なぜ、自分探しをする人が増えたか
きょうは心理学者の榎本博明先生による「社会人のための『本当の自分づくり』」を紹介します
まずは、自分探しをする人がでてくる社会的な背景から(出版時点は2006年)広い視点でその理由を解説しています
失われた1人前の基準ーたとえば米1俵を担げる、といった労働力の目安が1人前の基準だったところー社会で大人になった男女に求められる役割が多様化したことで、もはや何をもって1人前とするか分からなくなった
資本の集中、結果としての分業化ーその多様化を加速したのが、家業を中心とした事業運営から、大企業を中心とした労働力の集約がすすみ、置換可能な労働力という意味がつよくなった
本当の自分は別にいるー1人前になった自分、を想像しづらく見えづらい世の中におかれたことで、次第にその不安(=社会に根差していない感覚)を紛らわすべく、本当の自分は別にいる(つまり、今の自分は本当の自分じゃない)と考えが生まれ、不安の救済となった
これらの結果として、自分探しをする人が増えたのだと
では、どのようにすれば、アイデンティティが安定するのか
その解決策について、心理学がこれまで用意してきたアプローチと
筆者の提唱する「自己物語」をつくる、というアプローチが紹介されます
社会学・心理学における”自分”
アイデンティティ(自己認識)がどうすれば安定するのか
そもそも自分とはなにか
ジェームスは、精神的/社会的/物質的な存在に分けられるとし
クーリーは、自己はすべて、社会的な自己である、と
では、社会とつながるキャラクター(役割)が必要になるわけですが
ここで、20世紀にかけて心理学が、客観的で観察可能な対象を評価するよう舵をきったことをシンプルになぞりながら
ワトソンの、行動主義心理学
オールポートの、性格心理学
といった発展につながり
能力や適性といった、かえって掴みどころのない、非常に多面的な人間の特徴に、自己を規定するウェイトを置きすぎたのだと説明
これらのアプローチには
分類をしたところで、他人の物語は自分にあてはまらないという視点が欠落していて、結果として=>しっくり来ない
という問題がのこり
頑張る気力や、意欲の問題(無力感)についても説明ができなかった
そこで、著者は、自己物語の心理学を提唱したのです
じぶんで『自分の物語』をつくろう
そこで本書では、他人の物語を無理に生きようとせず
じぶんで自分の物語をつくろう
その手掛かりの探し方
を解説
本の最後の方は
文庫本ならではの、手軽なサイズ感のワークシート形式の問いかけになっているのですが
そこに至る紙幅で
陥りがちな穴(こんな、”いつわりの自分”には気をつけてね)
本当にやりたいことをやろう
不満におもっていることがヒントかも
公言してみるといいかもよ
自分が変わると、相手も変わる
違う環境に身を置くのもいい
といったことを紹介しています
自己啓発本でよく見受けられる内容ですが
☑ 社会的な背景
☑ 学問的なバックグラウンド
を分かりやすく解説したうえで
自分の物語を書くきっかけと、すっきりしたガイドを提供しているところが
文庫を読む習慣のある人には、とても親切な設計になっています
また、前段の”自分探しをする人”の所も含め
実際に著者が収集した声を紹介しており
ご自身に近い境遇の方・クライアントと同じ悩みや心情を持つ方をみつけたり、といったことで
これからどのように働き生きて行きたいか、といったことを
端的に、でも体系的に考えながら読むことができる、ユニークな本です
ぜひお手にとって読んでみてください
本書にはない、『人は、なぜ物語を書くのか』『じぶんの物語を書いて、そのように生きた人はいるのか』
さて、ちょうどこの本を読み終えた頃
SNSでNHK大河ドラマの広告が入ってきたのをみると
主人公のまひろ(紫式部・)が、いよいよ源氏物語を書く回だとのこと
noteにも、これまでの展開について
とても魅力的な記事がいくつもありますが
みなさんは
なぜ紫式部は、源氏物語を書いたとおもわれますか?
みなさんが、物語を書くとしたら、どんな物語を書くでしょう?
そこに、自分は登場するのでしょうか
そんなことを考えながら
大河をみても、また楽しいかもしれませんね
⤴kikuzirouさんのこちらのnote、開けて読むと、まるで仮名草紙か百人一首のようで、書き方の工夫にハッとします。読みやすく、ドラマ本編との奥行きも感じられ、たくさんのハートにも納得♡ この記事をよむと、物語を書いた理由が、自分の運命を拓こうとして書いたような感じが私はしましたが、みなさまいかがでしょうか
⤴じょぷりんさんのnoteも、文体が特徴的で勉強になります~ドラマの流れがシーンごとに分かりやすくまとめられていて、もちろんnoteだけ読んで想像しても楽しかったのですが、動画で見返したり途中から気になる場面をじっくり堪能したりと、noteを頼りにいろんな楽しみ方ができそうです。こちらを拝見すると、なぜ書いたかというよりは、書くように生き、生きるように書いていたのかな、という気がしました(第20回をご覧になった方や、源氏物語と紫式部にお詳しい方からご意見を伺えたらうれしいなぁ)
現代を生きる私たちの物語
話を今ここ、に戻しますと
このnoteを書いている私自身は、普段は、はたらく人生について書いたり発信したりしておりまして
おなじ働くなら、多くの方に納得して充実した時間をすごしてもらいたいと
自分が20代から30代の頃、とても悩んだが故に
その先に気づいたヒントをきっかけに
いま、多彩なゲストをお迎えして、その方のキャリアの魅力にせまるポッドキャストを制作しています
現在、第2回の収録を終えたばかりで
いまは第1回目が、3つのアプリで同時配信中なのですが
よかったらお聴きいただけますと幸いです
noteファンのみなさまの人生が充実し
自分らしい、豊かな時間に満たされますことをお祈り申し上げつつ
わたし自身も、この番組をつくりながら
自分の物語を強くしていきたいなと考えております
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