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『未来のミイラ』リテラ「考える」国語の教室 探求学習作品 講師 黒木里美 

「ミイラについて発表したい!」
2024年3月、長年の願いが、ついに叶いました。

リテラでは、年度末に生徒たちの発表会を開催しています。
子どもたち一人ひとりが、自由に好きなテーマで研究をし、その成果を発表してくれます。
実は毎年、「私が生徒だったらミイラの研究をしたい!」と子どもたちに話していました(笑)
昨年は産休・育休でお休みしていたため、授業中に研究を手伝うことはできなかったのですが、その分、子育ての合間を縫って自分の研究をコツコツと続けていました。
そして、ついに念願の子どもたちと同じ舞台に立つことができました!
私の大好きなミイラと、ミイラのことが大好きな私を温かく見守ってくれる家族との歴史をご覧ください。

リテラ「考える」国語の教室 講師 黒木里美



■『未来のミイラ』YouTube動画


■テキスト資料

これは、私と弟の小さい頃の写真です。
弟は、ちょろちょろしてすぐどこかにいなくなってしまう子でした。
写真の私も「まったくもー」とか言っていたのかもしれません。
ただ、私はしっかり者のお姉さんと言うよりは、どちらかというと、ぼさーっとした感じの子でした。

「ボーっとしていると、交通事故にあって死ぬぞ!」父親がこんなことをいったので、私は「死」の恐怖に怯えるようになってしました。
今思えば、父親も、ぼさっとして危なっかしい娘を心配して言ったのだと分かっているのですが、いつ命が尽きるかと不安で、
「あぁもう大人になれない」
なんて考えては、よく涙ぐんでいました。
そんな日々から私を救ってくれたのが、ある絵本ですね。

こちら『エジプトのミイラ』です。
因みにこの絵本、神保町の古本街で母親に買ってもらいました。
今もリテラに置いてあって、子どもたちに読み聞かせをしています。
「死んでも魂は生き続ける。死は終わりではない」
巨大な墓豪華な装飾、丁寧に作られるミイラ。
王が埋葬され、魂が旅立つまでの物語。
絵本に描かれているのは、古代エジプトの話とわかっていても、死の恐怖に怯えていた私は憧れずにはいられませんでした。
「私、ミイラになりたい!」
信じられないかもしれませんが、小さい頃、本気でそう願っていたんですね。
でも、憧れていてもやっぱり本物のミイラを見るのはこわいな。
でもいつか会ってみたいなと思っていました。

実際にミイラに会えたのは小学4年生の時でした。
国立科学博物館で開催された「人体の世界展」です。
会場には、たくさんの献体によってつくられた標本、「ミイラ」のようなものがありました。
献体とは、自分の身体を死後に医学・歯学の発展のために役立ててほしいと願い、遺体を提供することです。
そして、この標本たちは、『エジプトのミイラ』の絵本のように、私の死生観に大きな影響を与えてくれました。


たくさんの展示の中で、私の心に一番残ったのは、妊婦さんの献体でした。医療機器が今ほど発達していない時代に、この妊婦さんの献体は、胎児や母体に秘められた多くの謎を解き明かす鍵となったそうです。
目の前の母と子、その家族、そして、この二人と向き合い、研究に携わった人々のことを思い、胸が苦しくなったことを今でも覚えてきます。
死後、この世界に残される私の体を、私はどうしたいのだろうか?できることなら、今、目の前にある献体によってつくられた標本たちのように、世のため、人のために役立ててもらいたい。
でも、残された家族はどうおもうだろうか?

