作品が生み出されることによって、その中から質の高いものが出て来るって面もあるのだろうなあとも思いました。
こうした草の根的に日々生み出されている大量の作品の中に、文学とか通常のエンタメの世界からは出てこなかったような作品が生まれて来るのだなあと…

と思いつつも、単純に現実世界での経験の乏しさから、ネット的な言論空間(?)の反映した頭でっかちな展開になっていっただけなのではという気もしてきたりもしました。

https://mushokutensei.jp

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