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人的資本の各種KPIの適正値を探るアプローチ【まずは他部門との比較、過去との比較から着手。ベンチマーク比較は日本だともう少し掛かる】

1. はじめに

人的資本経営が注目されている現在、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)を適正に評価することが重要視されています。

しかし、日本における人的資本のKPI適正値を導き出すのは、まだまだ発展途上の分野です。

そのため、ベンチマークデータを用いることができない現状において、まずは社内の他部門との比較や過去との比較からスタートするのが現実的です。

将来的には、業界別・企業規模別のベンチマークデータが揃うかもしれませんが、それはまだ時間がかかると思います。

どの企業も自信を持って各種KPIを適正にしているわけではないので、それらを調べて集計しても、それは単なる現時点の情報でしかありません。

それが適正値だとは言えないのです。


2. 他部門や過去との比較から着手する理由

1. ベンチマークデータが未整備

現状、人的資本のベンチマークデータは、アメリカのような人的資本経営が進んでいる国でも一部の企業に限られ、日本ではさらに限定的です。

人的資本経営に必要なデータがまだ揃っていないため、現時点でのKPIは平均値や中央値を参考にするしかありません

このデータが適切なものかというと、まだ確信を持つことはできません。

2. 社内比較や過去との比較が最適

他部門との比較や過去の実績との比較は、現実的に行える有効な手段です。

例えば、営業部門が抱える従業員のパフォーマンスデータと、人事部門のデータを比較することで、どこに差があるのか、どの施策が効果的かが明らかになる可能性があります。

まずは社内でできることから始め、比較を積み重ねることで、適正なKPIに近づける必要があります。


3. 今後の見通し:ベンチマークデータの整備には時間がかかる

人的資本経営において、将来的にベンチマークデータが揃うことで、業界や企業規模ごとに詳細なKPIを測定できる可能性があります。

しかし、これは日本においては10年以上かかると考えられています。

アメリカでさえ適正値が明確に決まっているわけでないのですが、日本の人的資本経営はアメリカよりも10年以上遅れていると言われているからです。

今すぐに人的資本を最大限に活用した経営を行うには、他部門や過去との比較による小さな改善を積み重ねることが現実的なアプローチです。


4. BIツールだけでは不十分

人的資本経営を推進するためにBIツールを導入する企業も増えていますが、BIツールの導入だけでは不十分だと最近よく思うようになりました。

人的資本のデータを的確に活用し、戦略に反映させるためには、データ分析の専門知識を持つ人材や、人的資本経営に特化した専門家の支援が不可欠です。

特に、人的資本経営を深く理解したコンサルタントのようなスペシャリストのサポートが必要であり、アメリカの企業で人的資本経営を推進していたコンサルが理想的なパートナーになると思います。

そのような方はまだまだ市場でも少ないので、各企業の人事部はかなり苦労していると思います。


5. まとめ

人的資本経営におけるKPIの適正値を探るには、ベンチマークデータが不足している現状では、社内の他部門や過去のデータとの比較から始めることが重要です。

ベンチマークデータが揃うまでには時間がかかるため、すぐに導入可能な比較分析から着手し、小さな改善を積み重ねていくことが、長期的な人的資本経営の成功に繋がると思います。

また、データ分析の専門家やコンサルタントの力を借りて、本格的なデータドリブン経営を目指すことが欠かせません。

日本の人事部ができるところからスタートし、徐々に人的資本経営が推進され、GDPで抜かれてしまったドイツに追いつき・追い越す国になることを切に祈っています。

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