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質問098:スピンサーブが打てない。ダブルスでボールに触れない

サーブの入る確率が最近低くなってきたため、スピンをかけてサーブを打とうとしているのですが、なかなかスピンがかかりません。

打ったら大きくボールが跳ねるというイメージもしっかり持って打ってますがそれどもまったく相変わらずスピンがかからないんです。

スピンサーブにいたってはやはり初心者と同じで打ち方すら最近覚えたてなので素振りからして、フォームづくりした方がいいんでしょうか?

あともう一つ別の件なんですが、ダブルスで試合中ほとんど(ボレーのとき)ボールに触れないということが多々ありました。

回答


▶実際には、スピンはかかっている

 
スピンをかけるイメージがおありであれば、スピンはかかっているはずです。
 
私たちが打つボールに「無回転」はほとんどなくて、どんなにフラットに打とうとしても、何かしらの回転がかかるものだと言われています。
 
大まかには、トップスピンか、サイドスピンか、アンダースピン。
 
縦方向にラケットを振り上げるサーブですから、アンダースピンはほぼないでしょう。
 
残るは、トップスピンかサイドスピン。
 
少なくともスピンサーブのイメージはお持ちなのですから、その両方がミックスされたトップスライスなど縦系の回転は、かかっています。
 
ですが「まったく相変わらずスピンがかからない」とおっしゃって、かかっている認識が現実に対して異なっているため、取り組む方向性を誤っていらっしゃいます。
 

▶原因を誤れば対処も誤る

 
スピンはかかっているのだけれど、その当たりの厚さや回転量にバラつきがあり、そのためにスピンサーブのコントロールが安定しないというのが問題の本質。
 
スピン自体はかかっている。
 
ですがスピンサーブが入らないのは、「スピンがかからないからだ!」と思い込んでいらっしゃる。
 
この誤解から、「もっと振り上げるスイングを!」などと極端に走り、かえってアンバランスな打ち方になっているプレーヤーは少なくありません。
 
上手くいかない原因の捉え方が誤っていれば、対処のしようも誤ります
  

▶公文式を参考にした「ステップダウン」で飛躍する

 
それでもまだ、回転がかかっている事実が認められないというのであれば、たとえばPLAY+STAY(プレイアンドステイ)などの2色ボールを使ってゆっくり打ち、回転の様子をご自身の目で見て確かめてみるステップダウンをオススメします。

比較的大きくて軽く、空気圧も低くて柔らかいから回転をかけやすく、なおかつ2色に彩られているため、とても回転を視認しやすいのです。
 
何もいきなり、比較的小さくて重く、内圧が高くて硬く、メルトンを貼り合わせてできる縫い目然とした模様はあるものの、いきなり黄色い単色でできているレギュラーボールから、回転を視認しようとするハードモード設定のステップアップだけが、上達するための取り組みではありません。
 
プライドが高い人(=自己肯定感の低い人)は、やりたがりませんけれども、公文式よろしくできないところまで下りるステップダウンは、一度沈み込んでから飛躍するバネのような作用を発揮します。
  
 コチラで取り上げている公文式を参考にした「回転の味見」です。

ご自身の打ったボールの回転を目で見て確認する情報のフィードバックは、スピンを習得するにあたって有効です。
  

▶入らない原因を「スピンがかからないから」と誤解する

 
さて、スピンはかかっているのにスピンサーブが入らない本当の原因は、何でしょうか?
 
それは確認してきたように、サービスボックスに入らないのはスピンがかからないからではない。
 
では、どうして?
 
サーブに限らずすべてのショットに共通する、テニスでミスする原因は(空間認知が現実どおりであればという前提を踏まえると)、「打球タイミングのズレ」が唯一です。
 
空間認知の確かめ方は後述します。
 
「打球タイミング」が合っていないために、インパクトにおける当たりの厚さや回転量が毎回変わってしまうバラつきに、サーブが安定しない原因があります。
 
ではなぜ、打球タイミングが合わないのかというと、それは皮肉にも仰せの「スピンをかけてサーブを打とうとしている」意識が、ボールへの集中を妨げているからなのです。
 
これはストロークでも同様です。
 
スピンをかけることを意識すると、面をかぶせたり、ラケットを垂直に振り上げたりする極端に走るため、打球タイミングがズレるあまり、すっぽ抜けたりもするのです。
  

▶「跳ねる」と「落とす」のベクトルは逆

 
スピンをかけるにあたって、バウンドしたら大きくボールが跳ねるイメージは、事前に実装しておいてください。
 
ラケットを振り上げるスイングが、ダイナミックになります。
 
よくありがちな「スピンで落とすイメージ」だと、かえってスイングが縮こまります。
 
そのために、回転量も減るのです。
 
「跳ねる」と「落とす」ですから、ベクトルはまったくの逆ですからね。
  

▶「ここだ!」と感じて打ちたくなる打球タイミングはあるか?