エジプトのミイラに会ったのは、ずいぶん大人になってからです。
写真は、2019年に国立博物館で開催された「ミイラー永遠の命を求めて」の展示会に行った時のものです。
この展覧会で、世界中にミイラがいることがわかりました。

丁寧に作られたミイラ。

ほったらかされて、いつの間にかなってしまったミイラ。


生きながらミイラになっていった人もいました。
そして、生贄として作られたミイラもありました。

これは、南アメリカで発見された子どものミイラです。
「子どもを生贄のためにミイラするなんて、なんて酷いことをするのだ」そう思う人もいるでしょう。
復活を願うエジプトのミイラしか知らなかった私も、なんでそんなことをするんだろうと、不思議でたまりませんでした。
子どものミイラは、祈りによって作られものでした。
天災による食料難。
大人も子ども、餓えて死んでいく世界。
生贄に選ばれた子たちは、精一杯のご馳走でもてなされ、死後の世界で幸せに暮らせるようにと、おもちゃや貴重だった食料と、ともに寧に埋葬されていたそうです。
神への祈りを込め、大切な子どもを、一族の「未来」を捧げた大人たち。
無力な人の手で、最後の力を振り絞り作ったミイラを、誰がさばくことができようかと、そう感じました。

かつて、死してなお愛する者たちと共にありたいと願いミイラになった人がいました。
未来を生きる人々の幸せを願いミイラになった人がいました。
そして、ミイラ作りに携わったたくさんの人々がいました。
私の発表で、ミイラは決して恐いものではないと知ってもらえれば幸いです。

ところで、今、私は、まだ「自分の死」を怖がっているでしょうか?
幸いなことに、ボーとしていた子どもの頃と比べて、自分の死を考える暇がないほど忙しく、充実した日々を過ごしています。

大人になって、ヘアドネーションや母乳バンクといった、「自分の体を役立てる」取り組みに参加したことも、死の恐怖を和らげてくれいるのかもしれません。

そして、何よりも、リテラの子どもたちとの日々があるからでしょう。
「死ぬのが恐い」
「死んだらどうなるんだろう?」
「なんで、自分が生きているのか知りたい」
研究発表会でも、「死」や「生」をテーマにする子が毎年います。
教室で語り合った時間は、私が死んでも、子どもたちの記憶に残り、私の知らない未来へと連れて行ってもらえる。

今、私は「未来のミイラ」になる準備を、皆さんと一緒に着々と進めているところなのです。
これで、発表を終わります。
ありがとうございました。

■研究の振り返り

◇これはどのような作品ですか?
ミイラが大好きな私の半生と、世界各国のミイラについて紹介をした作品です。

◇どうしてこの作品をつくりたかったのですか?
小さい頃からミイラが好きで、子どもたちにもその魅力を伝えたかったらです。

作品づくりで楽しかったことは何ですか?
改めて、色々なミイラに調べることができたことです。
これまで出会ってきたミイラとの思い出がよみがえってきて嬉しかったです。
特に、人体世界の献体標本は思い入れがあったので紹介できてよかったです。

作品づくりで難しかったことは何ですか?
スライドで紹介するミイラの選定です。
大好きなミイラがたくさんいて迷ってしまいました。

作品作りを通して学んだことは何ですか?
文章だけでなく、スライドの写真も考えなかればならないのが大変でした。研究も発表も大変ですが、自分について考えるいい機会だと思いました。

◇次に活かしたいことや、気をつけたいことはありますか?
発表中、緊張してしまい、声が小さくなってしまいました。
次回は、堂々と発表できるように頑張りたいです。

◇来年、研究したいことはありますか?
水木しげるの『悪魔くん』を題材に「千年大国とはなにか?」か、石ノ森章太郎の『仮面ライダー』を題材に「仮面ライダーと地蔵菩薩」というテーマで研究したいです。

この作品を読んでくれた人に一言
ミイラのことを好きになってくれたら嬉しいです。
ぜひ、ミイラに会いに行ってください。

■この研究をした人

1984年東京文京区生まれ。國學院大學法学部卒業。2012年よりリテラの講師を務める。2022年からストアカ講師として子どもから、大人まで幅広い年代に言語技術を広める講座を展開。中学受験・高校受験では、子どもたち一人ひとりの個性や資質に合わせたオーダーメイドの指導と、受験生と保護者の心のケアを大切にしている。
■資格
受験メンタルトレーナー・チャイルドカウンセラー・発達障害コミュニケーション指導者初級・心理学検定1級・認定心理士(取得に向けて大学在学中)・文章能力検定2級・漢字検定2級・中高社会科教員免許


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