テニス上達メモ059.私、テニスが楽しくないかも
▶そもそも、集中するのが難しい?
テニスが上達するには、どうすればいいでしょうか?
ボールへの集中力を高めればいいのです。
集中というと、「真面目」「努力」「シビア」「ストイック」などのイメージが伴うかもしれません。
しかし本質は、そうではないのです。
また集中しようと意識するのも、集中ではありません。
それでは、集中しようとする「思考への意識分散状態」になります。
つまり努力しても、ストイックになっても、意識しても、ダメ。
テニスが上達するために集中力が必要だというのに、肝心な集中が叶わなければ、結局テニスが上達しない、という元の木阿弥です。
では一体、どうすればいいでしょうか?
▶テレビゲームを楽しむ子どもの「指さばき」の正体
集中するために……。
答えはいろいろあるでしょうけれども、そのひとつはこうなります。
「楽しむ」。
集中と楽しさは、「ペア」なのです。
先に挙げた「真面目」「努力」「シビア」「ストイック」などのイメージとは、かけ離れているかもしれません。
子どもがテレビゲームをしているときの、「すさまじい集中力」を思い出してください。
声をかけても、聞こえません。
時の経つのも、忘れています。
現れる指さばきは、超高速。
メチャメチャ楽しんでいます。
「真面目」に「努力」しているから現れる指さばき、なのでしょうか?
否。
私たちテニスプレーヤーも、「あの状態をコートに持ち込めばいいだけ」なのです。
▶集中という「卵」から、ニワトリという「楽しさ」が生まれる
とは言っても、どうすればテニスを楽しめるようになるか、ですよね。
テレビゲームは、楽しい設定だから集中しやすいのは確かなのですけれども、集中するから楽しいのです。
集中するから楽しいのか、楽しいから集中するのか?
まるでニワトリと卵のような関係のように思われるかもしれません。
おすすめするのは、集中が先、ここでは卵とたとえます。
集中という卵から、ニワトリという楽しさが生まれます。
そしてニワトリという楽しさがまた、集中という卵を量産します。
つまりプロセスは、「集中する→楽しい→さらに集中力が増す」です。
つまりは、集中すれば楽しくなる。
それが証拠に、どんなに楽しいはずのテレビ番組を視聴していたとしても、集中せず電話する片手間にでも見ていたら、あまり楽しくありません。
だけど逆もまた真なりで、どんなに楽しくないテレビ番組であったとしても、集中すると、楽しくなるのです。
▶「興味のないニュース番組」もこれで楽しくなる!
たとえば、ニュース番組。
アナウンサーの表情や、声色の変化、身振り手振りのバリエーションなどに集中力が及ぶと、見ていてがぜん、楽しくなるのです。
楽しいといっても、何も「ゲラゲラ笑う」という意味ではありません。
伝えようとする姿勢、一生懸命ぶり、空気感、間(ま)、健気な感じや奥ゆかしさ、微笑ましささえ見て取れて、引き込まれるから「楽しい」のです。
楽しいと、インプットされる情報の質も量も、格段に上がります。
▶箸が転んでもおかしいですか?
「箸が転んでもおかしい年頃」というフレーズがあります。
辞書を紐解くと、「日常ごく普通のできごとにもよく笑う年頃。特に、女性の十代後半をいう」とあります。
感受性がフレッシュで、集中力が高いのです。
たとえば、何の変哲もない「空」です。
「ただ眺めるだけ」であったならば。
しかしよくよく見上げれば、風に吹かれる雲の形や濃淡の変化が見て取れるし、雲がなくても、地平から天空へ至るブルーのグラデーションなどにも集中力が及ぶと、これまた楽しい。
どこまでも続く終わりのない宇宙の神秘や、今この瞬間にも自転・公転し続けている地球の活動ぶりが、興味深くなるのです。
昔の人は空を見上げて、季節によって変わる星の配置を発見し、星座として「楽しんだ」に違いありません。
▶「ボールサイズ」の変化に気づく
テニスも同じです。
何の変哲もない黄色い球であるところのボールも、集中して見ると遠近法にならい、近くにあるうちは大きく映り、遠ざかるにつれて小さくしぼんでいっては、また近づくにつれて大きく膨らんでくるサイズの変化が見て取れて、楽しいのです。
ですから『新・ボールの見方~怖れのメガネを外して、ありのままに見る技術~』だと、真面目に努力しなくても、ストイックにならなくても、引き込まれて「楽しい」から、うっかり集中状態に入ってしまいます。
そして楽しいから、インプットされる情報の質も量も格段に上がるというのは、先にお伝えしたとおりです。
それに連係して、アウトプットされるパフォーマンスの質も量も、格段に上がります。
つまりテニスでいえば、距離感やスピード感などのボールに関する情報のインプットが質・量ともにアップすれば、打点に入るポジション取り、打球タイミングの精度、コントロールの正確性などパフォーマンスのアウトプットも、格段に上がるというわけです。
▶脳は「省略」がお好き
空は「青い」だけではありませんよね。
その濃淡やグラデーションなど、バリエーションはさまざまです。
ところがぼんやりしていると、私たちの脳というのは省略して「青い」とだけ物事を見がちなのです。
それに伴い、インプットできる情報の質も量も、格段に下がります。
つまり現実の空を見ているようで、「空は青いものだ」という記憶しか見ていないのです。
風に吹かれて、木が右から左へなびいているように、目に映ります。
だけど現実は、そればかりではありません。
確かに右から左へなびいている枝もあれば、しなって逆方向へ戻ろうとする枝も同時にあったりするはずです。
それを大雑把に見て、「木が右から左へなびいている」と、脳は情報を省略して見てしまいます。
つまり私たちが見ているのは、「現実」ではありません。
脳により省かれた情報を、「見させられている」のです。
▶対戦相手の「棄権」は楽しい?