 
そのうえで、昨日の弾道イメージの話と同じですけれども、実際に打つときには、何も考えずに、ボールに集中するようにします。
 
つまりスピンをかけようと「意識しない」のです。
 
「スピンの弾道をイメージしながら打つ」などとも言われますけれども、それはイメージというよりもどちらかというと、スピンの弾道について「考えている」に近いでしょう。
 
そのために恐らく今は、トスしたボールの回転や毛羽が、見えていません
 
だから、「ここだ!」と感じて打ちたくなる打球タイミングが、なかなか合わないのです。
 
合わない以前に、打ちたくなると感じられない。
 
スピンをかけようと「意識」しているから、トレードオフの相関である「感じる力」は弱まるからです。
 
そのために、たまにタイミングが合ったとしても、打球ごとにバラつくから、スピンサーブのコントロールが安定しないのです。
  

▶サーブも「打点目線」で弾道イメージを実装する

 
また昨日の弾道イメージの話で「打点目線」についてご説明しました。
 
たとえばネット間際から打つローボレーなら、プローン(コートに這いつくばる)腹臥位で、実際にボールが飛び出す高さの「打点目線」を確認できるのでしたね。
 
これも同じです。
 
サーブの場合は「打点目線」が、身長より高くて確認しづらいですけれども、審判台などをベースライン手前に持ってくるなどして自分の目で実際に弾道イメージを確認してみると、ネット上端よりもサービスラインは「下」にあるから、打点目線から打ち下ろしてはサーブは入らない、現実に即した空間認知を実装できます。
  

▶ボールを見ていれば相手のポジションは分かる

 
ダブルスでボールに触れない、よくある「ダブルスぼっち問題」も、基本的には同じです。
 
ボールに集中していないと、飛んでくるコースに入れません。

恐らくそういうときに限って、いざ自分のほうへボールが飛んで来たら、ミスしがちなのではないでしょうか。
 
仲間入りして大活躍するにはどうすればいいかというと、相手のポジションやフォームなどに惑わされずに、ボールにフォーカスします。
 
ダブルスの場合は確かに、相手が2人いるから少し複雑ですけれども、基本的には相手のポジションは、ボールだけ見ていれば分かります。
 
相手はボールに引き寄せられて動きますからね。
 
ボールが相手コート側へ飛んで行っているにも関わらず、もし相手が、ご自身が見ているボールのところにいなければ、それはご自身チームによる「ウイナー」ということになります。
 

▶全部を同時に視野へ収めようとすると……

 
「それだと対戦相手のパートナーは見えない!」と心配になるかもしれませんけれども、話は先ほどと同じで、次にそのプレーヤー側へボールが飛んでいったら、どうせ引き寄せられて動いてきます
 
何も、ボールも、ボールを打つ相手のプレーヤーも、ボールを打つ相手のプレーヤーのパートナーも、同時に全部を視野へ収めようとする必要はないのです。
 
常識的なテニス指導は、「相手のパートナーがポーチに出てくるかもしれないから、そちらもケア」などと言うかもしれないけれど、それこそテニスがハードモード化します。
 
むしろそのようにして、ボールを打つ相手のプレーヤーも、そのパートナーも、ときに自分のパートナーも、同時にすべてを視野へ収めようとする広い漠然とした見方が、ボールへのフォーカスを甘くします。
 
それだとボールの回転など、まず見えないでしょう。
  

▶背景から浮かび上がる見方とは

 
『新・ボールの見方』で確認したとおり、私たちが鮮明に見ることのできる中心視野は狭く、「いま」という2文字があった場合、同時に視野に収めることはできたとしても、たとえば「い」の輪郭をハッキリ見るような集中力を発揮すると、「ま」の存在は、それとはなしに認められるものの、読むことはできません。
 
読めるとすれば、それは視力や認識力が優れているのではなくて、「い」に対する集中力が、まだまだ低いのです。
 
また「い」の輪郭をはっきり見るような集中力を発揮すると、「い」が、背景から浮かび上がって大きく目に映るレビューがあります。
 

▶すぐにできる、ボールを大きく光らせる見方の実験

 
もっと分かりやすい実験をしてみましょう。
 
下の黒点の輪郭をはっきり見るように集中してみてください。
 
 ●
 
すぐに、輪郭を取り巻く周囲が、白くフレア状に輝く様子が見て取れると思います。
 
これがテニスでは、ボールが背景から浮かび上がって見えたり、大きく目に映ったり、光って見えたりするボールの見方です。
 

▶だからテニスがハードモード化する

 
テニスは、現実どおりのイメージを実装したうえで、あとはボールに集中しさえすれば、できるようになるスポーツです。
 
ですがプレーしながら、相手のポジションや、自分のフォームや、どこに飛んで来そうかの予測や、ボールがコートへ入るか入らないかの結果や、さっきミスした反省や、数手先や、戦術や、その他に意識を向けると、ひどく難しく感じてしまうのです。
 
いろいろやろうとするから、複雑になる。
 
上記はおおよそ常識的なテニス指導で教わり、注意される内容ですけれども、だから、難しくなる。
 
テニスがハードモード化するのです。
  

▶ヒンギスのボレーが安定する理由

 
あるテニス雑誌のブログによると、かつての天才少女、今のテニス界のレジェンドであるマルチナ・ヒンギスが、「ボレーはいちばん簡単なショットよね。あまり自分ですることがないから」といったコメントをしたそうです。
 
することが少なくなるほど、簡単なのですね。
 
「必ず決める!」という強い覚悟や、「絶対ミスしない!」という注意深さもご不要。
 
不用品は、持っているとジャマになります。
 
そういう思考が入り込まないようにボールに集中すると、テニスがイージーモード化します。

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(テニスゼロ)
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スポーツ教育にはびこる「フォーム指導」のあり方を是正し、「イメージ」と「集中力」を以ってドラマチックな上達を図る情報提供。従来のウェブ版を改め、最新の研究成果を大幅に加筆した「note版アップデートエディション」です 。https://twitter.com/tenniszero