日曜日、夜の隙間
フロアスタンドの灯りが、
部屋の隅々をやわらかく照らし、
暖かい琥珀色の輪郭が、
壁にうっすらと映り込んでいる。
日曜日の夜、
夜の十時半を少し回ったころ、
静寂が降りてきたリビングで、
私はソファに深く腰かける。
足元のローテーブルからリモコンをそっと拾い上げ、
Bluetoothスピーカーのスイッチを入れる。
ほどなくすると、控えめな音量で、
Sadeの「By Your Side」が流れ出し、
その音色がリビングに広がっていく。
うっとりするようなメロウな前奏に続いて、
彼女の低音の歌声が、優しく流れだす。
Sadeを知ったのは大学生の頃。
以来、ずっと聴き続けているけれど、
「By Your Side」は何度聴いたか分からないほどだ。
キッチンから持ってきたワインを少しだけ注ぐ。
グラスの向こうに、
フロアスタンドの灯りがゆらめいて、
深い赤色が少し温かみを帯びる。
喉の奥にほのかな熱を感じながら、
ゆっくりと目を閉じると、
明日の予定、目覚ましの音、
やらなくてはならないこと、
そうしたものすべてが、
遠く霞んでいくような、
ぼんやりとした安心感が心の中を満たしていく。
長い一週間の先が、
少しずつ見え始める日曜日の夜に、
家族がそれぞれに休息をとっていると知る安心感と、
優しい音楽に包まれる心地よさ。
そして、部屋の中に漂う、
どこか甘やかな孤独感。
気がつくと、時計の針はずいぶんと進んでいる。
夜がゆっくりと深まり、
フロアスタンドの灯りは、
壁にそっと溶け込むように淡く広がる。
週末の名残がまだ微かに漂う、短い夜の片隅で、
静寂に包まれながら、
自分だけの時間が静かに流れていく。