「集中するから楽しい」という話をしてきました。
「集中」という卵から、「楽しさ」というニワトリが現れ、さらに「楽しさ」というニワトリが、「集中」という卵を量産するのでしたね。
勝つから、楽しいのではありません。
ときどき私たちは、勝てば楽しいと考えがちですが、そうではないのです。
それは「楽しい」というより、「嬉しい」のです。
そして「嬉しい」からといって、集中力が上がるわけではありません。
むしろ、少しリードしたからといって浮つけば、集中力を失って足元をすくわれます。
▶楽しめば楽しむほど、「集中力の量産」が起こる
一方、「楽しい」と「集中」は必ずペアです。
楽しめば楽しむほど、集中力が量産されます。
勝つから楽しいというのであれば、対戦相手が全部ダブルフォールトしてくれたら、楽しいはずです。
それ以前に、対戦相手がデフォ(棄権)してくれたら?
うーん、楽しいでしょうか?
本当は逆。
集中するとプレーが楽しいから、結果的に勝ってしまう機会が多くなるだけです。
▶「頑張る」から勝てるのではく「楽しむ」から勝てる
よく近ごろの日本代表選手が、「オリンピックを楽しみたい」などと、抱負を口にします。
それを聞いた人のなかには、「お国のために頑張るべきで、楽しむなんて不謹慎だ!」などといって批判的に見る向きもあるようです。
だけど「勝負を楽しみたい」、大いに結構ではないでしょうか?
勝負の世界に「悲壮感」を求める気持ちも分からないではないですが、必要ありません。
頑張るから勝てるのではなくて、楽しむから勝てるのです。
▶ナダルは必死にボールを追っていない?
ラファエル・ナダルのコートカバーを見ていると、必死になってボールを追いかけているように錯覚しがちです。
しかし、そうではありません。
「追わなきゃ」という悲壮感は皆無。
あれだけ遠くのボールも追えるのは、必死だからではなくて、ボールを追うのが心から「楽しい」から「追いかけたい」のです。
▶好きなことを、楽しんだらダメなの?
「Game, set and match won by Nadal」とアンパイアが告げます。
そう、テニスはゲームです。
インベーダーゲームもテトリスも、困難をクリアしていくから楽しい。
人生ゲームと同じで、楽しんだもん勝ちです。
何も私たちは、義務でつらい思いをするために、生きているわけではありません。
好きなことをして、楽しんでいいはず。
だけどつい、特に日本では「頑張るべきだ!」「楽をしてはいけない!」「もっとツライ思いをすべきだ!」などという悲壮的な思い込みが、支配的ではないでしょうか。
だれかに強制される筋合いはありません。
好きなことをして、楽しんでいいはずです。
嫌いなことを頑張っても、高が知れていますからね。
好きなことを楽しんだそのほうが、当然、アウトプットされるパフォーマンスの質・量ともに上がります。
▶私、仕事が楽しくないかも
テニスの上手い、強い人というのは、テニスに限らず万事、楽しむことが上手い傾向です。
それは見てきたようにすなわち、「集中力が高い」と言い換えられます。
繰り返しになりますか、集中と楽しさは必ず「ペア」だからです。
そういう人は、忌避されがち(?)な仕事や家事だって、ゲームとして楽しみます。
掃除が楽しくないのは、集中していないからです。
先入観や思い込みから面倒だと決めつけて、イヤイヤやるから楽しくないのです。
脳の省略癖のせいで、「空は青い」とだけ決めつけるから、その変化を楽しめません。
▶「こんなにも!」と、笑える(笑)
ところが、無心になって床を磨き、真っ黒になった雑巾をご覧なさい。
「こんなにも!」と、笑えます(笑)。
掃除し始めるまでは億劫だったのに、やり始めたら止まらなくなったという経験は、だれしもあるでしょう。
それが、集中。
結果的に、きれいにするパフォーマンスも、格段に上がったに違いありません。
▶テニスと日常は「リンク」している
テニスと日常生活がリンクしているというのは、そういうインタラクティブな関係。
そもそもテニスでだけ集中しようとしても、どうしても無理があります。
なぜなら一日のうちにテニスをプレーするのは、プロでもない限りせいぜい2~3時間でしょう。
日常生活のほうが、圧倒的に費やす時間が長いですからね。
ですから仕事や家事や食事や育児に集中するのが得策。
とはいえ、それは「努力」「シビア」「真面目」「ストイック」ではないのでしたね。
集中すれば四六時中「楽しい」のですから、生きる人生の全部が、ゲームになります。
即効テニス上達のコツ TENNIS ZERO
(テニスゼロ)
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