テニス上達メモ138.耳を澄ませば
▶「1000分の4秒」を感じる
相手のインパクト音を聞く、バウンド音を聞く、自分のインパクト音を聞く、そうした音のアクセントを頼りにラリーのリズムに乗ります。
特に自分のインパクト音を聞くときには、ただ聞くのではなくて、その音色をよく聞き分けると、1000分の4秒と言われる瞬間に生じている繊細なフィーリングをつかみやすくなります。
音の大小、高低、清濁を、よく聞き分ける。
フォームなど一切意識せず、「パコン」なのか、「カシュ」なのか、「ボコ」なのか、良い悪いといった主観を排除して、音を微に入り細に入り探っていく作業に没頭します(関連記事「雨はダメなの?」)。
▶インパクトは、見えなくても聞ける
確かに私たちは、情報の多くを視覚から得ます。
とはいえ聴覚というのは、シチュエーションによっては視覚よりも、情報収集力が高まります。
卑近な例では、たとえば暗闇で水筒に水を注ぎ入れるとき、目では見えなくても音を聞いていれば、いっぱいになる量が分かったりしますよね。
テニスで言えば、1000分の4秒と言われるインパクトの瞬間は、目では絶対に見えないけれど、耳では(聴覚に障がいのハンデがあったりしなければ)、絶対に聞けます。
インパクトの瞬間を感じるという狭義に限っては、(その前後のボール情報は得るにせよ)視覚はまったく役に立たず、聴覚(あるいは触覚)がモノを言います。
▶インパクト音が聞こえない!?
大小、高低、清濁を聞き分ける聴覚と、ラケット面のどのあたりに当たったかを手のひらが感じる触覚とがリンクして、スイートスポットで捕えられるようになる精度も上がります。
その結果、ストリングが切れた瞬間に目で見て確かめなくても「上から3本目!」などの情報が分かるようにもなったりします。
とはいえ、頭の中のおしゃべり(セルフトーク)が騒がしくなると、いちばん身近で聞いているはずの自分のインパクト音が、聞こえなくなるのです。
それが証拠に、自分のインパクト音がどんな音色か知らないプレーヤーも、少なくないでしょう。
もちろん、視覚的集中が優位になると、聴覚的集中は劣位になるトレードオフではあるけれど、耳栓をしてテニスをすると難しくなる事実から想像できるとおり、目と耳はバックグラウンド(潜在意識)では協働してボール情報をゲットしています。
▶点と点が線でつながると「リズム」に乗れる
また冒頭で述べたとおり、インパクト音だけではなく、バウンド音も聞くと、点と点がつながって線となり、そこにリズムが現れます。
リズムは目では見えないけれど、耳では感じられて、それがタイミングを合わせる「拠り所」となってくれます。
卑近な例で言ってみれば徒競走の「ヨーイ、ドン」。
「いきなりドン!」ではずっこけますけれども、「ヨーイ」があるから、スタートダッシュのタイミングを測れます(関連記事「いきなり『ドン!』だと、ずっこける」)。
それと同様、打球タイミングが合わずに悩んでいるプレーヤーは、音を聞いてリズムに乗る作戦でタイミングを測ってみるのです。
バウンド音が「ヨーイ」で、インパクトが「ドン!」
▶打球タイミングが合わない現状からの「脱出作戦」
ただし繰り返しになりますけれども、常識的なテニス指導にならってフォームや打ち方を意識してしまうと、音は聞こえません。
また音の大小、高低、清濁を、よく聞き分けていると、ボールの回転を見て取る視覚的集中も損ないますけれども、それは致し方なし。
ほかの問題も出てくるかもしれませんけれども、まずは打球タイミングが合わずに苦しんでいる現状をどうにかする作戦として取り組んでみてください。
▶禅僧の丁寧な所作は「する」のではなく「なる」
また、日常生活でも「耳を澄ませる」と、立ち居振る舞いが自然と変わってきます。
禅僧たちが静かに扉を「ソッ」と閉めたり、食器を「トン」と置いたりして所作が丁寧なのは、意識してそうしているわけではありませんよ。
彼ら、彼女たちは頭の中の雑念をなくして五感に集中する感度が非常に高いため、ドアを「ドン!」と閉めたり、食器を「ガチャッ!」と置いたりする大きな音だと耳に響きすぎるので、「ソッ」「トン」などという所作を「する」のではなく、自然とそのような所作に「なる」のです。
その感度が人並み以上に高度化する結果、彼ら、彼女たちは、物を落としたり、壊したり、あるいは無くしたりする失敗も、しなくもなります。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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