やがて哀しきコーンフレイクやないかい🥣
ひとまず服を着てくれないかな。
テーブルに頬杖つく全裸の彼女。
その向かいで目のやり場がない。
隅々まで美しい裸体を照らした
朝日が彼女を生まれたばかりの
完璧なアンドロイドを想起させた。
コーンフレークを食べるけど🥣
どんな味かさっぱりわからない。
おーコーンフレークやないかい。
ぽつりと呟いてみた。
だから?
あずきは不思議そうに首を傾げ
気持ちよさそうに伸びをした。
形のよい乳房も気持ちよさそうに
ふぁっと跳ね上がって揺れた瞬間
アイザックニュートンて偉大だね
りんご🍎落ちるよりアダムとイブ
なんか初めて重力の偉大さ感じたよ
ねぇ、服着てよ。
あずきはめんどくさいなーと言いながら
BOM!と書かれたTシャツをするりと着た。
記憶の混濁。
こちらにいる時にはあちらを思い出せず
あちらにいる時にはこちらを思い出せない。
ただ私は決して20歳の青年の天豆ではない。
この身体で彼女とまぐわった感覚は
下腹の底で漂っているが実感はない。
でも彼女に説明することもできない。
てん?何考えてるの?
ちょっと聴きたいことがあるんだけど
昨日のこと、きっと冗談じゃないよね。
青葉おばさんが亡くなったこと
全く覚えていないって、、
あ、、うん。
そっか、やっぱりまだ早かったのかな。
あなたは青葉おばさんが亡くなった日から
1年近く病室にいたんだよ。
先月に退院して療養所みたいなところで
しばらく過ごしてたんだけど
先生が大学に行ってみたらって言ってくれて
学校の授業は1年ぶりで
昨日があの日以来初めて。
ほとんど何も喋らないまま
てんは図書館で寝ちゃって、、
でも今まで何も反応してくれなかったから
何も覚えてないかもしれないけど
昨日はいっぱい喋ってくれて嬉しかった。
ひとつひとつ思い出してくれたらいいから。
なんか覚えてることない?
あ、、、あれはたしか
何!?
いきなりですけどね うちのオカンがね
好きな朝ごはんがあるらしいんやけど
え?なんの話?
その名前をちょっと忘れたらしくてね
朝ごはんの名前のこと?どういう意味?
でまあ色々聞くんやけどな 全然分からへんねんな
変な関西弁やめてよ。青葉おばさんはよくフランスパン買ってたけど、そのこと?
あのー甘くてカリカリしてて で 牛乳とかかけて食べるやつやって言うねんな
それってコーンフレークじゃない? 今食べてるよ、てん。
いや俺もコーンフレークと思うてんけどな
でもオカンが言うには 死ぬ前の最後のご飯もそれで良いって言うねんな
は?もうわけわかんないからやめてよ。そんなことおばさん言うはず無いじゃん!
あー ほなコーンフレークと違うかぁ 人生の最後がコーンフレークでええ訳ないもんね
なんかてん怖いよ!もうふざけるのやめて!!
コーンフレークはね まだ寿命に余裕があるから食べてられんのよあれ
あずきは無言で睨んでいた。
な? コーンフレーク側もね 最後のご飯に任命されたら荷が重いよあれ。
般若のように睨んでいた。
頬から一筋の涙が伝っていた。
食べかけのコーンフレーク🥣は
牛乳にヒタヒタに浸かってシナシナ
カリカリだった記憶をきっと彼らも
忘れたようにネチャネチャに溶けて
もはや食欲の欠片は風と共に去りぬ
ごめんねカリカリコーンフレーク🥣
そうだよな。
そりゃそうだよな。
まだ2005年だしね。
もっとまともなこと思い出したかった。
ひょろ細めとぽっちゃり角刈りの芸人でなく
もっともっと大切な人のこと。
私、青葉おばさんのスタジオ行くから。
表参道?
そうだけど、覚えてるの?
いや、なんとなく。
うんち💩を漏らしたことだけは
あれってたしか20年前の青い空
昨日のことのように感じるけど
たしかにママは👩そこにいたよ
満面の笑顔が眩しい太陽に見えた
たしかベビーカーから見た景色だ
そういえば赤ちゃん👶でいながら
おっさんの感性なんて最低だった。
だけどみんな違ってみんないい。
そうだろ?
個性は背筋だ 伸ばして行こう。
僕も行くよ。
たぶんそこからしか始まらないと思うから。
思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ
すべてが色褪せた思い出になる前に
そして
時を戻そう。
引用元:(c)しゅうぺい【ぺこぱ】Instagram
天豆エッセイ詩小説⑤
やがて哀しきコーンフレイクやないかい🥣
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だよ😍